見出し画像

好きな人のブログ (※再掲)

(このエッセイは2019.11.05に投稿したものです。誤って消してしまったため再投稿いたします)


☽・:*



卒業前に後輩が自分のはてなブログのURLを教えてくれた。Twitterの別アカウントと連携された匿名のもので「知り合いには他の誰にも教えてない」らしい(今でもそうなのかは知る由もないが)。読者登録させようとしてきたけれど、「気が向いたときに見るから大丈夫だよ」と断った。

あれは一体どういう風の吹き回しだったのだろうか。「読んでもらいたいけど、内容について実際に触れてくるのはやめて欲しい。いのりさんはそれをわかってくれると思うから。」と彼は理由を説明したが、そんなこと大抵の人はわかってくれるんじゃなかろうか。

その日わたしは彼に告白し、呆気なく玉砕した。

----------------------------------------------

「畳の目を数えるしかやることがない時に読んでください」と書かれたそのブログには家族のことや 昨晩の夢の話 恋愛観 幼き日の出来事などが綴られていた。わたしの名前は一度として出てこない。そこに登場する人たちをうらめしく思う半面、誰も知らない彼の心のうちをこっそり覗けることに小さな優越感を覚えた。

記事数はさほど多くなくすぐに読破してしまったが、わたしは一人の夜になる度にそのブログを開く。

6月に2回、7月に1回、8月に1回、ブログは更新された。そういえばあの日「気分が落ちているときに書くので、更新されたときは落ち込んでいると思ってください」と後輩が言っていたことを思い出す。ブログには「助けてください」と書かれていた日もあったが、わたしは一体どうするのが正解だったのだろうか。現実に持ち込むな、という彼の望み通り(?)一度として連絡はしなかった。

ところが、8月15日を境にブログは一度も更新されなくなった。聞くところによると、どうやら彼女ができたらしい。Twitterの別アカウントで出会ったという彼女。きっと例のブログのことも知っているのだろう。

ブログの更新を願うことは彼の不幸を願うことだ。わたしは今日も畳の目を数える代わりに過去の記事を読み返している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?