商人のDQ3【80】ダーマのスパイ
「誰だお前は!」
「地獄から来た乙女、ダーマスパイッ!」
場所は、ダーマの山奥。神殿に迫るジパング兵たちの前に、さっそうと立ちはだかる謎の素敵なおねえさん。
顔の上半分だけをおおう、ベネチアンマスクで素顔は見えませんが。流れる銀髪ポニーテールはかなり人目を引いてます。
弓も鉄砲も当たらない、まるでニンジャのような身のこなし。おそらく、ジパング大公ヒデヨシのダーマ神殿侵攻に抵抗する者なのでしょう。現実の歴史では、豊臣秀吉の朝鮮出兵にあたる出来事です。
以前マリカが賢者の修行で、アガルナの塔を訪れたとき聞いた、ジパング軍がダーマ神殿を攻めるというウワサ。ついにその時が来ました。
「大公ヒデヨシ、ジパング全土を手中に収めてこれ以上何を望むッ!」
正義のヒーローらしいセリフ回しで、ダーマスパイと名乗ったおねえさんがジパングの将に侵攻の目的を問いかけます。
「ふん。貴様ら南蛮人にジパングの威光を示し、祖国を守るためよ!」
これは、正義と悪の戦いじゃない。正義と、対立する別の正義…!
ダーマスパイは、瞬時に相手の意図を察します。
「ダーマ神殿を制圧し、冒険者どもを転職できなくすれば弱体化できる」
「あとは南下してウォンロン、バハラタに攻め入り、交易の利権も手にしてくれよう」
これでは完全に、欧米列強の植民地主義と変わりません。しかも彼らは、魔王軍のヒミコと同盟関係にもあります。
ダーマ神殿をおさえて転職を封じようとした魔王の手先って、たしか他のドラクエ世界にもいましたね。
「魔王軍の脅威がある中、そのような乱暴狼藉許せん!」
「小娘を捕らえよ! ヒデヨシ様もお喜びになるぞ」
ジパングの足軽たちが、ダーマスパイを取り囲もうとしますが。
「グワーッ!」
「何だこれは! 地面が凍っただと!?」
この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『エンドブレイカー!』用のイラストとして、
イーノが作成を依頼したものです。イラストの使用権はイーノに、著作権は水瀬るるうに、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
ジパング忍術もびっくりな、どこでもフィギュアスケート。どうやら靴底からヒャド系の魔法力を放出してブレードを形成、さらに地面をも凍らせて巧みに滑走しているようです。
「うかつに走るな!」
「うわっ、いててて転んだ!」
まるで予想外な術を使われ、混乱に陥るジパング軍。そのスキを突いて、ダーマスパイは包囲を破って脱出しました。ですが、ダーマ神殿の方角には戻りません。敵を案内するわけにもいきませんし…別の理由もありました。
※ ※ ※
バハラタとジパングの中継地点にあたる、港町ウォンロン。別名、九つの竜の城と呼ばれる大都市に、シャルロッテ一行は船を停泊させていました。ここはエジンベアの植民地でもあります。
シャルロッテ一行はすでに有名人となっており、大きな街に滞在すれば、たちまちウワサが流れます。そのせいで、隠密行動に支障も出ていました。
「冒険商人シャルロッテさんのお泊まりになってる宿は、こちらですか?」
「あいにくですが、現在メイドの募集はしておりません」
この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『エンドブレイカー!』用のイラストとして、
イーノが作成を依頼したものです。イラストの使用権はイーノに、著作権はYUZに、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
メイド服姿で訪ねてきた銀髪の娘に、シャルロッテ専属メイドのおキクさんが事務的に対応していると。騒ぎを聞きつけてシャルロッテとクワンダがやってきました。
「どうしたんでちか、おキクしゃん?」
「クワンダおじさま!」
クワンダの姿を見るなり、銀髪娘がそちらへ駆け寄りました。
「クワンダ様、この方は…?」
「俺の姪っ子のミキだ。こんなとこまで、何しに来た」
メイド姿の銀髪娘ミキは、一同に手を合わせると。さわやかな図々しさで助けを求めてきました。
「どうか、ダーマ神殿の窮地を救って頂けませんか! わたし大公ヒデヨシの妾にされそうになったんです!!」
「あ〜、めんどいでちね」
シャルロッテが、バスコダの兵に捕まって愛人にされたときのことを思い出します。ジパング潜入前から、前途多難の予感がします…!
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