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『21世紀の資本』資本を社会共通資本、労働者は無形価値を生み出すが必要、というロジックをまとめた「新21世紀の資本」という本が必要(環境研究)

 トマ・ピケティの「21世紀の資本」は、読んだことも手にとったこともなかったので、読んだつもりになってみようとこの映画を観てみた。

 ピケティ―の資本に対する考え方は、「資本=お金、土地、奴隷」という有形資産の考え方であるということ。つまり、資本に宇沢弘文さんの社会的共通資本(土地、大気、土壌、水、森林、河川、海洋、道路、上下水道、公的な交通機関、電力、通信施設など)が含まれていない。したがって、現在の経営で利益を生み出す厳選である無形資産の価値やESG会計的な考えはない。

 確かに、過去の人類の歴史をピケティ―のいう資産から俯瞰すると、行き過ぎた経済格差を是正する種々の試みの連続だった、とも言える。それに対するピケティ―の解決策は「累進性の強い相続税」を段階的に課すことなのだが、「累進性の高い相続税」を課すことが政治的に受け入れられる前に、社会共通資本としての地球が悲鳴を上げ、すべての人に平等に災いを蔓延させてしまう。
 その災が新型コロナであり、地球温暖化だ。これらのことはありがたいことに、貧富の格差に関係なく、すべての人に平等に降りかかるのだ。

 したがって、ビケティーの「21世紀の資本」が発売されたのは、COVID-19がグローバル展開する前の2014年なので、「累進性の強い相続税」だけでは十分条件を満たすことはできない。やはり、資本を社会共通資本として捉え、そして労働者は無形価値を生み出すことが自分の収入にもつながる、というロジックをまとめた「新21世紀の資本」という本が必要になるだろう。

 余談だが、この映画で面白かったのは、アメリカの自動車産業が日本に追い越されたときのレーガンのキャッチフレーズがトランプと同じ「Make America Great Again(MAGA)」だったことと、カルフォルニア大学のポール・ピフ博士の以下の心理学実験が非常に参考になった。行動心理学を理解することが重要だと改めて認識した。

「参加者たちをペアにしてモノポリーのゲームをしてもらった。ゲームはあらかじめ、参加者の一方が、短時間で対戦相手よりもはるかに裕福になるよう仕組まれている。そして研究チームはマジックミラー越しに、参加者の振る舞いを観察した。その結果、富を増やしていく参加者ほど、次第に意地が悪くなることが判明した。たとえば、より尊大な姿勢や仕草を見せ始め、貧しい対戦相手に見下した態度で話し始める。」

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。