ソウルフード・外郎
有給を取って、山口県に旅行に行ってきた。
秋芳洞や角島大橋を見てきた。景色は綺麗だし、それでいてそこまで混み合ってもない。とても良いところだった。
旅行中、山口県のお土産ってなんだろうとずっと考えては、色々なお土産屋に寄って物色した。
やはり山口の名産といえば「ふく(フグ)」、いやいやちょっと費用が嵩みすぎる…「蒲鉾」も有名らしい、これはちょっと考えたけど、重そうだしなぁ…と考えると、やっぱりお菓子系がいい。
私は知らなかったが、なにやら「外郎(ういろう)」も名産らしい。絶妙な甘さと弾力の和菓子だ。羊羹とも葛餅とも言えない、他の物で喩えようのないお菓子。これを買って帰ることにした。
実は私は、去年外郎にお世話になった。
去年のこの時期と言えば、国家試験受験の1か月前で最終調整に入っていた時期だ。
やるべきことはやってきた。それでも、準備すればするほど、不安に飲み込まれそうになる。あと1か月で何か出来ることがあるだろうか。あるんだろうけど、何をやっても一向に安心できない。もう勝負はついてるんじゃないかとすら思っていた。
自宅に籠って勉強していたこともあり、自分の準備が適切なのか一向に分からず、日に日に不安は増す。
「何か足りないところがあるんじゃないか」
「今自分が悶々としている間も他の人は努力し続けてるだろう、マズい」
というようなことをずっと考えていたと思う。
試験本番の1週間前くらいに、当日用の食料を調達しようと近くのスーパーに行った。
お目当ては「ひとくち羊羹」。小腹を満たしながら、急速に脳に糖分を供給できると考えたからだ。大きめのスーパーだったからひとくち羊羹くらいあると思ったのだが、甘かった。
スーパーが大きくて、ひとくち羊羹が見つからない。
ひとくち羊羹のコーナーはたいてい極小規模だ。だいたいパンが売っているところの近くに置いてあるイメージだが、あたりがついていても中々見つからない。
「これは流石に時間がもったいないな、代替品はないだろうか…」と思っていたところで、ちょうど良さそうなものが視界に入った。
外郎だ。
これも羊羹と同じく練り菓子だから、吸収は早そうだ。お腹にも溜まる。これだ。
外郎を手に取ってレジへ向かう途中、試験会場で外郎を食べる自分を想像した。
「試験会場広しと言えど、休憩中に外郎を食べてるような奴は、他にいないだろうな…」
絶妙な弾力の和菓子、このマイナーなチョイス。殺伐とした試験会場で、参考書を広げながら黙々と外郎を食す。
想像するとシュールで、ちょっと面白くなった。
それと同時に、今まで自分の中に蓄積してきた不安感を吹き飛ばすような安心感が溢れた。
「なんだ、意外と余裕あるじゃん。」
そう思えたのだ。
蓋を開けてみれば、合格点を30点ほど上回っての、余裕綽々の合格だった(満点にも程遠かったけど…受かればヨシ!)。
坂道を走っている時、足元に気をつけて踏み外さないようにすることは大切だ。しかし足元を見ているばかりだと、どこまで頑張ればいいのか分からず苦しくなる。
私に必要だったのは「少し首の角度を変えて視点を変え、頂上に辿り着く自分をイメージすること」だった。
知らない間に、随分と高いところまで来ていたようだった。
こうして私は、縁のある食べ物の外郎を山口県の土産として買って帰ったのであった…
先日の大学入試共通テストを皮切りに、いよいよ受験シーズンも本番となった。もう結果はある程度見えてきているかもしれない。
だったらいっそのこと、外郎みたいな存在に出会いに行こう。
気圧されてパフォーマンスが悪くなるのはあまりにももったいない。
「なるようになるかもな」と思えるきっかけを探しに行こう。
不格好ではあるが、これが私からの最大限のエールだ。
ここまで書き忘れてた大事なことがあった。
張り詰めた試験会場で外郎を食すのは、実際のところ結構恥ずかしいから気をつけてほしい。
山口から帰ってきて食べた外郎は、とても美味しかった。
恥ずかしくないというだけで、ここまで美味しくなるとは驚きだ。
おわりに
今週はおリンが担当しました。
再々再度くらいのPR、
1/30(月)~第1・3・5月曜配信
「ADOLESTUDIOのせのびカフェ」
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来週は生糸が担当の予定です。お楽しみに…!
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