見出し画像

激動を生き抜く!これから地方公務員が考えるべきこと(番外編):佐々木俊尚さん、敦賀へのコメントありがとうございます!

 今回は、今朝のvoicyでジャーナリストの佐々木俊尚さんが福井県の敦賀について語っておられたので、感想などを述べたいと思います。敦賀は私が24年間暮らし、市役所職員と公立大学教員を経験した場所です(現在は東京に住んでいます)。来春にはいよいよ北陸新幹線が金沢から延伸し、敦賀はその終着駅となります。そこで、首都圏や北信越から多くの来訪客が福井や敦賀を訪れると期待されていて、県内でもホテルやタワーマンションの建設などが進んでいるところです。私も定期的に敦賀を訪れますが、少しづつ街が変貌している様子をワクワクしながら見ています。

 佐々木さんは敦賀の魅力が「歩いて楽めること」にあるのではないか、と今朝のvoicyで述べていました。(佐々木さんの著書「読む力」には、佐々木さんのスマホのアプリが掲載されていますが、敦賀のウォーキングアプリもさりげなく入っていました)。私もまったく同感ですが、東京に戻ってから特にそう感じるようになりました。つまり、敦賀に暮らしていた頃には、それができなかったのです。

 地元の方々は三重の意味で、歩いて魅力を感じ、伝える機会がほとんどありません。まず、そもそも自家用車が必需品で、歩くことそのものが日常ではありません。また、自家用車が当たり前の生活で、意識して歩こうとしても、「せっかく車が使えるのに・・・」と、体力の前に気持ちが萎えてしまい、魅力を感じる余裕がなくなってしまうのではないか、と感じます。さらに、福井県民は「発信力が弱い」とも言われていて、自分たちの良いところを強調したがらない性格があります。こうしたことから、地元の方々は自らの地域の魅力を発見し、伝えるのにいつも苦労しています。

 地元の方々と来訪者との間に、「歩く」ということへの姿勢の差が大きいように思います。私は、千葉→敦賀→東京と首都圏と地方圏をほぼ半々で経験しましたので、どちらについても等しく体験しています。現在は東京に住んでいますが、2キロや3キロくらい歩くのは特に苦ではありません。敦賀を訪れても車がないので、市役所くらいまでは普通に歩きます。1時間くらい歩くこともあります。しかし、敦賀に住んでいた頃は車があったので、そこまで歩くことはありませんでした。住み慣れていることが、こうした差の源泉になっていると思います。

 関連するエピソードを紹介します。1999年に、敦賀市は開港100周年を記念した大規模イベントを開催し、駅前から商店街を結ぶルートを「シンボルロード」と名付けて、松本零士氏の作品「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」のモニュメントを設置しました。歩いて楽しみながら、いつの間にか敦賀市のシンボルである港に着いていた、ということを目論んでいたと思います。しかし、地元の方にはそれほど浸透せず、時々、市外から来た方がチラホラと記念写真を撮っているくらいでした。今もそれは変わっていません。

 ですが、地元にもっと浸透してシンボルロード沿いにさまざまなお店やイベントが展開されれば、本当に楽しめるシンボルロードになっていたかもしれません。あれから四半世紀となりますが、今回は新幹線開業で歩き慣れている人々が多数訪れることを考えれば、ここであらためてシンボルロードの可能性が注目されても良いのではないか、と思います。

 一方、北陸新幹線の敦賀駅には「動く歩道」が設置されます。これは市の要望(だったと思います)で実現するのですが、羽田空港には動く歩道が多数あるものの、東京駅でさえほとんど見かけません(距離のある京葉線への移動のためにあるくらいです)。首都圏の人々に敦賀駅の動く歩道をどこまで便利に感じていただけるかは、未知数です。逆に、地元の方々には動く歩道が重宝されると思うので、これが新幹線で市外へ出ていくことを助ける存在になってしまうとも考えられます(実際は、そこまで大袈裟なものではないかもしれませんが・・・)。

 佐々木俊尚さんのコメントに関連して私が付け加えるとすれば、「歩く」ことに対して、地元の方々もいよいよ発想を切り替える必要があるように思います。北陸新幹線の開業は、多くの来訪者を受け入れ地域を活性化するために実現するものです。それならば、「何に対して来訪者が喜んでくれるのか」を、来訪者の立場に立って考えることが出発点になると思います。「ずっと敦賀で暮らしてきて、急に変えることなどできない」「ほとんど歩かなくても生活できる状況は、新幹線が開業しても変わらない」、確かにそうかもしれません。しかし、それでは何のために開業するのか、ということになってしまいます。

 もちろん、オーバーツーリズムで地元の方々の生活が脅かされるのは、さすがに行き過ぎだと思いますが、駅周辺から商店街の活性化は長年の課題です。その間、駐車スペースの確保も進みました。歩いて楽しむための緑化やポケットパークの整備、スタンプラリーなどのイベントも行われてきましたが、「活気がある」状態までには至っていません。多少不便を感じても、地元の方々が「二度と来ないチャンス」であることを自覚して、意識して歩いてみることが大切だと思います。そうすれば、歩いて初めて感じられる魅力も発見できるでしょう。あとは、それを勇気を持って発信することだと思います。その時に、佐々木さんのような方のコメントは、とても心強く、ありがたい限りです。

 あと半年で新幹線が開業を迎えます。ホテルや集客施設の整備など、目に見える受け皿は着々と整ってきていますが、目に見えない「心の受け皿」も急ぎ整えてほしいと感じます。地元の人々から、「あれがない」「これがない」「何にもない」「こんなものあってもしょうがない」と聞くことが多くありますが、決してそうではありません。同じ風景でも、日によって見え方が変わってきます。今日からでも、歩いて楽しんでみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?