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『微生物との共生 パプアニューギニア高地人の適応システム』実に面白い研究だ(マスクドニード)

 パプアニューギニアの高地では、主食の70%以上はサツマイモ、動物性タンパク質としてのブタは婚姻や戦争の終結に使われる交換財としての位置づけになる。しかし、彼らは立派な筋肉を発達させているのだ。その理由を調査するための生態人類学の研究結果が本書になる。

 生態人類学の調査をするときは、調査地の人と同じものを食べることになる。サツマイモを食べると、頻尿となり、便通が止まり、傷が治らなくなった。頻尿は塩なしの食事、便通がなくなったのは腸内細菌の交替、傷の可能はタンパク質不足が原因ではないかとされている。

 サツマイモ畑は同じ土を肥料を使わず連続耕作している。現地の人によると、周辺に植える樹木と畑に生える草が影響しているのだという。しかし、どの木や草にその効果があるのかなどが情報共有されておらず、人それぞれ意見が違うのも面白い。とにかく、サツマイモを持続的に栽培するために樹木と草のコントロールが実践されているのである。

 成人一人あたりのサツマイモ摂取量は一日一キログラム。朝昼夕と食べるものはサツマイモ。ただし、品種は20種以上がある。オーストリア政府の調査によると、パプアニューギニアの高地の住民のタンパク質摂取量は成人一人あたり22.3グラム、そのうち動物性タンパク質は2.1グラムだったという。日本人の食事で比較すると、カツ丼で1杯で30グラム、ご飯一杯で8グラム、卵1個で6グラムのタンパク質が含まれている。

 彼らの糞を採取し分析すると、タンパク質の摂取量が極度に少ないにも関わらず、東京の人と同等のアミノ酸濃度の群があったという。ここからの仮説として、人間が腸管に捨てていた尿素と、本来ならば人間の栄養には寄与しない窒素が、腸内細菌によってアミノ酸に作り替えられる。しかも、大腸で摂取されるアミノ酸以上のアミノ酸が作れれていることから、排便にアミノ酸が含まれているのである。
 共生の概念を他の動植物とするスタンスから、腸内細菌まで視野を広げることによる持続的生存の可能性を拡大できるともいえる。実に面白い研究だ!

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。