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『柳井 正 わがドラッカー流経営論』ペガサスクラブだけではグローバル展開は難しい(他社の歴史)

 ニトリとユニクロは、同じ流通業でオーナー企業、そしてペガサスクラブ会員と、扱う商品は違うが似たような企業にも関わらず、なぜニトリのグローバルビジネスはうまくいかず、ユニクロはグローバル販売が国内販売を上回っているのだろう。この疑問を解くヒントがあるのではないかと、この本を読んでみた。ユニクロの柳井さんはドラッカーの本を節目節目で読んでいるようだ。次の言葉からも、本の内容だけでなく、ドラッカーそのものからも影響を受けている。

 たとえば国内の需要が伸びないのならば、海外に進出する方法だってあるじゃないですか。ドラッカーは若い頃から国境や言葉の壁なんか気にせずに世界中を渡り歩いて、自分の人生を自らの力で切り開いてきた。ドラッカーにもできたんだから、われわれにもできるはずだ。

 ドラッカーはユダヤ系オーストリア人なので、当然のことながら、国境を超えるハードルは低い。柳井さんはその点には触れず、日本人も国境の壁を越えるべし、としている。このような考えがペガサスクラブの渥美俊一氏のチェーンストア理論にあったのだろうか、という疑問が最初に浮かぶ。もし、なかったとしたら、渥美俊一氏を信奉する日本の流通業がグローバル展開が苦手な理由がわかる。

 また、ユニクロはドラッカーの提唱するように、社員を知識労働者と位置づけている。例えば、ユニクロの各店舗は、地域や客層によって求められているものが少しづつ違う。したがって、本部から渡された接客や品揃えのマニュアルをただ守るだけでは意味がない。どうすればお客様が喜び、ものが売れるかを自分なりに考え工夫しなければならない。全員が知識を活用し自らの頭で考える知識労働者である必要がある。

 ユニクロでは店長こそが一番重要なポストという認識がある。他のチェーンストアだと、店長は出世のスタートラインと考え、まず店長で成果を挙げて、その後に本部のスーパーバイザーやブロックリーダーになり、営業の責任者を経て、最終的に経営者の一員になる、というプロセスを経る。これは渥美俊一氏のチェーンストア理論なのだろうが、ユニクロはそれを学び、ベースとしドラッカーの知識労働者の考えをビルトインして独自なものにしていると思われる。

 知識労働者が増えると、経営のあり方も変わる。経営者が指示を与えて、現場がその方針通りやっていくというスタイルが、現在の日本企業の現状だ。机上で練った企業戦略では、自分たちがこうありたいという意識が中心になってしまう。これではグローバル展開はうまくはいかない。たとえば、日本に進出しているグローバル企業であるマクドナルドなど、本部の企業戦略というより、日本のお客様のニードに合わせたメニューとなっている。

 ユニクロの柳井さんは、ペガサスクラブのメンバーではあるが、それを土台にし、ドラッカーの知識労働者のコンセプトをビルトインすることで、次のフェーズにバージョンアップしているのだ。そしてそれが、ユニクロのグローバル展開を支えているのだろう。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。