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『トルコとイスラエルの天然ガス』(イスラエル、イスラーム)

 トルコはスンナ派のイスラームの中でも政教分離が原則の世俗国家として有名だが、イスラームは俗と聖を分離しない聖俗不分が大原則なので、建国の見本となったフランス社会のような政教分離は成立しにくいという根本的な矛盾がある。
 しかも、イスラームの3つのタイプのうち、もっとも厳格にスンナ(慣行)を守ろうとするスンナ派なのがトルコだ。

 同じようにハディースという預言者ムハンマドの言行録(言わなかったやしなかったことも含む)があります。これが合理的に解釈されイスラーム法のベースとなり、このイスラーム法に忠実に従うのがスンナ派という訳です。・・・ スンナ派トルコのように思い切りよくイスラーム法を捨て、アラビア語を捨て、世俗国家になるところも出てきましたが、やはりスンナ(慣行)はある程度浸透しているのか、酒類規制法が可決したりしています。

 イスラームのスンナ派で、なおかつ政教分離の世俗主義のトルコでは、建国の際にスーフィー教団(ターリカ)も解散させられた。
 細かい戒律にうるさくなく、土着の風習や信仰と柔軟に混合しやすいスーフィー信徒は今も存在し、彼らは世俗主義を支持している。

 そしてスーフィズムには、他宗教に対して寛容で、細かい戒律にうるさくなく、土着の風習や信仰と柔軟に混合しやすいという特徴があります。そのため、商人のネットワークに乗ってアフリカ、南アジア、中央アジア、中国、さらに偏西風に乗った貿易船で東南アジアなどにイスラームは自然に浸透したのです。

 日本ではあまり知られていないが、イスラエル人のトルコ観光は非常に人気があり、私もロクムをお土産にもらったことがある。
 しかし、ガザ支援船拿捕事件以来、国家間の関係が悪化していた。

 イスラエル軍が2010年5月末、封鎖が続くパレスチナ自治区ガザへ支援物資を届けるために航行していた船舶6隻を拿捕。強行突入の際に、トルコ人の人権活動家ら9人が死亡、数十人が負傷した。船舶にはトルコのほか、欧米やアラブ諸国などの計約700人が分乗していた。 ガザ支援船拿捕事件

 関係修復には時間がかかっていたが、ロシア軍爆撃機撃墜事件以来、トルコとロシアの関係が急速に悪化し、ロシアからトルコ経由でヨーロッパに天然ガスを送るパイプラインの計画の交渉も停止となった。

 もともとオスマン帝国とロシア帝国は隣接するためか12回も戦争(露土戦争)を行っている仲だが、シリアをめぐる対立を含め関係修復の道は険しそうだ。

 そこへ、イスラエルのハイファ沖(地中海)で続々と天然ガス埋蔵層が発見され、トルコはガザ支援船拿捕事件を乗り越え、イスラエルと天然ガスパイプラインの交渉を開始した。

1)タマル天然ガスのヨルダン2企業への輸出を承認(タマル)
2)リバイアサン天然ガス田の独占開発で2社を認可へ(リバイアサン)
3)リバイアサン、タマルに次ぐ規模の天然ガス埋蔵層を発見(ダニエル)

 10年後にはイスラエルは世界第7位の天然ガス産出国に躍り出ると予測されており、この地域は地政学的に大きな構造変化が起きている。

 イスラエルと正式な外交関係を持つのは現在はエジプトとヨルダンだけだが、トルコのエネルギーの一部をイスラエルが供給するとなると、もともと観光地としてイスラエル人に人気のあるトルコとの外交関係がより親密になってもおかしくない。

 さらにディナーの席の雑談で、このリソーススケジューラがサウジアラビアのオイルプラントでも活用されていることを知りました。サウジアラビアはアメリカとの関係もありイスラエルに対しては比較的穏健な外交を行っていますが、やはりイスラム圏なのでお互いは背を向けています(イスラエルと正式な外交関係を持つのは、エジプトとヨルダンの2カ国だけ)。・・・ この契約を通じて、私がイスラエルで学んだことは、イスラム圏とイスラエルは外交的には背を向けていますが、ビジネスとしては利害が一致するならば、第3者を通じビジネスが行われていることでした。また、イスラエルは人件費が高くなったため、工場を死海対岸にあるお隣のヨルダンに移転し、『Made in Jordan』としてイスラム圏への販売を行っている企業もあることも後に知りました。

 エジプト、ヨルダン、トルコはいずれもスンナ派、さらに湾岸諸国(サウジアラビア、UAE、カタール)もスンナ派だ。
 特にこの地域の環境研究(世相の変化予測)は、今後の世界中のイスラームへのマーケティングを考える上で重要なことではないだろうか。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。