見出し画像

激動を生き抜く!これから地方公務員が考えるべきこと:アナザーストーリーズ「吉野ヶ里遺跡」から

 先日放送されたNHKの番組「アナザーストーリーズ運命の分岐点」で、佐賀県吉野ヶ里遺跡が取り上げられていました。歴史には必ずしも詳しくないのですが、遺跡の存在は知っています。ただ、この遺跡が工業団地の建設に向けた調査で発見され、その後の市民運動から保存への機運が高まり、知事の決断を動かして一部保存が実現した、というストーリーは番組で初めて知りました。住民の粘り強い運動が実って保存されたことは、今から振り返ると本当に良かったと思います。

 私は、もう1つのストーリーにも注目しました。それは、マスコミの対応です。番組によると、吉野ヶ里遺跡が邪馬台国のものではないか、という朝日新聞とNHKのスクープを機に大きな注目を浴びたそうです。しかし、実はその前に地元の新聞も吉野ヶ里遺跡の報道をしていたのですが、「それほど注目されるものではないだろう」との認識から、扱いは大きくありませんでした。それが、東京から著名な歴史学者が吉野ヶ里遺跡を訪問し、朝日新聞とNHKが邪馬台国との関係を前面に打ち出して報道したことで「スクープ」のような形になった、ということでした。地元新聞社の方は「やられた」と思ったとの感想を述べておられました。

 地域資源を掘り起こすことが地域活性化に必要だと言われますが、自分に身近なものを資源と見るのは、容易ではありません。「水が美味しい」「魚が美味しい」「自然が豊か」といったことも地域資源として掘り起こすと大きな価値を生む可能性があるのですが、その地域の人々には「当たり前」のものでしかありません。一方で、地域にはない流行の店やテーマパークを「近くにあったらどんなに良いことか」と考え、地域を離れる若者が多くいます。そして、離れてみると分かるのが、地域の価値なのです。

 私も大学時代に同じような経験をしました。自宅の最寄駅と東京駅を結ぶ京葉線が開通しましたことです。あの東京ディズニーランドに直結する電車なので、多くの人が乗った経験があると思います。私も2年間ほど京葉線に乗って通学したのですが、結局、一度も東京ディズニーランドには行きませんでした。毎日のように電車から東京ディズニーランドが見えていたにもかかわらず、です。むしろ、閉園時間前後に大量のお客さん(ミッキーマウスの服装や大きなお土産を持った家族連れ)が乗ってきて、余韻に浸っている姿に困惑していました。身近になると、意外とアクセスしないものだな、と感じた経験です。

 吉野ヶ里遺跡も、地域の人は当初、あまり注目していなかったのが、東京の巨大な発信力と注目されるための視点で切り取った報道をきっかけに、地元でフィーバーが起きた、というのは地域が身近にあるものをどう掘り起こすべきか、についての教訓を示しているように思います。私の地元、福井県敦賀市も、あと半年で北陸新幹線開業を迎え、多くの来訪が期待されています。改めて身近にあるものを見つめ直し、掘り起こせるものがないか、地元の皆さんの「宝探し」を期待したいと思います。

 さて、番組には注目すべき続きがあります。それは、東京のマスコミにスクープされたことを教訓に、さらに大きなスクープを、今度は地元のマスコミがした、ということです。その報道を見て、今度は東京のマスコミの方が「やられた」と言っていたのが印象的でした。なぜそれができたかと言えば、やはり東京のマスコミにスクープされた悔しさもあると思いますが、地元の情報を交流ネットワークでつかみ取ったことが大きかったようです。やはり地元の情報を獲得するにはは地元こそ大きなアドバンテージを持つのです。東京のマスコミにスクープされたからこそ地元の宝に改めて目を向け、地元でしか取れない情報を掘り起こし、強く発信できたのだと思います。東京の発信力を巧みに利用した逆転劇があったように見えます。

 NHK「アナザーストーリーズ」は、地域資源を掘り起こすうえで、また、注目度を高めるうえで、地元の人々と地元以外の人々、マスコミの役割を、改めて考える題材となりました。再放送の予定もある(9月26日)ようですので、よろしければご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?