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聖剣伝説3×ループもので続編の可能性を妄想してみる

この記事は、原作かリメイク版でエンディングを見た方向けです。

「聖剣伝説3 Trials of Mana」あなたは何周しましたか?

私はこれを書いてる時点で、まだ2周目の神獣討伐の最中です。すでにリメイク版のレビュー記事も読みました。おおむね好評ですね。

ビジュアルもバトル関係のシステムも格段に進歩して見違えましたが、25年前のゲームをシナリオほぼそのままで出してきただけにスーパーファミコン版を知るファンとして物足りない思いもあります。

追加要素もクラス4になった後、新たな冒険の場が限られていて質的な不足を感じます。終盤は、開幕で必殺技ぶっぱなしが全てになってしまいます。ドラクエ11みたいな公式しばりプレイがあっても良かったかも。

個人的にはペルソナシリーズのように、本編のしばらく後に追加要素を満載した完全版の登場を期待したいところです。そこで、こんなお話を考えてみました。

ループものと相性がいい聖剣伝説3

このRPGにはラスボスになりうる悪の勢力が3つあり、少なくとも主人公を変えて3周しなければ世界全てを回ることができません。全てのシナリオを把握したいなら6周、さすがにつらいです。回想モード欲しくなります。

現代のゲームなら、2周目以降限定の展開があると良さそうです。それは、自分たちが「真の黒幕」の思惑通りに動かされ利用されていたことに気付き、終わらないループから抜け出すために違う行動を取る。これでしょう。強くてニューゲームはループの世界だったのです。

以下、私の書いている小説「偽王女の8時間戦記」の設定も絡めて独自に、25年のループに決着を付けてみました。

宇宙樹の「根っこワーク」

マナの樹の元ネタを調べると、こんな解説が出てきます。宇宙樹または世界樹とも呼ばれる、世界を支える伝説の大樹です。

https://kotobank.jp/word/%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%A8%B9-170965

「聖剣伝説2」では、草薙やエクスカリバーなど様々な名で呼ばれる伝説上の剣はすべて同一の「マナの剣」だったとする設定が出てきます。これは、マナの樹についても同じことが言えそうです。

中国や日本に伝わる扶桑樹や、北欧神話のユグドラシル。それらもまたマナの樹の同類だった。ユグドラシルは9つの世界を支えるといいますから聖剣伝説シリーズの各世界にあるマナの樹もまた、根っこの部分でつながりを持っていた。ネットワークならぬ「根っこワーク」です。

世界樹はその名の通り、世界の数だけ無数に存在します。これまでの聖剣伝説シリーズのお話は、全てパラレルワールドの話として解釈が可能です。

聖剣伝説シリーズにもそろそろ、∀ガンダムみたいに「全てを肯定する」心意気が必要でしょう。作り手にもファンの側にも。

新米女神の後悔

心に希望という名の「マナの剣」を持った聖剣の勇者たちがラスボスを倒した後、旅の発端となったフェアリーは勇者たちとの絆が生んだ奇跡により、新たなマナの女神へと転生。聖域でマナの樹を再生させるための長い眠りにつきます。

ところが、夢の中で彼女を呼ぶ声がします。

新米女神となったフェアリーを呼んだ声の主は、コノハナサクヤビメ。日本神話に伝わる、天皇家の祖先とされる女神です。彼女は扶桑樹のマナの女神でした。フェアリーにとっては先輩の女神様。

フェアリーは新たなマナの女神に生まれ変わったとき、各世界の宇宙樹をつなぐ「根っこワーク」に接続されたのでした。これまでの旅の記憶も、全て即座に情報共有されます。

そのとき、新米女神に衝撃が走りました。自分たちが良かれと思ってしたことは、先輩の語る「真の黒幕」の思惑に乗せられて利用されていたのだと。争いを煽って、憎しみや絶望を搾取し力とする者がいたのです。途中で脱落したヴィランたちも哀れな犠牲者でした。

スターウォーズと聖剣伝説

聖剣伝説3の物語には、若者を導く良き大人の存在が少ないです。関わったとしても、ごく短い期間だけ。

FF外伝だった頃の聖剣伝説や、2には「ジェマの騎士」がいたり。3でも、ダースベーダーそのまんまな黒曜の騎士など、スターウォーズからの影響が見受けられます。でも3では、ルークを導くヨーダはいません。若者が勢いだけで突っ走ったら、ラスボスの思惑に乗せられてああなってしまうのも仕方ないでしょう。フェアリーも秘境育ちで世間知らずだった。

6人の少年少女は旅立ちのエピソードでそれぞれつらい経験をしていますから、力を持ったとしてもそれを私利私欲に使うことは考えにくいでしょう。特に弱者には優しく接したはず。けれどもそれだけでは、ずるい大人に対抗できません。そこは英雄王がもっと踏み込んで、良き父親の役割を果たすべきだったのかも。娘がいたと分かっても、父だと名乗り出ることもしてませんでしたし。

聖剣伝説3は就職氷河期の話?

聖剣伝説3は1995年、就職氷河期のまっただ中にリリースされただけあって激烈な競争社会が描かれています。3つある悪の勢力のうち2つは、中盤で争いに敗れて舞台から退場します。

6人の少年少女のうち、主人公と仲間に選ばれなかった残りの3人の扱いは、まるで正社員になれなかった負け組を見るかのよう。ここはリメイクに際してどうにかならなかったでしょうか。私も負け組のひとりなので余計にそう感じます。

シナリオにほとんど手を加えなかったことを評価する意見も聞いています。前回、聖剣伝説2のリメイクが散々な評価でしたから慎重になるのも理解はできます。けれど次からは、原作そのままでは済まなくなるでしょう。

ものごとには「守・破・離」のステップがあります

聖剣伝説コレクションが先人の教えを守る「守」なら、今回の聖剣伝説3ToMは伝統を踏まえた上で独自に工夫してみる「破」の段階。その試みは、おおむね成功したと思います。次があるとしたら、師の教えから離れて自分のオリジナルを確立させる「離」の段階でしょう。私はそう思います。

あの男が真の黒幕のスパイ?

そういえば、実は聖剣3のヴィランたちの中で唯一どのルートでも生存した謎の人物がいます。死を喰らう男。脱落ルートでもその後は不明ですから、きっと上手く逃げ延びたのでしょう。実は一番の勝ち組なのかも。

こういう道化キャラ、他にもいませんか?死んだと見せかけて実は生きてて影から巧妙にはかりごとを巡らす。純粋無垢な少年少女なら騙されて当然。彼には「ダイの大冒険」のキルバーンみたいな立ち回りに期待ですね。

失われた時を求めてもいいじゃない

ドラクエ11に関して、こんな記事がありました。実に興味深いです。

SF史に残る(べき)ゲームたち:第23回『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』――「歴史修正」の善悪と功罪
https://jp.ign.com/sf-game-history/34827/opinion/sf23xi

言われてみると、ドラクエ11はまさに「現代基準」のシナリオを持つRPGだと思います。それと、サブタイトルに元ネタあったんですね。

聖剣3のヴィランには、悲劇的な過去を持つ者たちがいます。

・魔法を使えずのけ者にされ、闇の力の誘惑に屈した紅蓮の魔導師

・人助けのために禁呪研究をしていて、聖都を追われた仮面の道士

・光の城の王子だったのに、予言を理由に迫害され闇堕ちした黒の貴公子

・黒の貴公子に忠義を尽くし、愛していたのに報われなかった美獣

また聖剣3のテーマになっている環境問題や資源争奪戦争、人種差別に格差問題はみんな現代の重要課題SDGs(持続可能な開発目標)と関わりがありますね。駆け足での開発となったために、おそらく半端な扱いになってしまったのでしょうけど。

『聖剣伝説3』石井浩一氏&田中弘道氏インタビュー。オリジナル版開発者が語る、トライアングルストーリー誕生の経緯やキャラクター制作秘話
https://www.famitsu.com/news/202005/02197804.html

「戦闘力至上主義」への反省から、全てのキャラに見せ場を作る努力が光る「ドラゴンボール超」はリブートのお手本だと思います。聖剣3後半の脳筋展開を改めるヒントになるかもしれません。

神獣の正体は、自然の力を司る上位精霊のようなもので、真の黒幕によって暴走させられてたとか。シシ神に首をお返しする、もののけ姫です。1周目は倒してしまうけど、ループを抜け出すには鎮める必要があるとか。詳しくは知りませんが、聖剣3の前日談である「HEROES of MANA」では神獣を使役する手段があるそうなので。

過去に時間移動して悲劇を阻止し、アルテナやナバール、ビーストキングダムが他国に侵攻する理由を弱める。マナの減少という異変には、自分たちさえ良ければいいという一国主義を戒め、国際協調を呼びかける。その上で、獣人たちや魔界の住人との共存を考えていく。争いを煽る真の黒幕には、全ての国が協力して立ち向かう。主人公たちも6人そろって。

そんな優しい物語があったらいいなと、思いませんか?

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