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出会いにうたうウタ の章 

とおーい昔の
すぐ最近


ある日
少年のペコルくんは
トボトボと、うつむきながら歩いていた


なんだか、おうちにまっすぐ帰れなかったのだ


そんな風にしていると
やっぱり、足は、
いつもの丘に、向いていた



通称チャーンムーディの丘(※1)の
上に登るのは


小さいペコルくんには
まだ少し息があがる


ところどころで
みじかい手を伸ばし
小さい手を使って、
岩登りのようにして、
登らなければならない場所もあるからだ。


そうして、頂上に辿りつくと
もしかしたら
頂上というほどではない高さなのかもしれないけど


そこには、いつも
ステキな風が吹いている


それはそれは
とても気持ちのいい風なのだ。



それはとっても不思議なことだよ


だって
たぶん、
辿り着いた高さは、



ほんのすこし
ほんのすこし、
高く上がっただけなんだ



数字にしちゃうと、
なんだけど
4〜50メートルほど、なのかも知れない、


たったそれくらい上がっただけで
たったそれくらい上がっただけなのに


そこから広がる風景

それは
その下に広がったマチを
ぜんたいぐるーーーっと
見渡せるようになって


そんな風景を眺めてみると


ペコルくんは
いつも


なんだか


「あ〜、下界だなぁ〜!!(苦笑・笑)」と思えてくるのだ


みんなも
そんな丘に少しだけ登ってみて
景色を眺めてみるといい


きっとペコルくんと同じような
声を上げるに違いない



そう
下には、色んな人間模様が入り組んでいる。


けれども、


その丘にたって、
下を眺めていたら


なんだか、とっても色んなことがバカバカしく思えてくる


“それら“は、
決して、この場所までは
上がってこれない、
辿り着いてこれない


それらには
こんな風景が広がっていることを
目に入らない
知りようもないのだから


それは分かりきっていることなのだ


それだからなのだろうか


ペコルくんにとって


そこは
とっても安心できる
秘密の場所、
プレゼントされた場所だった


そう、
それに、
そこはタイセツな人に教えてもらった、
特別な場所でもあったのだ



そこで
しばらくぼーっとしてたり
座って
おやつを食べたりしてたら、


なんだか
元気になって、
それから、
おうちに帰るのだ


その日も、
そうだった。


ペコルくんは、
いつものように
そこで
おやつを食べようと
丘にのぼったら

夕陽の方に、
立っている人影があった


「あれ?」


ペコルくんは、とても、驚いた。


この場所を知っている人がいるなんて…..



すこし見ていたら


影が振り返った、、


半分、夕陽に照らされた、顔は、


半分、影に隠れて、表情ははっきり見てとれないが

なんだか、
とても懐かしい、


なんだか、
ずっと前から、知ってるような、、



そうして、


影が、一歩ずつ近づいてきた


すこしずつ近づくにつれ
思い直した


懐かしく思ったのは、
気のせいだったかもしれない


見たことはない、初めて出会った人だったのだ


しかも、なんだか
見たこともないような格好をしている
瞳の色もなんだか、ちょっと違う気もする


でも、、
やはり、懐かしい、、
雰囲気、匂い、、



ほかに表す
コトバが
うまく見つからないのだ



とおい昔の、、どこかで、、



「やあ、、、お邪魔だったかい?」


「ううん、お邪魔だなんて、ないよ!」


ペコルくんは夢中で首を横に振った


「そうかい、なら良かった、、フフフ」


「んー、っと」


ペコルくんは、色々と質問をしたくなった。


なんでこの場所を知っているのか?
どうして懐かしい感じがするのか?
なんで、、、
どうして、、、


そんな、たくさんアレコレを


でも、
いきなり色んなことを聞いちゃいけないような気もして
もじぃもじぃしてたら、


声が続いた、

「ボクは、イノーリン、よろしくね」


すこしおどおどしながらペコルくんは返した



「あ、、ボクは、ペコール、、、みんなにはペコルって呼ばれてるよ」

「ホウ、、、ペコル、、ステキな名前だ。。」


「ペコル、、もう一度きいて申し訳ないんだけど、ここはキミにとっての特別な場所じゃなかったかな? お邪魔じゃなかったかい?」


「ううん、そんなことないんだよ!」


「ここは特別な場所だけど、お邪魔じゃなんかじゃ、ないんだよ!!」
(今度は、ちゃんと言えた!)



ペコルくんは、
ちょっと大きな声で、
イノーリンの声を打ち消すように
首を振って答えた、、


そうじゃない、
そんなことなかったからだ、、


自分の声が、
自分で思ったよりも、
大きくて、自分でビックリしてしまった


その自分でビックリして目ん玉が大きくなった様子をみて


イノーリンは、笑った


「フフフ、なら良かったよ。ありがとう、なんだか、キミが、すこしうつむいて下を見てたように見えたからね、ボクがキミの特別な場所にお邪魔しちゃってたからじゃなかったかな?って思ったんだよ」



彼はフフフと笑うのがクセのようだ
その笑いは、なんだか彼に
すごくよく、似合っていた



なんだか
こちらの心の奥底の隅っこまで
かゆいところのその裏まで行き渡るような、
ちょうど心地よいボリューム、サイズ、質感だった



「それは、、」


ペコルくんは、
イノーリンにそんな風に見えてしまった理由を
打ち明けようか、悩んで口をつぐんだ


初めて会った、イノーリンに、
こんな話をしてよいのか、わからなかったからだ


なんだか、いのーりんの、この懐かしい雰囲気につられて話してしまいそうにもなるし、話しても大丈夫な気はする、でも、、


いのーりんは、夕陽の方を見ていた


「うん、、、夕陽がキレイだ、ステキな風も、、吹いているね。。。うん、たしかに、ステキな場所だね、ここは。」


「うん、、」


たしかに一緒に、夕陽を眺めていると、それだけで、なんだか、どうでも言いような、わざわざ言わなくても、いいような気もしてくる



「フフフ、、だから、さ。。 だから、ね、だから、こそさ。そんな時だったり、そんなことは、ね、言ってもいいし、言わなくてもいいんだよ。だから、ね、そんな時のそんなことはね、言っても大丈夫ってことだし、言わなくても大丈夫、、どっちでも大丈夫って、ことなんだよ」


なんともなく、いのーりんが、独り言ともつかないようにして、ほほえむようにコトバをつむいだ、


ペコルくんは、すこし驚いて、、、
思い切って、いのーりんに言ってみた



ううん
なんとなく、気づいたら、言ってみちゃってた、
そんな感じが近かったかもしれない


「んとさ、んとさ、、、ボク、お家とか学校だったりで色んなことがあってさ、、よくわかなくなっちゃって、、、なんか、どっちも行かれなくなっちゃったんだ、、、」


そしたらさ、驚いたよ、
とつぜん、話をしたんだけど、
イノーリンは、全然、驚かなかったんだ!


「フフフ」


って、なんとなーく微笑んだままだったんだ



そうして、続けた、


「ホゥ〜、、、そうか〜、そうだったんだね〜。そうなんだねー、うんうん、それで??」


ボクは、そんな風に聞かれただけで、
なんだか涙が出そうになった


そのままの話は続けられなさそうになって


違う話をしてみた


ずっと誰にも
言えてなかったような話

いや、
ホント言うと
もしかしたら
イノーリンに会って
フト今思いついたような話


「そう、だからね、ボクは大きくなったら世界をいっぱい冒険したいんだ!」


言ってしまって、
大丈夫だったろうかと
ペコルくんは不安になった



『お前には、何にもできないだろう!』と
また色々言われたりするんじゃなんかと思えてきたからだ


「ほう、、、」


イノーリンは応えた



全然違う話になっているのを
分かってるのか、分かってないんだかで
イノーリンは、しばらくして声を続けた、、



「ほう、、、、それは、、ステキなことだね!」



「え?!ステキなこと? ステキなことだって??」


「そうさ、とってもステキなことさ。しかもステキだったところは、一つじゃない、いくつもあったよ」


「え?!そうなの?!」


「そうさ、今のキミの話の中にも、キミの中にも、たくさんあったさ」


「まずはね『おおきくなったら、いろんなところに行って、冒険したい』って思ったことさ」


「ステキなことなの?!」


「それは、とってもステキなことさ」


「そーなの?!ステキなことなの?!」


「それは、とーーっても、ステキなことさ」


ボクはそれを聞いて、、
顔を上げられなくなった、、


そうか、
ボクの夢は、ステキなことだったんだ。。
ボクも思ってもいいことだったんだ


「そしてね、まだまだステキなことはあるさ、
それをボクに教えてくれたこと、言ってくれたことさ、
それも、とってもステキなことさ」


「そうなの?!言ってもよかった?大丈夫だったの?!」


「フフフ、それもステキなことだったさ、だってそれを教えてもらったボクが、ステキな気持ちになれたのだから」



「そうなの?!」



「フフフ、、心配ない、心配ないさ、最初からぜんぶ大丈夫だったよ、それはね、そんな冒険は、こっちの世界では旅というらしいけどね、実はね、ボクもボクらもね、ずっとたくさん旅をして、たくさんのすべてに出会い、たくさんのことを語りあって、たくさんの大丈夫を確かめてきたんだよ、だからね、それをキミに伝えるよ、ペコルくん、聞いておくれ。だからね、キミもやっぱりきっと大丈夫なんだよ、」


たぶん
それを聞いた時のこと


ボクは
たぶん

いつのまにか
ボクは
これまでのすべての思いが
両目のフチから
水分となり
とめどなく流れでてることに、、

気づくことすら、忘れてて



そして
それらが
これまでの
すべてが
気体に溶けて
宙に還っていったようだったように、、、


そんなふうだったように
おぼえているのだけれども、、


そう、
それが、、、


ボクとイノーリンが
出会った時のお話で


ずいぶん昔の
ちょと前


とおいとおい
昔の
つい最近、


そんな出会いの、お話さ




聞いてくれて
ありがとう


じゃあ
またね!



con



※1 参照:「チャーンムーディの丘」っていうのは、インドのハンピってところにある丘の名前、「岩場を手で登って頂上」に辿り着く箇所は、長野県の五竜山の頂上前の岩場のイメージです。













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