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爪きり

右手を負傷した
しばらくは左手の生活
わたしの左手、なかなかやる。

歯磨きも
化粧水のふたも。

洗剤ボトルをあけ洗濯機をまわす
洗濯物を干すことだって
工夫すればできる
不便をこなすのがそんなに嫌いじゃない自分がいた。

やかんに水を入れて湯を沸かす
コンロでパンを焼き
バターをのせる
不恰好なかたちのバター。

お米を炊飯器に入れてご飯を炊く
おにぎりを作りたいけど
ラップが切れない。


よく働く左手の爪が伸びてきた
娘は、
「これで伸びてるの?まだ平気じゃない」
と言う
そうかなあ〜と
そのお言葉に従ってみる
でもやっぱり爪の角がひっかかり
今度は夫に爪をきってよ、と頼んでみる

夫は二つ返事で、いいよ、と言った
えっ、いいの?・・・とっても意外。

決して器用とは言えない夫に
わたしの左手を恐る恐る差し出す
頼んだくせに微妙な抵抗
「肉切らないでよ!」
「わかってるよ」
「わたしがいいって言ってからきってよ」
「大丈夫だよ、何年爪きってると思ってんだ」
小指から一本づつ出していく
夫に連れ去られる指
ゾワゾワする
「犬や猫の気持ちがわかるわ〜」

娘の言う通り、すこし深爪になった左手の
親指を除く4本の爪が気持ち右下がりにカットされた
(左の角っちょをもう少し、)
口に出して頼むのをやめた

それでも
指は無事だったし、
さっぱりした

つぎの爪きりまで
わたしの右手
ゆっくりとおやすみなさい






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