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戸田山和久『論理学をつくる』感想

急に読書欲に目覚めたので、大学図書館で借りてきて読んだ。

哲学書コーナーでパラパラめくって、記号論理学についていい感じに嚙み砕かれてそうだから借りたが、読んでみると大学講義に使うのを想定した教科書だった。学部キャンパスの図書館で、他学問の教科書に巡り合えたのは幸運だった。

内容については、第一印象通り、初学者向けにかなり噛み砕いて解説されている。「そもそも論理学とはなんぞや」というところからスタートし、道中で武器が必要になるたび、その武器の必要性を説きながら揃えていくので、置いてけぼりになりにくい。練習問題も豊富に用意されており、武器の意義や使い方をその都度確認できる(俺はめんどくさくてほとんど解いてないけど)。加えて、誤解しやすい事項については再三注意を繰り返してくれるのもありがたい。

全体としては、第Ⅰ部で命題論理、第Ⅱ部で述語論理、第Ⅲ部で演繹を扱い、ここまでで古典論理学の入門を一通りさらうことができる。その後、第Ⅳ部で非古典論理学の入口や古典論理学のその先をチラ見していくという構成で、次の学びにもつなぎやすい

(知らない人向けに説明すると、論理学の中には機能限定版である「古典論理学」とその拡張版である「非古典論理学」があり、古典論理学の中にも機能限定版である「命題論理」とその拡張版である「述語論理」がある。機能が限られている代わりに体系が単純な命題論理から始めて、徐々に複雑な概念を扱えるようになる、という構成だ。)

初学者の悩みである「何から始めたらいいのかわからない」「何を知りたいのかわからない」にしっかりと寄り添った良書だと思う。実際、「記号論理学という言葉は聞いたことがあるが、実際何を目的にどういうことをしてるのかは知らない」という俺でもちゃんと読めた。

序盤は精読寄りの読み方をしていたが、俺が論理学のどこに関心があってどこに関心がないのか、どの程度なら読み飛ばしても問題にならないかが段々と分かってきて、後半はかなり粗く読んだ。具体的には、シンタクス/構文論にはあまり興味がなくて、セマンティクス/意味論の方に関心があるらしい。そのため、構文論を中心に扱った第Ⅲ部についてはほとんど読んでいない。読んでいないが、第Ⅲ部の最後で「構文論と意味論で扱う概念は一致する」という完全性定理を示してくれていたので、まぁええかwと思っている(良いのか?)。

「文系でも読めるように」と謳っているものの、扱う数学は正直かなり高度だった。構文論への興味関心がそがれた理由もここにある。式の意味に依拠せず文字と記号の操作に終始する無機質さは、高校数学をそれなりの水準で修めたつもりの俺でもキツかった。ただ、他学問の議論の妥当性を検討する学問であるため、抽象度と厳密性が高くなるのは性質上しょうがないなのだろう。

とはいえ、雑に読むことになったのは「週末で消化したいという都合で、B5判440ページというそこそこデカい教科書を2日で走り切ったから」という理由も大きい。じっくりと時間をかけて読めば耐えてるのかもしれない。

第Ⅳ部で示されたロードマップの中では様相論理学に興味を惹かれたので、次はこの辺を読みたいと思う。古典論理学の基礎を復習したくなったときは、また本書に帰ってくることにする。

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