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『民族と文明で読み解く大アジア史』遺伝子でアジア史を考察する視点(世界の歴史)

 民族や種族に対する研究は、タブー視される国が多い。無頓着なこともあり日本は比較的研究しやすい。本書はアジアの歴史を民族という切り口で俯瞰したユニークな歴史書だ。

 稲作文化は弥生時代特有のものという認識があるが、1960年以降に九州のいくつかの地域の縄文遺跡から稲作の痕跡が発見されているという。教科書には取り上げられていないが、約3000年前の縄文時代後期には大陸から稲作文化は伝わっていた。長江文化の高床式の倉庫や水田、住居の構成は日本の縄文時代末期から弥生時代の村にもみられる。

 一方、日本に稲作が伝わった約3000年前よりも以前の稲作の痕跡が、朝鮮半島では一切見つかっていない。日本の古代イネの遺伝子分析でも、稲作は朝鮮半島を経由することなく、長江流域から直接日本に伝来している。その種の遺伝子(RM1-a、RM1−b、RM1−cの3種)は朝鮮半島には存在しない。
 長江文明と黄河文明を明確に区別せず、中国で一括にすることから、日本の歴史教科書の誤りの原因だとしている。

 イランのカナートは、中国にも朝鮮半島存在せず、いきなり奈良の東大寺のお水取りとして伝わっているが、これはイランから直接人が伝承したためだと言われている。中国の長江流域の人が直接日本に農耕文化を伝えれば、前述の伝承が行われることになる。

 また、トリビアとして参考になったのは、ロヒンギャ族はアーリア人の最終帰着地で、ミャンマーの西部アラカン山脈で途切れるという。ちなみに、史上最悪の作戦と呼ばれているインパール作戦は、このアラカン山脈を超えインド北東部のインパールを攻めたものだ。

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