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魔改造トースターで食パンの飛距離を競う!『魔改造の夜』がすごかった

6月19日(金)にBSプレミアムで放送された『魔改造の夜』、見ました?

むちゃくちゃでしたよ!

魔改造とは……
オモチャや家電のリミッターを外し、えげつないモンスターに改造する行為(番組より)

エンジニアたちが与えられたお題の「魔改造」に挑み、その成果を競うという内容。舞台はどこかの怪しげな廃倉庫である。暗い。いけないことをしている感じがある。集まったのはこの3チーム。

日本の超エリート大学・T大工学部チーム
東京下町工場・H野製作所チーム
国内屈指の自動車メーカー・T社のエンジニアチーム

伏せる意味あるのか、というかT社チームのブルゾンには胸に「TOYOTA」のロゴが入ってるけどいいのか、と思いつつ、初回のテーマは「トースター高飛び」であった。

用意されたのは普通のポップアップトースター。パンを入れてレバーを引くと、焼き上がりと同時にパンが飛び出すあれ。このトースターを魔改造して、食パンをできるだけ高く飛ばしたチームの勝ちである。

ただし、トースターなので食パンはおいしく焼くこと。焦がしたりバラバラになったりしたら失格。食べものは大事にしないといけない(飛ばすけど)

実況はNHKの矢野武アナ、解説は長藤圭介(東京大学工学部准教授)、名誉顧問としてスプツニ子!&伊藤沙莉という布陣。そして魔改造されるトースターのメーカー担当者も同席。各チームの魔改造を見守る。

食パンを飛ばすのに邪魔だから「真っ二つ」にする

各チームは1ヶ月半前にお題をもらい、通常の学業や業務のかたわら、魔改造に精を出す。バネの力で飛ばしたんじゃ物足りない。ぶっ飛ばしてやるんだから。

T大工学部チームが考えたのは、焼けた食パンを振り回して飛ばす、ハンマー投げスタイル。しかし、食パンを振り回すにはトースター本体が邪魔。そこでトースターを真っ二つにして、焼けたと同時に本体から分離できるようにした。食パンさえおいしく焼けすれば、本体は用なしなのだ。解説席にいるメーカー担当者の悲しそうな顔……!

町工場チームと自動車メーカーチームは、偶然にも同じ発想の魔改造にたどり着く。トースターから飛んだ食パンを高速回転するローラーで挟んでさらに飛ばすのだ。町工場チームはベテランの技術力でステンレス製の巨大ローラーを製造。車のバッテリーをつないで回転数を上げ、まるで墓標のような巨大マシンを作りあげる。

一方自動車メーカーチームは、モーターが組み込まれたコンパクトなローラーを用意。もともとロボット開発を手がけるチームだけに、仕上がりはスマート。同じ発想ながら町工場との対比が生まれる。まるで下町ロケット。しかしそのロケットで飛ぶのは、食パンだ。

バカバカしさで包み込まれる「日本のものづくり」

NHKで「エンジニア同士の対決」と言えば、過去に千原ジュニアがMCを務めていた『超絶 凄ワザ!』がある。与えられたテーマに沿ってエンジニア達がモノを作り、対決させる構図まで同じだ。

ただ『超絶 凄ワザ!』で競われていたのは「長距離を飛ぶ紙飛行機」だったり「強度の高い紙箱」だったり「ゆっくり走っても倒れない自転車」だったりといった、高スペックな既製品を作るもの。「日本のものづくり」のレベルの高さを、身近な題材で表現する番組だった。

『魔改造の夜』も、エンジニアの発想力や、それを形にする力を垣間見ることができる。製作風景にも密着して、ハンマー投げからまっすぐ上に投げるのに苦労する学生たちや、ローラーがうまく回らなくて専務に相談する若手社員の姿などが描かれる。

ただ、それを包み込むのは壮大な「バカバカしさ」だ。夜の廃倉庫で繰り広げられる怪しげな宴、機械でブンブン振り回されたり、ローラーに挟み込まれたりする食パン、それらを丁寧に実況する矢野アナ、天高く打ち上げられた食パンとそれを見上げるエンジニアたち―――。

「魔改造」で競われる「日本のものづくり」。真面目と不真面目が溶け合った最高の宴だった。

『魔改造の夜』は、後編が26日22時にBSプレミアムで放送予定。次のテーマは、歩くワンチャンの人形を魔改造してトップタイムを競う「ワンチャン25M走」です。

前編はNHKオンデマンドで見れます。再放送はNHK総合で6月24日(水)25:40から。

Photo by Graphy Co on Unsplash

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