商人のDQ3【84】おばば、別れの予感
「マリカよ。楽しい旅じゃったが、どうやら別れのときが近いようじゃ」
「おばば!? 急にどうしたの」
シャルロッテが、ジパング大公ヒデヨシとの商談をまとめた翌日の夜に。アミダおばばは夢渡りで、サマンオサ入りを目指すマリカとアッシュのもとを訪れました。
ふたりの旅路も大きく進み、いまはウユニ塩湖のど真ん中でキャンプ中。
天地が合わせ鏡となった一見して幻想的な光景ですが、現実の世界では…
観光客による環境汚染が深刻な問題となっていました。お金に厳しいお話ですが、観光客が来なくなったら地元経済が成り立ちません。大切なのは、観光客がマナーを守り、環境保全のスポンサーとなることですね。
マリカとアッシュのいるウユニ塩湖は、そもそも観光業自体が成り立ってないのでさほど汚くなってません。それでも、四国の面積より広い白い砂漠であり、相応に危険を伴うルートです。
だからこそ、ピサロの手下に気付かれず隠密行動で本拠地を目指せます。そのせいで麻薬の取引場所に使われたりもしますけど。法の及ばない荒野ですからね。
余談ですが、私の好きな「リビルドワールド」でも無法地帯の描写が群を抜いて素晴らしいです。圧倒的マッドマックス感かつ、お金に厳しい世界。いくら稼げるかが、ドラゴンボールでの戦闘力の代わりだったりします。
お金に厳しいDQ3も、かなりリビルドワールドの影響を受けてると思ってください。古代アリアハンの遺産とか。
本題に戻りましょう。星空の下アミダおばばが静かに、マリカとアッシュのふたりに語りかけています。
「おばばたちはこれから、ヨモツヒラサカを下ってヒミコを追う。その途中に、パープルオーブを核とし復活したヒミコの妹イヨも待ち受けていよう」
以前より、おばばはヒミコを復活させてしまったことを悔いる発言をしていました。それがたとえ、魔王軍への貢献によって同族の立場を守るためだったとしても。
「生と死の境界を乱し、ヒミコの跳梁を許してしまった報いを。わしは受けねばならぬ」
自責の念が強いおばばに、アッシュとマリカはそれぞれ優しい言葉をかけます。
「大公ヒデヨシを説得した話、シャルロッテさんから聞いてますよ。ヒミコも一応、ジパング統一に貢献したって言うじゃないですか」
「そうよ。おばばはもう十分、罪を償った。幸せに生きていいはずよ」
おばばの働きぶりは、あたしたちが一番見てると。マリカは太鼓判を押すように言いました。
「…おぬしらの結婚式を見れぬことだけが、心残りじゃが」
まるで、今日明日にでも死んでしまうかのような物言いに。マリカは少し怒ったような顔をして断言します。
「おばば。そんなこと言うならさ、今すぐ結婚式あげちゃうわよ」
「いいですね、思い立ったら即実行。マリカさんらしいです」
ちょっ、アッシュくんそれでいいの? マリカの隣でニコニコ微笑んで、もうすっかり若夫婦の貫禄ですね。
「こりゃ、一本取られたの」
おばばも思わず、吹き出します。
「夢渡りで参列者を集めればいいし。グランマは呪いで眠れないから…」
「会場は、マリスさんのダッチマン号ですね。甲板の上で」
アッシュの両親、オルテガとアッシュの母。マリカの両親、ラティナとマリカの父も夢召喚で呼んで。ソルフィンとグズリーズ夫妻や、アントニオじいさんにも来てもらう。トントン拍子に話が進みます。
「神父役は、アウロラ神官のシャルロッテじゃな!」
おばばも案を出して、3人には思いがけなく楽しげな空気が流れました。
「それと、攻略の順番ですが…まずデチュ・マチュ遺跡でラーの鏡を探し。ピサロを打倒してから、オロチとヒミコ討伐に動くのが良さそうです」
「ピサロがね、呪いの黄金をデチュ・マチュ遺跡にも配置してるの」
アッシュとマリカが、夢渡りで目的地を先行偵察した結果から。今後の作戦について提案します。
「それはまた厄介な…打つ手はあるかの?」
イエローオーブの沈む悪徳の都ポートロイヤルに入れないのは、ピサロが奴隷の命を犠牲にして採掘した金銀の一大集積地だったせい。集まった呪いのパワーも膨大です。
「まだ、量がそれほどではないから。付け入る隙はあるはずよ」
ピサロの呪いのチカラは、ヒミコのネクロマンシーに補助されています。そして先日、ジパング本土で黄泉比良坂の場所を調べてくれていたエルルとヤスケによれば、ヒミコは死者の女王のチカラを得るのに相当苦労している模様。これはチャンスです。
「地獄の騎士サイモンさんの予想が現実となるのは、もう少し先ですね」
いま、ネクロマンシーによるサイモンへの支配が弱まっているなら。ピサロへのサポートも弱体化してるだろうと、アッシュは論理的に看破します。
「以前に考えておった、夢見の技で死者をネクロマンシーより解放する技。デチュ・マチュ遺跡で試してみようかの?」
もちろんマリカもじゃぞ? と念を押すおばば。やはり、自分が去った後のことを考えているようでした。
もしかして…死期を悟っているのでしょうか?
アーティストデートの足しにさせて頂きます。あなたのサポートに感謝。