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料理上手な人 〜デザインの秘伝02〜

いつもそうなんです。
うまくいったためしがないんです。

レシピ通りに作っても。

大さじ一杯、小さじ一杯、計量スプーンを使って、すり切れ真っ平らな表面を確認しながら、寸分違わずに計っているのに。なぜでしょう。

うまくないのです。

作る前に想像した味が、現実を味を超えてしまったのでしょうか?
それとも僕には、この料理を味わう味覚が欠落しているのでしょうか?
もしくは、レシピをつくった人の味覚が… いや、これは良くない。

でも、実はわかっているんです。
レシピに忠実にしたがっても、うまくいかないことぐらい。

にんじん一本とってみても、含まれる水分量とか、糖分とかが、きっと違うんでしょうね。

うちは、IHクッキングヒーターを使っているので、ガスとは火の通り方が全然違うでしょう。

包丁の切れ味というのは、よく切れることではなく、切り方一つで味が変わってしまうので、使う側のテクニックを引き立たせるように仕上がっていることだと聞いたことがあります。

そもそも僕には、そんな腕すら備わっていません。

レシピというのは、その調理法を示すもので、味をどのように引き出すかは、別の問題である、ということなんです。
その場にある素材や環境を活かして、味をコントロールできる人が、料理上手な人なのでしょう。

技術があっても、使う人の技能がなければ、技術を使いこなすことはできないということです。

デザインの仕事をしていても同じような場面があります。

「次は、最近話題のあの技術を使ってみよう。」とか、チャレンジと期待感が先行してしまうことがあります。

多くのケースは、技術やそれに含まれる概念に従い、実行するだけになってしまいます。

また、最悪なケースでは、結局は技術を使いこなすことができず「うちには合わなかった」と、技術のせいにしてしまったりなど、勿体ない結果になること少なくありません。

デザインシステムなどは、まさにその最たるもので、何処かでうまく行った方法が、別な場所でもうまくとは限りません。

技術は問題を解決するツールではありますが、解決するのはあくまでも人です。

ただ技術を取り入れるのではなく、既存の概念と調和させたり、永続的に使っていくためにはどうするべきか。など、現場に合わせたアレンジことが大切です。

そんな料理上手が、プロフェッショナルの定義の一つと言えるでしょう。

※この文章は社内用に書かれたものの転載です


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