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ロアッソ熊本に関わる全ての皆様、感動をありがとうございました。

 2022年11月13日(日)。19時46分。

 朝から変な夢を見た。夢の中なのか分からなかった。何かの主人公のように、なんでも思い通りになるような、絶対に死なない冒険に繰り出していて、何かを探しているかのような夢だった。霧で周りは見えないが、感覚は心地よい。何もない感覚ということに一種の現実感があった。本当の現実は、五感から様々な刺激を受けて、不快な気温や湿度などがあるというのに、良いところだけを現実を切り取ろうとすると、こういう夢のなかの、概念のなかの世界が本物ではないかと錯覚していた。

 もっと夢の話をしたいけれど、長くなりそうなので切ります。

 親に声を掛けられて起きた。ここ最近寝起きの調子が良くて、何もせずとも午前8時くらいには起きていたので、「11時過ぎてるよ」と言われた時には驚いた。飛び起きたが、実際には10時を少し過ぎているだけだった。

 小説家になろうとnoteにブログを投稿して、適当に朝ご飯を食べた。その後何をしたかは覚えていない。ツイッターを見てみると『アオアシ』の無料体験版を読んでいたらしかった。

 そうだ、アオアシだ。アオアシの「サッカーのうた」をツイッターの広告で観て感動してアオアシを読んでいたのだった。たまたまAmazonのkindleで期間限定無料だったので、2巻くらいまで読んでいた。「サッカーのうた」に出てくるヒロインっぽい人がクールだけど、素直に応援するかのような描写にも読んでみたいと思わせてくれる何か不思議な力があった。

 それで、気が付いたら12:45くらい。急いでお昼のブログを書き上げて、さっさと下のリビングへと行った。

 今日、2022年11月13日はロアッソ熊本がJ1を初めて目指す、J1J2入れ替え戦の日だ。

 相手は京都サンガFC。前にも書いたけれど京都サンガFCには、FCKマリーゴールドから大津高校に行った、豊川雄太選手や、熊本ユナイテッドから東福岡高校へ行った松田天馬選手など、熊本ゆかりの選手が数人所属している。かつてロアッソ熊本にいた、武富選手もそうだと思う。

 武富選手はベンチに入っていなかった。

 単純に、ロアッソ熊本にとっては入れ替え戦というそれだけの試合、というわけではないように思われる。

 なぜなら、恐らく、スカパー、DAZNを除いて、衛星放送ではあるが、ロアッソ熊本が全国分け隔てなく、全国一律で試合が生中継されたのは今回が初めてのような気がするのだ。間違っていたらすみません。何かのはずみで放送されていたら申し訳ないが、全国中継が初だとしたら、日本中のサッカーファン並びにスポーツが好きな人にとって「ロアッソ熊本ってどういうチームなの?」ということの、初のお披露目の場であるという、貴重な、歴史的な日となったでのはないかと思われる。

 ロアッソ熊本にとってそんな試合だったのだ。

 ずっと熊本でサッカーをやってきたので、ロッソ熊本時代からロアッソ熊本を知っている。小学校で部活をしていたらロッソ熊本のポスターを貰った。「赤い伝説が今始まる」というのがキャッチコピーで、九州一部リーグの試合日程が書かれていたポスターだ。熊本に住んでいて昔サッカーをしている人ならば、みんな見たことがあるだろうと思われるポスターだ。

 池谷監督のもと、順調に勝ち進み、軽くJ2まで行ったような記憶がある。

 そこからが、長かった。

 ずっとJ2の下位に居ることが当たり前のチームのようになっていた。木島選手とか、高橋選手、北島選手や、藤田俊哉選手。橋本拳人選手やシュミットダニエル選手。武富選手や仲間隼人選手。巻誠一郎選手。今では日本代表になった選手などをかつては抱えていたが、それでも、上位に組み込むことは全く無かった。

 ロアッソ熊本が負けると、親の機嫌が悪くなるのを今でも思い出す。放送権がDAZNに変わってロアッソを見る料金が安くなったと喜んでいた親の姿を思い出す。サポーターズクラブにも入っている。それも、親が私の名前を勝手に使い、私がロアッソサポーターズクラブに入っていることになった。今でもロアッソサポーターズクラブはあるのか分からないが、私の番号は丁度4ケタのキリ番だった。

 個人的なロアッソの話は良いとして、ずっとロアッソは低迷が続いていた。

 私は大学進学で一人暮らしになり、ロアッソの試合は観なくなった。ツイッター観戦しかできなくなったが、ロアッソ熊本はJ3にとうとう落ちていた。

 そこから、2021年。遂にロアッソ熊本がJ2に戻ってきた。

 そして、2022年。J2で年間4位に付けてついにプレーオフ進出、どころか、プレーオフまで勝ち抜いてしまった。

 家庭の事情でDAZNは解約し、年間を通して観れなくなったが、ツイッター観戦は続けていた。

 そして、プレーオフの山形戦を観たが、今年のロアッソ熊本は本当に強くなったと実感した。弱かった頃のロアッソ熊本しか知らなかったので驚いた。

 パスの判断。「いやいやー。こっちに出してよー」と嘆いたことが昔のロアッソでは多かった気がするが、今年のロアッソはパスの判断がほとんど、上空からのカメラでも正しい位置にパスを出していたように思われた。強いと思った。観ていて楽しくなった。

 そして、様々な歴史を辿って遂に辿り着いた京都サンガ戦。J1J2入れ替え戦。全国生中継のデビュー戦。

 試合は京都サンガにいる熊本コンビの二人で均衡が破れた。松田天馬選手が、ふわっと上げたスルーパスが、ロアッソの選手がクリアミスをしてしまい、豊川選手の足元へ。キーパーも飛び出したが、少ないチャンスをしっかりと決められた。

 決められた。

 同点でも京都サンガFCがJ1に残るために、正直、膠着状態だった試合で先制点を決めることが、ロアッソ熊本が勝ちあがる必勝条件だと思っていた。

 そんな試合の中、先制点を京都サンガに決められた。

 まだ前半だったが、心の中では、戦意が喪失していた。ロアッソが2点を取るという流れには到底見えなかった。

 後半が始まった。淡々と試合を観ていた。相変わらずパスワークは上手いし、京都サンガにも引けを取らない堂々とした戦いぶりだった。

 しかし、点は取れない。充分やっている。そう思っていた矢先だった。

 後半23分。ロアッソ熊本のコーナーキック。

 キャプテン、河原選手の蹴ったボールは、イヨハ理ヘンリー選手の頭をかすめていった。

 そのまま。ボールはポストへと当たり、ゴールネットが揺れた。

 私は叫んだ。「ああ! ああ! もうだめだと思っていた! もうだめだと! 思っていた! ああ! あああ!」

 思考など何もない。部屋にあるソファに顔面を押し付け、ソファを殴りまくった。ロアッソ熊本の選手は誰も諦めてなどいなかった。親も喜んでいた。親は冷静で、手を叩いて。「よし!」とだけ言っていた。私は狂ったようにソファを殴り続けた。

 プレーオフの山形戦で、ポストに救われ、その後の佐藤選手のビックセーブを思い出した。今のロアッソには神でも付いているのではないか。そう思わせてくれるくらいの、最高のヘディングシュートだった。

 試合が振出しに戻った。あと一点である。あと一点なら取れるのではないか? そう思った。

 ゴールが入った瞬間、思考が吹っ飛ぶほど喜んだが、同時に、最高の幸せを感じたような気がした。地元を応援して、それに選手が大一番で応えてくれた。その瞬間って、こんなにも幸せになるんだなと思った。前半が終わった段階で勝ち上がる可能性はかなり低いと思っていた。そんな暗い、ネガティブな気持ちを一気にひっくり返してくれた。

 サッカーを観れる喜び。本気で応援するチームが絶望から希望へと、自分の心を覆してくれた喜び。サッカーってやっぱり好きだなと思えた。

 後半途中からターレス選手が入った。スピードのターレスと言われているようだが、どちらかというとプレスを受けても全く倒れない、そのフィジカルに驚かれた。

 均衡した試合が続く。緊迫した試合が続く。

 京都サンガは、徐々に時間稼ぎに入っていった。それは、ロアッソ熊本が強い証拠だった。充分に京都サンガと互角に渡り合えていた。

 全国の皆さんに強いロアッソ熊本を見せることができたと、思った。この時点でロアッソ熊本に関わる全ての皆様に、ありがとう、という気持ちしかなかった。

 そして、訪れる、後半アディショナルタイム。

 ゴールキーパーの佐藤選手も上がり、獲るか、獲られるか、その緊迫の最高潮に達していた。

 蹴られたコーナーキックは、佐藤選手が潰れ役となり、中央にぽっかり空いた、平川選手の前にこぼれ落ちた。

 平川選手は迷わずシュートを打った。皮肉にも、相手の最強のストライカーのピーター・ウタカ選手の顔面ブロックにあって、ゴールには至らなかった。

 そのあと、てん、てんっと平川選手の前に、ボールが転がってきた。

 迷わず振り抜いた、右足。

 真っ直ぐ飛んだボールは、右のポストに直撃した。

 最後で最大のチャンスは、最早もはや、神が決めるかのように、数センチの差で、ゴールには至らなかった。

 その後、試合終了のホイッスルが鳴り、ロアッソ熊本の挑戦と今シーズンの全てが終わった。

 まるで、ドラマのような幕切れだった。あと数センチ、ロアッソ熊本はJ1へと届くことが出来なかった。

 しかし、戦いきった。交代選手枠もすべて使い、全ての判断で間違いは無かったかのように思われた。人事は尽くした。そんな試合だった。

 全国に、ロアッソ熊本の名をとどろかせることが出来たのではないだろうか。今シーズンは『闘え!』がテーマだったが、最後の最後まで闘い抜いた、最高の試合だった。

 ありがとう、ロアッソ熊本。ロアッソ熊本に関わる全ての皆様にお礼を申し上げます。

 最高の試合を観せてくれて、ありがとうございました。あと一歩でした。来シーズンも大木武監督の続投が決まっていると聞いたので、来シーズンも期待しています。魅力ある素晴らしいサッカーでした。本当に感動しました。

 全国にその名を轟かせた、最高の一日でした。選手の皆様は本当に闘ってくださいました。本当にありがとうございました。

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