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『逆説の生き方』「マイナス」のプラス 反常識の人生論が原題(環境研究)

 気軽に読める外山滋比古さんのエッセイを手にとってみた。この本は、幸福をプラス、不幸をマイナスとすれば、プラストとマイナスは縄のように交互にあらわれる。その場合、マイナス先行がよい。マイナスではじまればプラスで終わる可能性が高いという論説のエッセイだ。

 イギリスのことわざ「美酒は看板を必要としない」から、自己宣伝をする嫌な人間は、はじめは華やかであるが、実力がともなわないことが多くやがて落ち目を迎える。スロー・スターターである桃李主義をすすめる。第三コーナーぐらいから頭角をあらわし、第四コーナーをまわるところには先頭を競うのがよいとしている。

 青森では、傷のあるリンゴがうまいというのが定説だ。なぜなら、リンゴは傷がつくと、早く治そうとする。ほかのリンゴ以上に努力して甘く、うまくなる。ものを知らない人間が、傷ものとして見向きをしないのは、リンゴの不幸だが、人間の偏見だ、と。

 「売家と唐様で書く三代目」から、三代目はみんな失敗するのではなく、恵まれた育ち方では苦労が不足する。人間を教えるのは人間ではない。苦労、貧困、病苦などの恐ろしい経験によってのみ、人間は人間らしくなる。

 読書三昧の元セールスマンは、歴史物を好み、伝記や自伝を愛読する。彼は、読みだして早々のところで、自画自賛が出てくたら、その本を捨てるという。始末が悪いのが自慢談なのだ。

 ノーベル賞を受賞した田中耕一さんは、少年時代に実験のことで先生に質問したところ、「先生でも気がつかなかったよ。スゴイねえ」というひと言が、科学志望を決定した。ノーベル賞受賞を受けて帰国すると、空港からまっすぐ澤柿先生のところに直行して感謝したという。

 知識より上に、新しい知を生み出す思考があることを知識人はとにかく忘れる。たえず思考に挑戦するというのは、普通のことではない。どこの国でも、いつの時代でも、考えることを教える学校はない。考えるのは独学である。この独学の思考力を身につければ、仮に知識が少なくても、すぐれた知性として社会に有用な人間たりうる。

 外山滋比古さんの「思考の整理術」は、大学生協で長く売れ続けている本だが、この本は、学生が社会にでて挫折する人を対象にしたと考えることができる。ひとつひとつの例は分かりやすいものばかりだが、上記は私が印象に残ったものだ。たまにはエッセイを読むのも面白い。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。