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『未来予測入門 元防衛省情報分析官が編み出した技法』 ピエール・ワックは偉大だ(環境研究、未来予測)

 本書には未来予測のための以下の9つの分析手法が紹介されている。

1)「問い」の設定
2)アウトサイド・イン思考&フレームワーク分析(外部環境が内部環境を変えるので)
3)システム思考(氷山図、関連樹木図、ロジックツリー、ループ図、要因相関図)
4)クロノロジー分析(過去から現在までのトレンドを把握し、影響要因を特定)
5)マトリックス分析(ある時期に起きている事象を同時期に起きている他の事象と比較する)
6)アナロジー思考(ひとつの事象から類似した別の事象の発生を予測する)
7)ブレーンストーミング&マインドマップ
8)4つの仮説案出(SWOT分析、PPM分析など)
9)シナリオ・プランニング

 システム工学の未来予測方法だと、シナリオ・ライティング法(シナリオ・プランニング)の中心的に解説されている。1)から8)は手法というより、思考方法なので、未来予測に限らず利用できるものも多い。

 シナリオ・プランニングは、軍事戦略を立てるため、第2次大戦中にアメリカで研究されていたものだが、ランド研究所の研究員だったハーマン・カーンがビジネスでの応用を試みたことで企業家たちに支持されるようになった。シナリオ・プランニングの最大の特徴は、未来予測にとどまらず、「何をすべきか」「どのようにすべきか」という戦略判断や戦略策定までが含まれる。シェル社のピエール・ワック(ピーター シュワルツ)というフランス人プランナーが、ハーマン・カーンの影響を受け、オイルショックのシナリオを策定し、その対応策を準備した。シェル社の経営陣は当初このシナリオを取り合わなかったという。しかし、実際に1973年にオイルショックがあるとシェル社だけはワックのシナリオで難を乗り切った。

 シナリオ・プランニングには「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」があるとしているが、具体的には、未来がこうなるだろうというシナリオを書いてみる。そして、そのシナリオと現実に起きそうなこととの間で矛盾が起こるかどうかを探る。シナリオに矛盾があるとそれは現実には起こらない。現実として現れるのは、一定の調和、一定のルールがあるというのが、この方法の基本だ。シナリオ・プランニング(シナリオ・ライティング法)を学ぶには、ハーマン・カーンの著作を参考にするのもひとつの方法だろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。