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暗闇を舞うサンタ


梅雨のこの時期に、なぜクリスマス?

これにはワケがある。この企画だ。

たったの10文字で、ホラーな世界観をつくる。

考えてみると簡単なようで、とても難しい。10文字で伝えきれない部分を補完するための言葉を頭の中で探す。

必然的に、自身の恐怖体験へと思いが巡る。



あれは小学校の時のクリスマス。

私は、幼稚園の頃からタツノコプロのアニメが大好きだった。特に好きだったのは、ヤッターマン

ヤッターワンやヤッターペリカンまで粘土で作れるほど好きだった。さらにはまったアニメがあった。

ゴールドライタンだ。

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度肝を抜かれるのが、まずその設定だ。

ジッポのようなライターが、変形してロボットになる。

もう一度言おう。

ライターが、変形してロボットになるのだ。

子どもは触れちゃいけない、火傷するぜ。と教え込まれたライターが華麗にロボットへ変身する。

まさにトランスフォーム型ロボの先駆けで、普段は、主人公のポケットの中に隠れ、敵が来ると巨大化し、ほぼ全ての闘いを素手で闘うガチンコファイター。

そして、アニメの開始直後に金ピカ超合金の表面に本物のジッポのような美しいカットが施されたゴールドライタンが発売された。

これを見た瞬間、私は心を奪われた。

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今、思うと実物のアニメのクオリティをはるかに超えたおもちゃだった。金ぴかのライタンを持つことで、大人に近づけるような気がしたのだろうか。


どうしてもそれをポケットに入れて持ち歩きたかった。すぐに欲しいと両親にせがんだが、それは叶わなかった為、クリスマス、サンタにお願いすることにした。

クリスマス前、何度もサンタに手紙も書いたし、両親の言う事もよく聞いていたと思う。あの時は、何を命令されていたとしても、全て従うほどに従順であっただろう。

そして、万全の体制で迎えたクリスマス。

夜中に起きていると、サンタさんは帰っていってしまうよ、早く寝なさい」とさんざん両親に言われていたので、早めに布団に入り、目を閉じた。

しかし、憧れのタイタンが手に入るかもしれない興奮のせいで、なかなか寝付くことが出来ず、眠りが浅い状態だった。

あれは何時頃だっただろうか……突然、暗闇の静寂に「ガチャッ!」という物音が響き、目が覚めた。

「きっとサンタだ!超合金を持ってきてくれた!」

でも起きてしまうと、超合金は手に入らない。

見ちゃだめだ、

見ちゃだめだ……

でも見たい、

見たい……

どうしても見たい!

物音が静かになった……………おそらくサンタが、ライタンを靴下に入れてくれている。

好奇心を抑え切ることができなかった。気付かれないようにそぉーっと、音の鳴る方向へ顔を動かし薄目を開けた。


名称未設定 1

??


名称未設定 2

?!


寝ぼけまなこにくっきりとシルエットが浮かぶ。

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ぱ、パンツ…

それは、ブリーフにランニングのサンタの後ろ姿だった。

サンタが、パンツ一丁で家に来た!

心臓が口から飛び出すほどビックリしたが、ゴールドライタンが、無事、届いた事を見届け、安心して眠りに落ちた。

朝起きて、ゴールドライタンが枕元にあることを確認し、歓喜の雄たけびをあげた。サンタのことは、心の奥底にしまったままに。。

大切な相棒として、ポケットに入れようとしたが、角が尖り過ぎていて、腿が痛くて持ち歩くことはできなかった。

しかし、ガチンコにぶつけても壊れない金ピカ超合金のおもちゃは、私の宝物となり、創造力を育んでくれた。

ブリーフのサンタの思い出と共に。

当時、サンタはパンツを履いているものだと思っていたけれど、小学校の高学年になると、心に引っかかっていた疑問が確信に変わった。

ブリーフとランニング。

それは、飲んで酔っ払った父のシンボルマークだった。夏も冬も…酔うとブリーフとランニングによくトランスフォームしていた。

おかげで、クリスマスは、忍者のように慎重になったし、子どもたちにプレゼントを贈る前に部屋に入るシミュレーションまでするようになったよ。

ある種、ホラーなクリスマスは、今でも私の大切な思い出になっている。

ありがとう父よ。


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締め切りは、今日まで。
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楽しい企画をありがとうございました。



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