「パーフェクトデイズ」の心地よさ、「万引き家族」の後味の悪さ、ディテールのユーモアの差にある。

明日から通常国会が始まりますが、前日の今日1月25日木曜日、話題の「パーフェクトデイズ」を蜷川有紀といっしょに日比谷シャンテに観に行きました。
 役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督による「PERFECT DAYS」はすでにカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞しているが、今度、アカデミー賞の国際長編映画部門にノミネートされたし、評判もよいので自分の眼で確かめておきたいと思ったのです。
 賞をとって評判がよくても僕には関心できない、例えば「万引き家族」のような作品もあるからです。
 結論から述べると、本作品はいわゆる大作ではないがきめ細かな描写にユーモラスな視点があり、トイレ掃除の初老の男はいわば底辺の暮らしなのだが決して暗くはない。そこが救いのない「万引き家族」と決定的に違うところだ。
 僕には『日本凡人伝』という、いわば普通でありながらプロとしての誇りと諧謔について語る作品があります。
ドキュメンタリー作品でスタートしたヴェンダース監督は「東京物語」の小津安二郎監督を信奉しているので、ディテールの捉え方がとても巧妙です。脇役・端役として田中泯、石川さゆり、あがた森魚、研ナオコなどほんの一瞬であったりするところの味付けが上手い。リアルは細部にあり、ドキュメンタリーとフィクションが融合する場所なのです。
 渋谷のモダンなトイレについてはリンクを貼りますが、舞台をそこに設定しつつ下町の生活をコントラストにしていること、そしてふだん利用しながらあたりまえに思っている首都高速の独特のモダンな風景が、主人公が愛する“木漏れ日“の自然とも不思議にマッチして効果的です。
 なおアンドレ・タルコフスキー監督『惑星ソラリス』も首都高速の風景に着目していますが、ここは東京を語るうえで重要なポイントです。

 ◎ネタバレ的にヒントを言うと、主人公の以前の経歴については気をつけて会話を聞いていると察しがつくような部分があります。

https://tokyotoilet.jp/

猪瀬サロンに掲載したものです。
https://lounge.dmm.com/detail/523/

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