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話題作「呪術廻戦」に見る教育観


推しについて、語らせてください。

ということで、今回のお話はタイトル通り、大人気作品「呪術廻戦」についての私見。とは言っても今後の話の展開予想とか裏設定予想とかそういうのではないです。そして芥見先生の見解ではなく、あくまでもわたし自身の解釈と見解であるということを前置きさせていただいて、お話しようと思います。

「呪術廻戦」と「教育」

この作品、教育的観点から見ることも可能だと思うのですよね。
と言っても作品そのものが教育に良い、悪いという話ではなく、あくまでもこの春から見事教育者の端くれとなったわたしが、作品の節々に現れるキャラの言動から、「教育とはどうあるべきか」というのを語ってみました、ということです。そして繰り返しますが作者である芥見下々先生のご見解ではなく、わたし個人の解釈です、ということ、そして本編に関する重大なネタバレは避けるように記述していますが、ネタバレと感じるラインは人それぞれなので、ネタバレが心配な方は読まないでください、という二点を先に書かせていただいて、いよいよ本題、始めます。

「教師は社会経験がない」……吉野順平の発言に込められた意味と悲愴を掬う

吉野順平というキャラクターがいます。
出番は少ないながら、人気のある人物のひとり。わたしも好きです。一緒に映画談義したい。「ミミズ人間」気になる。どんな映画だろう……
それはさておくとして、彼の発言にこんなものがあります。

「教師って…学校卒業して学校に勤めるからおよそ社会というものを経験してないですよね」
「だからアンタみたいなデカい子供が出来上がるんでしょうね」

              『呪術廻戦 幼魚と逆罰』(呪術廻戦3巻)より

順平は学校で、とある生徒たちに集団でいじめを受けていました。ところがこともあろうに担任の先生はそのいじめに気付かないどころか、いじめる側の生徒と彼が「仲が良い」と思っているんですね。そんな先生に対する不信が招いた台詞です。わたしも同じシチュエーションなら言ってしまいそう。共感する方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そうは言っても彼の言葉はなかなか極論で、真偽を問えば、この言い分は間違っていると思います。しかし、彼にこう言わせてしまったその時点で、教育者としては恥じ入らなければいけないことだとも思うんですよね。こう思ってしまうのも、不思議ではない。だから半分正解で、半分間違っているということになるのかもしれません。
順平にこのように言わせてしまった背景として、大津の教員間のいじめ問題をはじめとする、教師のあまりにも子どもじみた事件の報道の数々も、少なからず影響があるのではないかと思います。しかしカレーを目に入れないまでも、語弊を恐れずに言えば、どこの組織でも人間関係の問題や合う、合わないはあるはず。人間だしね。ただし、子どもにより近い教育者たちが見せる態度は、より慎重でなければならないのではないでしょうか。
また、会社員とは違い、学校の先生は「公共の福祉に資する者」、すなわちある特定の組織や会社の利益のためではなく、国や社会全体の為に働くという、目には見えにくく、またすぐに効果が出るわけでもないけれど大変重要なお仕事をされています。だから、「自力でお金を稼ぐ感の薄さ」=「社会経験のなさ」に結びついてしまうのかもしれません。
残念ながら、まだまだ年功序列の強い業界ですし、再雇用の年齢層もお高めで、この辺に賛否があるのはよくわかります。しかしよく言われている通り、圧倒的に長い時間働いている割には、残業代も会社でいうところのみなし残業が先に与えられてはいるもののそのほとんどがサービス残業というのが実態で、休日はアルバイトよりも低い時給換算で出勤しなければならない苦しみもあるのが現実です。自分でしっかり働いて、働きに応じたお金を稼いで、税金を納めて選挙に行き、社会に対しやるべきことを果たす……教師も会社員と何ら変わりない、立派な社会人です。

ですが全員が全員そうかというと、そうではないのもまた現実です。わたしも実際教育現場に赴いて、教育者である以前の部分を疑ってしまうような人を見たりなどしました(敵は増やしたくないので、多くは語りませんが……)。
わたしもですが、順平くんのように世の中に絶望する子どもたちに、少しでも希望を持って生きていけるよう導くのが、教育者全体の使命ではないかと日々感じています。そしてわたしはそのためにしばらく、教育業界で頑張りたいと思います。

五条悟と夏油傑の分岐点……教育者としての「強さ」と「かっこよさ」

五条悟と夏油傑。どちらも大変人気のあるキャラクターです。
2人は、元々は同じ道を歩んでいたはずでした。しかし色々ありまして、五条は呪術師(呪いを祓う側)として呪術高専の教師に、夏油は呪詛師(呪う側)にと、決定的に道を違えていきます。
わたしはここで、五条の「真の強さ」を見た気がしました。五条悟は、呪術師最強の強大な力を持った人物なんですね。人は強大な力を手にすると、支配的になったり、暴力的になったりととにかく道を誤りがちですが、彼はその力で人を救う側に回ったのです。ルックスもいいのだけれど、芯もしっかりとしているキャラクターなので、人気が高いのだと推察します。

一方で、夏油も最初から悪い人間ではありませんでした。非呪術師を守るために術式があると信じ、行動していた人物でした。ほんの少しのずれによって、大きく立場が変わることもあるのですね。どうしても結果だけ見てしまいがちですが、多面的に、過程も込みでなんとかその人の思いがどういうものであるのか、考えていきたいものです。

五条からは、教育者としての「強さ」と「かっこよさ」が感じられます。それは単に戦闘能力という意味においてだけではなく、ある種の矜持ではないでしょうか。強さとかっこよさは、はき違えると大変なことになります。「イタイ奴」ぐらいで済めばまだいいのかもしれませんが、大抵は取り返しのつかない事態になるのです。車の運転も、真にかっこいいのは華麗に速度超過しながら進路変更しまくってスイスイ追い抜いていく人ではなく、無事故無違反のゴールド免許の優良ドライバーですからね。……はい。肝に銘じておきます。

結論・「呪術廻戦」には魅力的な教育者がたくさん!

ここまでつらつら書いてきましたが、他にも七海健人や伊地知潔高など、大人オブ大人な教育者たちがたくさん出てくるのも本作の魅力のひとつだと思います。主人公は生徒なので、生徒目線で読みがちですが、時には教育者目線で読んでみるのも、面白いかもしれませんよ。大変面白い作品なので、未読・未視聴の方は是非、本編を楽しんでください!

「呪術廻戦」1~15巻
言わずもがな、名作です。人生の必修科目と言っても過言ではないですね。
生死をかけたバチバチの攻防が繰り広げられる、熱い展開が見どころ。特に最新巻でわたしは大号泣でした。ちなみに友人との間では「お手軽絶望」と呼び声が高い作品です。お手軽に絶望したい方も、そうでない方も、キャラやストーリー展開、戦闘シーンに魅力を感じる方も是非。ジャンプに人生の大事なことを教わったわたしの、激推し作品です。
「呪術廻戦 小説版」1・2
原作の前日譚や合間のエピソードが、微細な筆致によって小説で復元。キャラの動きが目に浮かびます。絵がないことで生まれる想像の余剰を楽しみたい人は、きっと楽しめるはず。個人的に小説版を読んで伊地知さん好きになりました。芥見先生ご監修の完全公式なので、「解釈違い」も(恐らくは)生まれずに安心。原作の世界に浸りたい方はこちらも是非。

\アニメもあります/

https://www.amazon.co.jp/dp/B08KJ71RM4?ref_=dvm_jp_pv_sl_ya_003_kw_x9ecU5dhc_c472729776652


新しいキーボードを買います。 そしてまた、言葉を紡ぎたいと思います。