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『英雄の証明』「心が震える」という感覚には至らなかった

 大好きなアスガー・ファルハディ監督作品。まず映画そのもの以外で驚かされた点が3点ある。一つは、イラン人であるアスガー・ファルハディ監督の作品をAmazon Studioが製作していること。もう一つは、イランでは、借金が返済できないため、訴えられて刑務所に収監されるということ。日本では借金問題はあくまで民事事件になるので、刑事罰は受けることがないが、イランのイスラム法ではそれがあるのかもしれない。3つ目は、イランでは服役中に休暇があるということ。

 アスガー・ファルハディ監督らしい心理描写に引き込まれていく。SNSによって拡散される情報と真実の間で、小さな嘘を積み重ねる。結果的に息子までその渦に巻き込んでしまう。SNSの情報により、命を落とす人もいる中、自らをどう見られたいかという発想で作り上げるもの。あるいは、独り歩きしてしまう情報というものの正体。これらを自在にコントロールすることは難しい。コントロールしようとすると、思わぬ結果としてしっぺ返しを受けてしまう。

 アスガー・ファルハディ監督作品に対する個人的な思いとして、「心が震える」という感覚を味あわせてくれるという楽しみがある。『ある過去の行方』『別離』『セールスマン』『誰もがそれを知っている』にはそれがあったが、SNSという題材のためか、今回はそれを感じなかった。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。