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『風が吹くまま』人生そのものが描き込まれている(環境研究)

 この映画は、Amazon Primeからレコメンドされたイランのアッバス・キアロスタミ監督作品。彼の作品は、『友だちのうちはどこ?』(1987年)、『そして人生はつづく』(1992年)、『オリーブの林をぬけて』(1994年)というジグザグ三部作(コケール・トリロジー)を観て、次に1997年の『桜桃の味』を観てきたが、この1999年の『風が吹くまま』まで、一貫して「人生そのもの」を描いているのだろう。

 この映画のストーリーは単純で、クルド人独特な葬儀を取材するために田舎の小さな村を訪れたTVクルーが、すぐに亡くなるはずのおばあさんがなかなかなく亡くならず、イライラしてその村に駐在しているプロセスを描いたものだ。出演はTVクルーのリーダーらしき人と村の子供ひとりで、後は声だけとか、たまに近所の人と会話する程度。

 素人だと思われるが、クルドの子供の純真さが演技に出ていて、心が清々しくなる。例えば、テスト問題で、世界が終わる日、善人と悪人はどうなるか、という問題の答えが分からないと悩む姿も子供らしい。このクルドの村がヤズィード教なのか、ゾロアスター教なのか、はたまたスンナ派か、シーア派かは分からないが、TVクルーの答えた回答が、悪人は天国で善人が地獄へ行くと間違え、しばらくして、逆だと言い直すのもイランのイスラームの宗教観が現れていて面白かった。

 途中、もう電話かけてこないでくれよ、と思うのだが、それもエンディングにつながる重要な伏線となる。イランの美しい麦畑、自然の鳥のさえずり、村の犬やニワトリの鳴き声はこの映画の重要や脇役だ。アッバス・キアロスタミ監督は小津安二郎の影響を受けたと言っているが、素人役者を起用して人間の心を描き出す独自の作風は癖になるものがある。

Creative Organized Technology をグローバルなものに育てていきたいと思っています。