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2020宇宙の旅

21日の夕方、私は空を見上げていた。宇宙ステーションが日本の上空を通過するのを見ることができると聞いたからだ。
実は20日の夕方も私は空を見上げていた。18時37分ごろ、ベランダに出てスマホのコンパスで方角を確認しながら宇宙ステーションが空を流れていくのを今か今かと待つ。しかし上空を飛び交う飛行機の光に、あれじゃないこれじゃないと言っているうちに1分2分と時間は過ぎ、結局見つけられないまま10分が過ぎたのだった。
21日、今度は絶対に見逃さないように広い視野でもって空を見上げていた。すると、私が見つめていた方角とは少しずれたところから、飛行機でも星でもない光の粒がスーッと現れたのだ。
天体ショーというにはささやかだが、それでも私の胸は高鳴った。
子供達を呼んで、ずっとずっと遠くを進んでいく宇宙ステーションにおーいおーいと手を振る。
「願い事する?」と長男が言った。

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実はその前日とても悲しいことがあって私はひどく落ち込んでいたのだ。
命は燃え尽きると星になるというが、目の前に広がる無数の星の瞬き一つ一つが温もりを持ってこちらを見ている気がした。
おーい、おーい。また帰ってくるのを待ってるよ。
冷たいベランダで、私たちは一生懸命手を振った。

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