『トルコとイスラエルの天然ガス』(イスラエル、イスラーム)
トルコはスンナ派のイスラームの中でも政教分離が原則の世俗国家として有名だが、イスラームは俗と聖を分離しない聖俗不分が大原則なので、建国の見本となったフランス社会のような政教分離は成立しにくいという根本的な矛盾がある。
しかも、イスラームの3つのタイプのうち、もっとも厳格にスンナ(慣行)を守ろうとするスンナ派なのがトルコだ。
イスラームのスンナ派で、なおかつ政教分離の世俗主義のトルコでは、建国の際にスーフィー教団(ターリカ)も解散させられた。
細かい戒律にうるさくなく、土着の風習や信仰と柔軟に混合しやすいスーフィー信徒は今も存在し、彼らは世俗主義を支持している。
日本ではあまり知られていないが、イスラエル人のトルコ観光は非常に人気があり、私もロクムをお土産にもらったことがある。
しかし、ガザ支援船拿捕事件以来、国家間の関係が悪化していた。
関係修復には時間がかかっていたが、ロシア軍爆撃機撃墜事件以来、トルコとロシアの関係が急速に悪化し、ロシアからトルコ経由でヨーロッパに天然ガスを送るパイプラインの計画の交渉も停止となった。
もともとオスマン帝国とロシア帝国は隣接するためか12回も戦争(露土戦争)を行っている仲だが、シリアをめぐる対立を含め関係修復の道は険しそうだ。
そこへ、イスラエルのハイファ沖(地中海)で続々と天然ガス埋蔵層が発見され、トルコはガザ支援船拿捕事件を乗り越え、イスラエルと天然ガスパイプラインの交渉を開始した。
10年後にはイスラエルは世界第7位の天然ガス産出国に躍り出ると予測されており、この地域は地政学的に大きな構造変化が起きている。
イスラエルと正式な外交関係を持つのは現在はエジプトとヨルダンだけだが、トルコのエネルギーの一部をイスラエルが供給するとなると、もともと観光地としてイスラエル人に人気のあるトルコとの外交関係がより親密になってもおかしくない。
エジプト、ヨルダン、トルコはいずれもスンナ派、さらに湾岸諸国(サウジアラビア、UAE、カタール)もスンナ派だ。
特にこの地域の環境研究(世相の変化予測)は、今後の世界中のイスラームへのマーケティングを考える上で重要なことではないだろうか。
Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。