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祖父の代からの家業を引き継いだ私がやったこと、やめたこと 05

後継者問題

気がつけば私は50歳を超えていました。まだ父から引き継ぎを終えたばかりという気分でもありましたが、後継者の問題を考え出したのもこの頃だったと思います。

ある人からのアドバイスもあって、”55歳で会社をどうするか方針を決めよう”と考えていました。 誰かに引き継ぐか、廃業するか。概ねその2択くらいしかないのだろうと思っていました。

私には二人の娘がいます。今の時代、女性社長という選択肢ももちろんあると思います。しかし製造業の社長を娘達がやり切れるかなという心配もありましたし、そもそも彼女たちがやりたいかどうかもわかりませんでした。 二人はまだ学生です。社会人になるまで待っていては私は60歳を超えてしまう計算でした。そこから引き継ぎを始めても70歳になってしまうかもしれない。それは私の希望ではありませんでした。

父はコロナ禍までは70代になっても会社に来て仕事をしていました。素晴らしいことだと思いますが自分がそうなりたいとは考えていませんでした。時間(命)の切り売りで収入を得るのではなく、別の形で収入を得たい。もっと自分の時間を増やしたいという気持ちもありました。そんな思いから不動産投資の勉強を始めたりしていました。

社内に後継者を探すという手もありますが、持ち株の問題もあります。そもそも経営を引き継げても株式を引き継ぐにはそれなりの資金が必要です。社員の中から探すことは現実的ではありませんでした。

自分で希望して引き継いだのです。会社は潰せない、従業員とその家族を守ることは私の第一命題でした。ですが自分が今後20年経営を続けられても後継者はいないかもしれない。手を打つのであれば今から打たなければならない。父とは別の方法を考えねばならない。そうした想いをだんだん強くしていきました。

そんな時に社長仲間の一人が自身の会社をM&Aで売却を行いました。彼も家業を継いで経営者となった人でした。彼の会社は上場していませんが、売却先は上場会社でした。彼がM&A完了後に「個人保証が全て解除され、肩の荷が降りた」と言っていたのが私にとっては非常に印象的でした。

中小企業の経営者というのは多かれ少なかれ借入はするものだと思います。根抵当やら個人保証を求められるのが一般的です。実質無借金の経営ではありましたが、私も例に漏れず個人保証はさまざま行っていました。それが当たり前だと考えていましたし、経営者である以上避けられないものと思っていました。

この社長仲間のM&Aの件で、
”それもまた経営の一つの出口戦略なのかもしれない”
と思うようにもなっていました。


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