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『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』半導体産業の集積地が内陸部の理由に上海族の影響回避はないのだろうか(環境研究)

 「無謬性の原則」という言葉がある。「ある政策を成功させる責任を負った当事者の組織は、その政策が失敗したときのことを考えたり議論したりしてはいけない」、つまり、「自分たちには誤りがない」という信念だ。これは日本の役人にも感じることだが、本書で解説される中国政府の方針は無謬性を大前提にしている。

 中国製造2025ができたきっかけは、2012年の尖閣国有化問題からの日本製品不買運動からだ。スマホを分解してみると、ほとんどの部品が日本を含めた海外製で、中国は組み立てているだけだということに国民が気がついた。当然、共産党の無謬性を証明するため、スマホの中身の部品の自給率を高めることになる。2025年までに「核心基礎部品と鍵となる基礎材料の70%の自給自足を実現」が目標だ。

 この本によって、半導体産業基地が内陸部にあることを知った。国境を接する北側がロシア、東海岸は日米安保、米韓相互防衛条約のアメリカ、さらに南には台湾がある。そのため毛沢東時代に、「北、東、南」から中国を防衛する政策を進めた戦略から、河北省に半導体産業が集約しているとある。遠藤誉さんは中国の歴史からそのように考えたと思うが、上海などの東海岸は、アメリカ民主党と結びついた上海族との結びつきを習近平が恐れたのではないかという仮説も成り立つ。

 半導体産業と言えども所詮人の為せる技だ。欧米に留学した優秀な人材や、経験のある日本人技術者などを囲い込めば、半導体製造装置も自給自足は可能だろう。しかも、今回のロシアとウクライナの戦争により、BRICSの価値は今まで以上に高まった。BRICSの中に半導体が供給できる国が1国だけあれば、ロシアもイランもアメリカに対抗できることになる。したがって、進展が少し遅れていると言われている中国製造2025は、世界情勢に大きな影響を与える政策であることだけは確かだ。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。