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妄想キャッチボール

どうも、フリー作家の井野ウエです。

先日、公園を散歩していると、
70代くらいのおじいさんと40代くらいのお兄さんがキャッチボールをしていたんです。
おそらく親子です。

その光景はなんだか微笑ましく20分くらい眺めていました。

距離はちょうど会話が聞こえないくらいだったので、
以下妄想です。

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「父さん肩弱くなってるな~」

「うるさいな笑 もう七〇肩だぞ」

「あんまそんな言い方しないから笑 でも懐かしいや。
昔もこうしてキャッチボールして、よくおれがスっぽ抜けちゃって
父さんに取らせにいかせてたなぁ」

「そうだな。あの頃は可愛かった」

「なんだその言い方は」

「今は立派な中肉中背だ」

「それは言うな笑 よし、とっておきの変化球を見せてやる。
フォーク!」

ギュィィィン。
ポロッ。

「おおすごいじゃないか。こんなに曲がったら取れやせん」

スタスタスタ(謎の男が近づいてくる)

「あのーすみません」

「はい。誰ですか」

「わたくし、こういう者です」

スッ(名刺を渡す音)

「きょ、巨人軍のスカウト!?」

「はい、実は、公園でキャッチボールをしている人にも
磨けば光る原石がいるのではないかと視察していたのです」

「はぁ」

「あなたのフォークは紛れもなく一級品だ。年齢は?」

「四二ですけど……」

「最近は選手の寿命も伸びている。まだいけます。
育成契約からにはなりますが、巨人軍にきていただけませんか?」

「でも、仕事もしてますし……」

「何言ってるんだ」

「父さん」

「お前、小さい時いつも言ってたことがあるな。
『僕、大きくなったらプロ野球選手になる』って」

「……」

「心の片隅に今でもあるんだろ? その気持ち。
自分に正直になれ。人生一度きり。後悔だけはするな」

「父さん、おれ、プロ野球選手になるよ」

「よく言った! 胸張ってやってこい!」

三年後、史上最年長で最多勝を獲得した息子を見届けた後、
父は静かに目を閉じた。

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そんなこんなで今日も生きています。


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