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ムサシのCCP職(コーポレートコミュニケーション責任者)に就任し、これからの企業広報について改めて考える

2021年8月より武蔵精密工業株式会社(以下、ムサシ)のCCP(Corporate Communication Principal、コーポレートコミュニケーション責任者職)に就任することになりました。

愛知県豊橋市に本拠地を置く自動車・二輪のサプライメーカーで従業員数(連結)は15,120人 (2021年3月末現在)、売上規模は約2500億円と業界を牽引する大きな組織で、緊張感とワクワクと様々な思いが交錯しています。

私自身といえば、テレビ局報道記者からキャリアがスタートし、PR会社、ハッシン会議(現在)と、「社会に何かを伝えること」には20年近く携わってきたのですが、ここにきて「企業の中から社会に伝える」領域にさらに深くのめり込んでいます。今回のCCP職もまさにそのターニングポイントになりそうな予感がしています。ということで、今日はこれからの企業広報のあり方について、今の思いをまとめておきます。

PR会社で働いていた時の「外注」としてのジレンマ

2019年から2021年初めまでスタートアップ企業に特化したPR会社「ベンチャー広報」でPRコンサルタントとして複数社のPRを伴走してきました。

様々なスタートアップ企業の成長フェーズにPRで関われることに日々ワクワクし、超多忙ながらもやりがいを感じる日々だったことは間違いないのですが、同時にモヤモヤを感じる場面もありました。

PRの仕事にどっぷり浸かってみて感じたことが、広報PR職は果てしなく属人性が高い職業なんだということでした。

経験豊富で優秀なPRコンサルタントが伴走していれば、その企業の発信スピードや事業への貢献も著しいですが、何らかの経営的な事情(最近でいうとコロナ禍での経営打撃)でPRの「外注」予算が確保出来なくなった時、途端に広報活動がリセットされ、社内に広報知見も全く蓄積出来ていない状況に・・。歯痒い場面を何度か目の当たりにしてきました。

そんな時に頭に浮かんだのが、3年前に話題になった家入一真さんの起業家と広報についての言説でした。

「これだけモノやサービスに溢れた世界の中で、わざわざ新しく起業する「意義」に欠けたものは、誰からも選ばれない。哲学や思想を持った起業家が語る「物語」のいち登場人物になりたくて、ユーザーや社員は集まるのではないでしょうか。そういった意味で、起業家はストーリーテラーであるべきだし、それを広く伝える役目である広報は、熱量という圧力が最大に高まっている小さな組織のうちから、むしろいるべきであると僕は思います。」

特にスタートアップ企業は、創業者である代表の熱い想いから事業がスタートしているケースが大半であり、その熱量を共有し、共感し、企業内で広報活動がスタートする体制づくりを伴走したいと考えるようになりました。

そして2021年初め、私は「外注」として企業のPRを伴走をすることではなく、最強の広報組織を中から作ることに力になるための道を選ぶ決断をしました。

▼ 当時のPR会社の働き方や退職の経緯は下記noteで。

ハッシン会議が目指すのは「外注の卒業」

そこで、ハッシン会議では「広報の外注をしないための組織内の発信力育成」に軸を置き、スタートアップ企業からIPO前後までフェーズに合わせて広報担当者の育成や広報組織づくりの伴走をメインでしています。

正直、広報を外注する方が短期で目に見える結果が出やすいかもしれません。ハッシン会議では、短期ではなく中長期の伴走を前提に、その代わり目指すのは「外注の卒業」です。

発信体制を自社組織の中で作り、自ら発信をコンスタントに続けられるエコシステムを社内に構築すること。

これが中長期の視点では、間違いなく最強広報の組織であり、企業である、と確信しています。私たちは、このような組織を「チーム広報」と呼んでいます。

ステイクホルダーの多様化と広報に求められる「ソーシャルポジショニング」

私のムサシとの出会いは、2020年にムサシが運営するインキュベーション拠点CLUEとハッシン会議の共催イベントを開催させてもらったことでした。

その後、ムサシのことを知れば知るほど、自動車業界の枠に捉われない新しい挑戦の数々に驚かされています。

自動運転や電気自動車の開発など100 年に 1 度の大変革期と言われる自動車業界において、自動車部品サプライヤーの今後を不安視するニュースも耳にしますが、ムサシにおいては、全くそのような状況にはありません。

逆にこの状況をポジティブに捉え、自動車部品サプライヤーのムサシという枠を超えて、AIや新規事業にも注力しながらテクノロジーで社会を支えるチャレンジで事業を拡大し続けていることに、正直心から驚きましたし、胸打たれました。

ムサシの挑戦は、下記の記事を読んでいただけたらと思います。

時代の変化と共に、ムサシのような、いわゆるto B企業の広報活動も変革を迫られています。

これまでは、取引先や投資家を中心としたコミュニケーションに集中していればよかったところ、いまは脱炭素をはじめとした環境問題、SDGs、地域貢献などステークホルダーは従来のクライアントから社会全体へと一気に拡がっています。

そんな中、博報堂・永渕雄也さんの「ソーシャルポジショニング」に関する記事を読んで、すっと腹落ちすることがありました。

「改めて、自社の存在意義を社会の風に照らし合わせて捉え直し、共感・賛同を得られるような企業活動のあり方を模索すること。“社会発想”という点がポイントで、ターゲット顧客以外の多様な属性の人の感覚、意識変化とそのベクトルを捉える必要があります。/社会の風をよみ、生活者や社会と新しい関係を築いていくことが、今まさに企業に求められています。この活動の起点となる“存在意義の規定”を「ソーシャル・ポジショニング」と称して、我々も力を入れているところです。」
https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/91334/

自動車業界の大変革期をポジティブに挑 むムサシのメッセージをどのように届けていくのか。私の貢献領域があるとしたら、社会の風をよみ、生活者や社会とムサシの新しい関係を築くソーシャル・ポジショニングなのかもしれない、今はそのように考えています。

私自身、自動車業界と深く向き合うことは初めてのことで、業界のこと、技術のことなど、これからしっかり学ぶべきことがたくさんありますので、今は緊張感とワクワク感が共存しています。

ーGo Far Beyond 「枠を壊し、冒険へ出かけよう」

2021年4月に発表されたムサシ100年ビジョンは、私自身の今の思いそのものです。全く未知の領域である自動車業界でCCP 職を拝命し、これからコミュニケーション戦略に注力していきます。




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