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『イスラエルとユダヤ人 考察ノート』立ち位置が違うが、ロシアや沖縄を起点とした発想は参考になることが多い(イスラエル)

 本書は『隔月刊みるとす』に連載された佐藤優氏の「イスラエル並びにユダヤ人に関するノート」が新書になったものだが、「みるとす」を少し解説する。熊本で手島郁郎氏が「キリストの幕屋」というキリスト教団体を設立したが、その団体は旧約聖書に重きを置く団体であることから、イスラエルとのつながりを重要視した。そのため多くの信者がイスラエルを訪れたので、例えば、カトリックやプロテスタントのクリスチャンが見向きもしないダビデの墓を私がお参りしたとき、そこにいたラビは「お前は幕屋か?」と質問してきたぐらいイスラエルで彼らは有名だ。その幕屋の人たちがベースになって創業されたミルトスというユダヤ専門の出版社の雑誌が「隔月刊みるとす」で、読者はイスラエルに親近感を抱いている人が多い。

 佐藤優氏はプロテスタントだが、受肉論の専門家で、本書によると新約聖書は毎日読むが、旧約聖書は気が向いたときしか読まないそうだ。聖書は「引照・注釈付き」を読むようなので、そこから新約から旧約という流れで読んでいると推測できる。イスラエルとの付き合いがはじまることで、旧約聖書を再発見したとあるので、それが「隔月刊みるとす」の編集代表の河合一充さんの目にとまったのだろう。さらに、佐藤優氏が本書で主張しているのは、日本のマスコミ報道は親パレスチナ(ハマス)であるが故に反イスラエルになることは国益に反する、という。その国益は以下の3つ。

①イスラエルは自由、民主主義、市場経済と日本と共通の価値観がある
②日本のインテリジェンス機能を強化するにはイスラエルとの連携は有益だ
③ロシアのユダヤ人とのコネクションが北方領土の解決につながるハズだ

 日本の国益を役人という立場で考えると、確かにこの3つは国益になる。しかし日本のグローバル企業の企業益で考えると、以下のことが言える。

④イスラエルはオープンイノベーションの提携先として最高の国
⑤イスラームは世界中に大きな市場を形成する共同体

 佐藤優氏も指摘しているが、一般論として日本人は中立という概念が好きだが、国際政治の現実において「純粋中立」なるものは存在しない。したがって、イスラエル絡みの中東問題では、中立的立ち位置はあり得ない。イスラエルの内在的論理を尊重する立場か、それ以外しかない。佐藤優氏は前者、私は後者を尊重する立場で、なおかつ私は、④は推進する必要があると捉えている。(しかし、グローバル企業は④だけではイスラエルボイコットの対象になってしまうので対策が必要)
 聖書に関しても、新約から旧約を読む佐藤優氏の流れと逆に、私はほとんど旧約しか読むことがない。このように立ち位置は違うが、彼のロシアや沖縄を起点とした発想は参考になることが多いことは確かだ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。