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【小説】演劇部の公演だと思っていたらいつの間にか私だけ異世界転移してて、って最初から私が勇者の件

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 元記事は『演劇部の公演だと思っていたらいつの間にか私だけ異世界転移してて、って最初から私が勇者の件』(https://kakuyomu.jp/works/16816927863235589236)の第一話です。反応も薄いのと書く力がまず無いので、第一話だけ書いてここに残しておこうと思います。

 では、本文をどうぞ!
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 第1話 演劇部の公演、だよな……

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 タイトルから決めてます。どんなお話になるかわかりません
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 「ええ、昨今ではLGBTQが叫ばれる世の中、男が令嬢を救うという話は時代に即していないのではないのでしょうか。そこで、今回の演劇では高校三年生のさくらさんにルクシアという主人公を演じてもらうことにしました。それではルクシアさん、どうぞ!」

 パチパチパチパチ。

 拍手の中で、颯爽とステージの上へと登場する私の名前は蜂須賀……じゃなかったルクシアよ!

 3Dプリンターで作り上げた勇者の剣がキラリと光る。工学科の人達には感謝してもしきれない。

 「さあ、モンスターよ我が勇者殿をお返ししなさい。令嬢だからって甘く見ないで頂戴。さもなくば受け継いだ勇者の剣が其方の首を真っ二つに切り落とすであろう!」

 グオオオオオオ!! と。演劇部で怪力の持ち主だった榊原が巨大なモンスターを演じる……ってあれ?
 
 あんな大きかったっけ? リハーサルの時はもうちょっと小さかったような。

 まあ、リハーサルだからね。本番に合わせて大きくて派手なのを用意したんでしょ。きっと。

 でも確かリハーサルの時はゴリラみたいなモンスターだったような……。先にこっちに気付くべきだった。何あのスライムが爆発したみたいな様相は。あちこちに目玉があって、ぎょろぎょろとうごめいて何かを見ている。

 と。

 途端に。その多くの目玉が一斉に私の方を向いてきた。

 キモっと、思ったのと、なぜかちょっとゾクッとした。創作班、やるじゃない。このルクシア様を少しビビらせるなんて。

 と。

 ボコボコとしたスライムから巨大な口が、にゅーっと現れた。あれ? こういうところで白い煙とか出してリアル感を出すんじゃないの? ただ、口の淵からポタッポタッとよだれが落ちていく。逆にリアルだ。創作班はやりすぎだし、榊原は。そうだ、榊原の雄たけびの声じゃなかった。

 ハッとして目をやる。主役としてやってはいけないことだが、観客席を見る。

 観客席が、高校生ではなくて、白いボロボロのランニングを着たおじさんや、口笛を吹いている少年などに変わっている。はああああ?

 それにここ。劇場のステージだったはずなのに、いつの間にかコロシアムになっていて、360度、観客たちで席が埋められている。

 「それでは、ルクシアvs.ハルマゲドンの試合を」
 「ちょっと待った小畑あああ! 何なんだよこの舞台設定は。こんな仕掛け知らないぞ私は!」

 私は後輩の小畑の方を見て叫んだが、そこにいたのは小畑に似てはいるものの耳が異様に長いコブリンがそこにいた。コブリンがきょとんとして私を見ている。

 「少々言葉を濁しました。それでは改めまして、ヤクソール学園の入園テストを兼ねた新人戦、ルクシアvs.ハルマゲドンの試合を開始いたします。両者見合って、ファイッ!」

 ハルマゲドンが口を開いた、口からかまいたちのようなものが飛んできた。私は咄嗟に右によけたが、左ひじにかまいたちが掠めていった。

「いっったああああああ! あああああ! 何これ! ああああああ!」

 腕がかすっただけでとんでもない痛みが走った。毒か何かが塗られているような。そんな痛みが走る。先ほどは白い煙とか出なかったくせに、今度は私の腕から、ジュウウっと何かが焼ける音と共に白い煙がもうもうと出ている。

 (アカン。腕が溶けよる。冷静になれ。冷静になれ。これは演劇だ。私は演劇部の蜂須賀さくらだ。ルクシアとは、勝手に私が創った名だ)

 そうだ。これは演劇だ。

 「おおっとルクシア。既に戦闘不能に陥ったかっ!? 相手は強毒を持つハルマゲドンですからね。全く校長もとんでもないものを用意しましたね」

 「演劇フィクション……」

 「ん? なんとおっしゃいました?」

 「演劇オールフィクション! これは現実ではない!」

 「何をおっしゃいますことやら。おろ? まさか、貴方、認知系の呪文を持っている!?」

 そうだ。これは演劇だ。何度も言わすな。全てはフィクションだ。

 私は左腕をさすりながら立ち上がる。白い煙と共に、なでた後の傷跡は全て消えていた。

 「覚悟しいや。榊原。このお礼はたっぷりさせてもらうぞ」

 榊原はもういないような気がするけど、自分だけ演劇中に異世界転移など起こったとしたら、正気を保てそうにない。

 ハルマゲドンの中に、榊原が居ることを信じたい。

 私はハルマゲドンに跳び掛かる。いくつかある内の頭に掴み上り、目玉の中に手を突っ込む。

 ぎいいいいいいあああああ、と大声をあげるハルマゲドン。

 目玉をくりぬいた。何個もある目玉を無我夢中でくりぬいていく。

 全ての目玉をくりぬいた時には、私の衣装は緑色の液体でずぶ濡れになっており、ハルマゲドンは溶けていくように、今度はハルマゲドンが白い煙をあげながら朽ちていった。

 「おめでとうございます! 新人戦をクリアしたのはルクシア! その人です!」

 私は涙が零れた。勝ったからではない。

 溶けていったハルマゲドンの中には、榊原の姿はどこにも無かったからだ。

☆☆☆
 作者より。
 好評だったら続けます。

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