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『DEEP LIFE 海底下生命圏 生命存在の限界はどこにあるのか』ジェームス・ラブロック博士のガイア仮説はバージョンアップする必要がある(環境研究)

 現在、地球全体の海底下に生息する微生物の数は、290,000,000,000,000,000,000,000,000,000と推定され、この数はこの宇宙で確認されている恒星の数の1万倍以上だという。海底は、マリンスノー、堆積層、海洋地層(玄武岩)、モホ面、マントルと層がある。現在の地球深部探査船「ちきゅう」の切削技術のスペックは、水深2500mの海底に370トンもある噴出防止装置を設置し、そこから7000メートルの掘作することができる。したがって、いずれ人類はモホ面を超えマントルまで切削が可能となる。

 科学者のラブロックは、海洋表層部の海藻と雲の関係などからガイア理論を打ち立てたが、本書を読むと、海洋表面部だけでなく、深海の海底下に巨大な未知の生命圏があることがわかる。したがって、トータルでシステムとして地球を考えるならば、海底下も重要になる。われわれの生活と海底下がつながっている証拠に、ナノレベルのプラスチック粒子が、北極海の氷の下の堆積物や、推進1万メールを超える超深海(マリアナ海溝)に住むヨコエビの体内からも検出されているのである。また、海底下の深い領域の微生物群には、森林土壌の典型的な種類の微生物が検出されている。このことから、地質学的なダイナミズムと海底下は因果関係があるようだ。

 本書に示された著者の2つの仮説は面白い。

1)地下世界の生命進化には固有の進化の原理原則があるのではないか
2)生物の加齢と長期生存メカニズムの解明へのカギは、単細胞の微生物から構成される海底下生命圏の中にあるかもしれない

 海底下生命圏の微生物は、長期生存のスペシャリストだ。人間の視点だと、生育に必要なエネルギー供給に乏しく、光の届かない暗黒の世界で、なおかつ、鉱物に囲まれて動くこともできない超極限的な環境ということになる。しかし、その視点を海底下生命圏からの視点に移すと、地表の世界はエネルギーをめぐる熾烈な競争と自然淘汰が繰り広げられる世界で、ほとんどの生物は短命で、まったく穏やかでない超極限的な環境だということになる。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。