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激動を生き抜く!これから地方公務員が考えるべきこと:花火大会の有料観覧席問題について(続き)

 先日もこのテーマについて考えたことを述べましたが、今回はまた別の視点から考えてみたいと思います。

 まず、有料観覧席は「格差社会」「分断」の問題にも関係していると感じます。所得の高い富裕層は、お金をかけてでも眺めの良い場所で花火を見たい、という希望を叶えることができます。特に、市外の方は移動や宿泊などに時間とお金をかけても花火大会を見に来るはずなので、有料観覧席を購入する人が多いのではないかと想像します。これに対して、市内の方にも富裕層はいるでしょうが、ちょっと移動すれば気軽に見られますし、これまで無料で見てきたものなので、わざわざお金をかけようとする人は少ないと考えられます。そのため、「有料観覧席は市外の富裕層」「無料エリアは市内の一般世帯」という構図が生まれ、冒頭の「格差社会」「分断」に類似した問題が生まれるのだと思います。

 税金には、こうした格差を埋める「再分配機能」があります。岸田内閣も「成長と分配の好循環」ということを強調していますが、税金は強制力を伴う重要な手段です。その代表は、所得税です。有料観覧席は、花火大会の開催費用の負担を多めにしてもらい、無料エリアの人々にも無料で楽しんでもらう再分配の要素がある、と捉えることができるのではないでしょうか。もちろん税金と違って徴収の強制力はないものの、有料観覧席が売れるから無料エリアがある、と考えることもできるわけです。有料観覧席のせいで無料で楽しめない、という考えは、花火大会は無料か当たり前だ、という前提があるように感じます。

 ただ、花火大会の開催には税金も使われている場合が多いので、納税者である市民は、有料観覧席でも安価にすることも1つの方法になるでしょう。公共施設等の使用料でも、利用者が市内と市外で料金を異なる形にしているケースも普通にあります。市民用の優待エリアを用意して、低い価格で販売しても良いと思います。もちろん、これですべての不満が解消するわけではないとしても、今までよりは少し改善されるのではないでしょうか。

 あるいは、それでもお金を払うことに抵抗があれば、市民がボランティア活動に参加した際に無料招待券をプレゼントする、といった方法もあると考えます。市の負担を減らすことと花火大会の収益を増やすことは実質的には同じなのですから、こうした考え方も成り立つはずです。ただ、行政機関はイベントごとに収支を考えることが多く、また、縦割り組織のため他の部署が行うイベントとの連携は難しいのが実態です。このアイデアを実行するには、別に乗り越えなければならない壁が生まれることにも留意が必要かと思います。

 最後に、有料観覧席は住民がその地域の価値をどう評価するか、という問題にも関係していることを述べたいと思います。先ほど、住民は花火大会を気軽に楽しめる(楽しんできた)分、高い価格を想像することはなかなか難しいかもしれません。しかし、花火大会を開催するには有料観覧席の収益が必要で、有料観覧席を設置してもでも花火大会を見たい、というニースがあれば、有料観覧席を設けざるをえません。その時、「いくらにするのか」は「いくらまでなら来てもらえるのか」という発想が必要になります。行政が関わるので利益を上げてはいけない、と考えると、「いくらならば費用が賄えるのか」という発想になってしまいますが、どちらが収益に貢献するかと言えば、間違いなく前者です。可能な限り収益を上げるためには、可能な限り花火大会の価値を高める必要があります。それは、「〇〇万発」とか「〇〇最大級」といった花火大会単体で考えるのではなく、打ち上がる場所と花火との調和や、地域の他の魅力との関連づけなと、日頃のまちづくりも含ませることができるでしょう。それを実践するのは、何も行政だけではありません。住民こそ、その主体であるべきだと思います。

 花火大会における有料観覧席をきっかけに、さまざまなことを考えてきました。まだまだ尽きないのですが、整理がつかなくなってしまうので(すでについていないかもしれませんが・・・)、このあたりでいったん閉じたいと思います。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。まだまだ暑い日が続きますが、気をつけてお過ごしください!

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