すげぇ大人
私が勤める会社は、外部の会社の仕事を受託することで成り立っている、平たく言ってしまえば下請けのような仕事をする会社だ。
なので外勤時に委託元の会社の人が同伴する、なんて事もちょくちょくある。
今月頭の外勤も、委託元の人が1人同伴してくれた。今回はこの方の話題なので、仮にこの方を「スケさん」と呼ぶことにする。
(文字盤がスケルトン(透過)の腕時計をしていたから、スケさんという感じ)
スケさんとは事前に仕事用のチャットでやり取りをし、文面の雰囲気からはお堅そうなイメージであった。
訪問先の待ち合わせ時間5分前に正面入口前でスケさんと待ち合わせをし、挨拶を交わして今日の流れについて軽く打ち合わせをする。
「今日のアポは時間が全然もらえなかったので、スケさんからはご挨拶くらいになるかもしれません、問題ないですか。」
「もちろんです。私は現場第一主義ですから。ご担当のおリンさんにお任せしますよ。」
・・・
5分の打ち合わせで、お堅いイメージは消え、スケさんが明らかに「しっかりした大人」であることを感じた。
品があって、それでいて厳かすぎずこちらに気を遣わせない立ち振る舞いや話し方だった。
一体どんな経験を積んできたらこの雰囲気が得られるのか。
今回の訪問先の面会者はかなりのお偉いさん、詳しくは言及できないが、まあとにかくかなり偉い。
しかも参加者が他にも10人くらいいて、その人たちも重鎮たちであり、私はそのお偉方に対してプレゼンをしなければならなかった。
メインのお偉いさんとは前に1度だけ面会したことがあるが、その時も今回も、もらえた時間は15分以内。他の訪問先では30分以上かけて話すべき内容を半分以下のボリュームに収めるという、新人に毛が生えた程度の私には凡そ重すぎるミッションであった。
スケさんには事前に情報を共有しており、私が置かれている状況にも理解を示してくれていたので、適度に会話を続けて緊張をほぐしつつ、かといって圧力はかからない絶妙な空気感を作ってくれた。
面会・プレゼンは定刻通りに始まった。
当然のごとくあっという間で、何を喋ったかも詳しくは覚えていない。
クロージングの挨拶を済ませ退出し、少し経ってから時計を見ると開始時間の20分後だった。
どうやらプレゼン自体は15分程度に収まったようだ。
既に腰をおろせる場所にいたので、上司への報告などを済ませて、改めてスケさんと話をした。
スケさんとの話は本当にテンポが良かった。プレゼンのフィードバック、今後の仕事の話、プライベートの話が絶妙な比で組み合わさっており、訪問先の最寄り駅でお礼の挨拶をするまで会話が途絶えなかった。
帰り道、1人で改めてその日の訪問のことを振り返っているなかで、ふと思ったことがある。
「あの人のフィードバック、なんかスッと入ってきたな。」
たいていフィードバックというのは、耳の痛い話だ。
自分の成長の糧になることは分かっていても、指摘されると「ウッ・・・」となってしまう。
スケさんのフィードバックは、常にテンポのいい会話の中でさりげなく差し込んでくるような、不快感を感じないフィードバックだった。
まるで、腕利きの看護師さんの「痛みを感じない注射」のようだった。
もう早いもので、来月には2つ年下の後輩が入社してくる。
一緒に仕事をする中で、改善点を指摘してあげないといけない場面も増えるだろう。
指摘をするときは針を刺すときだと思って、なるべく痛みのない刺し方を模索するのがいい。
スケさんとの外勤は、それを感じることができたのが大きな収穫だった。
「すげぇ大人」に出会った。
今まで数えられるほどしか会ったことがない「すげぇ大人」という感覚だった。
私は大学時代、薬学を専攻していて、薬剤師の資格を取ったにもかかわらず、会社員として働くことを選んだ。
「薬剤師なんとなくできなそう」という至極適当な消去法で職業選択をしてしまった私は、同級生たちが薬剤師として立派に働いている中で自分の職のいいところはどこだろうと分からなくなってしまうこともあった。
ただ、薬局や病院ではなくあえて一般企業という、嫌でも外部とのかかわりが発生する職業柄、「すげぇ大人」に出会う確率に関しては、ほかの選択肢を選んでいた世界線よりも高かっただろう。
元々そんなに後悔もないが、改めて、消去法にしてはいい選択だったなと、今回のスケさんとの出会いを通じて感じたのであった。
ちなみに、スケさんはタグ・ホイヤーの時計をプライベートで使用しているそうだが「時計で判断されないように」と、あえて無名のブランドのスケルトン時計を着けているそうだ。
その話を聞いたとき、私は見栄で着けていたオメガの時計をそっと袖口に隠した。
おわりに
今回はおリンが担当しました。
#会社員で良かったこと
というタグがあったので、遠慮なく仕事関連の記事を書かせてもらおうと思い、長々と書きました。
2月は36協定ギリギリ、ギチギチの仕事漬け生活でしたので、ほかの話題がないのはお許しを…(笑)
ADOLESTUDIOの「かしラボ」、明後日3/11(月)にていったん最終回となります。是非最後までよろしくお願いいたします!
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人間関係苦手、将来不安、でも野心はどこかにある…そんな思春期(Adolescent)の側面を持ちながら年齢だけを重ねた「おリン」と「生糸」がPodcast番組をお届けするスタジオ(Studio)、それがADOLESTUDIO、そういう感じです。
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次回は生糸が担当の予定です。お楽しみに…!
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