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ナウシカを読む その1-物語という鏡-

一昨日、漫画版『風の谷のナウシカ』を取り上げた読書会に参加してきた。

いろんなことにびっくりした。
いろんな当たり前のことにびっくりした。
たとえば、「人間って、こんなにものの見方が違うのか」とか、
「漫画版のナウシカを読んだことない日本人が存在しているのか」とか。
そして、いろんな恐れが自分の中にぽこぽこと湧きおこった。
「この人たちの輪の中に、自分が入っちゃって大丈夫だろうか?」とか、
「それは違うんじゃないかって言いたい。でも、言っちゃっていいんだろうか?」とか、そういう、ちらっとした不安。
私は、この2年間、定職に就かず、思い付きで旅をして、(ほぼ)やりたいことだけをやり、好きなだけ寝る生活をしてきたけれど、
「それでもまだ、こんな恐れは出てくるんだな」
と思った。

でも、大事なのはそこじゃない。
諸々の恐れを感じながらも、そんな小さな枷はものともせずに溢れ出てきちゃうディープでマニアックなナウシカ愛だ。
ナウシカについてなら、5時間でも10時間でも余裕で話せてしまう。
そして、参加者のうち、何人かから、同じような気配を感じる。
(自分ばっかりが話さないように気をつけないと……)
場が始まった瞬間に、そう思った。
人の時間を奪ってしまうことは本位じゃない。
でも、どうしても溢れ出てきちゃう分だけは許してもらおう。
そんな気持ちで発言した結果、やっぱり結構な時間をいただいてしまった気がする。
ご参加の皆さま、ごめんなさい。あれでも1%くらいなんです(笑)
そんなわけで、一昨日いただいた視点も含めて、言い足りなかったことを10%くらい、ここに載せてみようと思う。
ここまで書いていて早くも、「1回じゃ言い足りない!!!!!」と暴れる感情を自分の中に発見して愕然……連載にするか。

本日のネタはまず総論。漫画版『風の谷のナウシカ』が持っている「全体性」について。

次回のネタは、「ナウシカというキャラクター~人間性と非人間性、雌雄同体性ヒロイン~」としておこうかなと思う。

風の谷のナウシカは「全体性」を持った物語である

これは一昨日の読書会で初めてわかった、私にとっては新しい発見だった。
「全体性」という言葉を使い慣れていないので、正しく伝わるか、ちょっと不安だけど。

私にとって『風の谷のナウシカ』は、長年、命の教科書というか、命の辞書のようなものだった。
キリスト教徒にとっての聖書、仏教徒にとっては……般若心経とか?
自分の生命に関する課題や悩みに出くわした時、ナウシカのページを開く。
別にそこに私の悩みへの答えが直接書いてあるわけじゃない。
でも、あの漫画の中に描いてある命の気配が、私の飢えを何かしら癒す。
そんな感じのものだった。

一昨日参加した人たちは、ナウシカとの接点や距離が様々だった。
私と同じ、小学生の頃から度々読んでいる方もいれば、未読だったり、読んでないけど家に大切に置いてあったり、先月初めて読んだという人もいた。
その切り口で見ると、ものすごく多様性あるメンバーだ。
読書会といっても、その場で読んでいくわけじゃなく、読んだ感想とか、未読の方なら今持っているイメージとかを話す、そういう対話の場。
なので、それぞれが自分の暮らしや世界観と紐づいた感想を口にしていた。
他の人たちの感想を聞きながら、私は、ふっと不思議に思う。
(そんな見方があるんだ……)
そして、同時に気が付いたことがある。
その人が話すナウシカの感想によって、その人の人となりや興味関心、今、直面している人生上のテーマや課題がぼんやり透けて見えるのだ。

ナウシカという物語に何を見るか

ナウシカという物語は鏡だ。
人によって物語の捉え方が違うし、何に着目するかも違う。
ナウシカの感想を話すことで、その人の立ち位置や、どの角度からナウシカの世界を見ているのかがわかる。
おそらく、アニメ版のナウシカでは、ここまで多様な感想は出てこない。
アニメ版のナウシカ自体が、ある限られた角度からあの世界を切り取って映している作品だからだ。
漫画版は、キャラクターも舞台設定も、異様に濃密な情報量で描いてある。
宮崎駿という人間のものの見方を詰め込んだので、当然のようにああなったんだろう。
ひふみんアイじゃないが、宮さんアイを疑似装着できるのがナウシカという読書体験だ。
でも、宮さんアイで「何を見るか」は読者の裁量に委ねられている。
(余談だけれど、映画『モリのいる場所』が、やはり似たように、熊谷守一アイを疑似装着できる体験なのかな?)
この「何を見るか」というところに、その人の人間性や立ち位置が顕れるのが面白い。
この現象自体が、ナウシカが「全体性」を持つ物語だからこそ起こるんじゃないだろうか。

しまった。
こんな風に書いちゃうと、次のテーマ「ナウシカというキャラクター~人間性と非人間性、雌雄同体性ヒロイン~」に、私の人間性がモロに表れてしまうことになる。
モノを著すなら避けられないことだけど、やっぱりちょっと恥ずかしい。
さて、次回はこの恥を越えて、がんばって鏡に映る自分と世界を見てみようか。

2019.9.2

 ⇒ ナウシカを読む その2-女性らしさってなんですか?-

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