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【マーケ視点で紐解く】パルワールドのヒットはなぜ?|配信者を虜にする「ユーチューバビリティ」の追求

 前回は、パルワールドがSteamの海外市場での成功とオンラインイベントを通じた海外市場への効果的なリーチをどう達成したかについて触れました。

 しかし、これだけでは発売5日半で800万本の売上を達成するのは難しい。成功への道は、ただリーチするだけでなく、ユーザーに登録や購入を促すことにあります。

また、前回の内容だけでは国内での爆発的な口コミ(炎上含む)の加速にも説明がつきません。日本はその販売シェアの少なさ、PCゲームユーザーの人口の小ささと比べて、パルワールドの口コミがあまりにも多い、話題になりすぎているのです。

そこで今回は、国内市場での強力なマーケティング戦略とユーザーの心を掴んでウィッシュリストの登録や購入に繋げた3つの秘密に焦点を当てます。

1.日本人向けマーケティング
 発売3日前に発信された"起業家"や"エンジニア"の感動を呼ぶnoteと同じく発売3日前に解禁された配信者のゲーム実況が重要でした。noteは発売前に3000いいね以上を集めていたと思います。今は8000いいね超えとなっていますね。

余談ですが、初期ポケモンのパク…改悪…いや…パロディー?作品であるサンリオタイムネット(1998年発売)のディレクターはホロライブ(世界最大級のVtuber事務所)社長のYAGOOです。

サンリオは皆さんの知ってるサンリオです。ハローキティももちろん出てきます
何かのゲームにとても似ている気がします……
出典:Wikipedia
ん~~、バケモン事務所です笑笑
もはやマスメディア以上にマスなのではないでしょうか
先行プレイをきっかけに”ホロライブサーバー”まで作られ、とあります。
出展:https://roundup-gamers.jp/article/2024/01/22/2115.html

2.「ユーチューバビリティ」の追求
 動画映えや配信・SNSの撮れ高を生み出す要素を重視した開発・設計・哲学のことです。

例えば、
・パルの個性豊かな表情差分や感情表現
・パルの労働による自動化などの個性的な世界観
・なぜか必ず炎系の野生パルが木造建築を燃やしに来る
・物理演算の幅の広さ/バグの多さ/自由度の高さによるユーザーの意図していないことが起こる仕込み
などが挙げられます。

もちろんゲーム体験のデザインであったり、アーリーアクセスだからということもあります。
ただ、マーケティング的な側面で考察すると、すべては配信者に「可愛い」「面白い」「また配信したい」と言わせるところに着地します。一般のユーザーであれば、SNSネタの撮れ高ですね。

特に物理演算やバグの多さは制作会社 社長のインタビューを読む限り確信犯です。

下にパルワールドの制作会社の社長である溝部氏のインタビューを引用して、載せています。

溝部氏:「最強の剣を作ったぜ」と「すごいバグ見つけた!」は同じなんですよね。そういうYouTube映えする要素というか、“ユーチューバビリティ”みたいなものを、作り手の側も意識するのは大事かなと思います。
──なるほど。そのユーチューバビリティを意識するなら、バグさえも面白いものとしてコンテンツになりうると。そうなると、今後は「意図的にバグを残す」みたいなゲームデザインが増えていくのかもしれませんね。
溝部氏:
それは一大テーマだと思いますね。僕もバグをどう直すかはいつも悩んでいます。

出典:電ファミニコゲーマー

溝部氏:どういうシステムにするとユーザーの意図してないことが起こりやすいか、というのは実は明らかで、それは物理演算なんです。だからクラフトゲームの場合は、物理演算の要素をいかにうまく使いこなすかがポイントなのかなとは思っています。

出典:電ファミニコゲーマー

また、次のパルワールドのトレーラーを見ると、このユーチューバビリティというのがよく伝わると思います。後半のビジュアルがネタの宝庫です😅
動画の公開は2021年6月なので、開発初期の段階から、ユーザーの購買意欲を湧かせるための戦略が練られていたのだと思います。

3.配信のマスメディア化
 先に述べたゲーム実況配信がマスメディアのような役割を果たすようになっています。人気配信者の影響力は非常に大きく、その意見やレビューは多くのファンに伝わります。
 ユーチューバビリティの追求により、パルワールドをプレイした配信者は「このゲーム面白い!」と口を揃えて肯定的な感想を述べています。
それを聞いた視聴者層はプレイしていないにも関わらず「パルワールドって面白いんだ、確かに面白そう」と感じ、パルワールドに対する感想や態度が伝染していきます。一方で、炎上が起こっているXなどのSNSでは少し空気感が変わってきますよね。
これをメディア論の専門用語で態度摸倣効果(ミメーシス)と呼びます。

一通り紹介したところで、下の発売直前のマーケイベントの時系列を見てみてください。

先にアメリカでトレンドになり、続いて日本でトレンド1位となっています。
前回で説明したとおり、アメリカのゲーマーの間ではパルワールドは有名なタイトルだったんですね。

 一方、日本は海外と比較してSteam(PCゲーム)のユーザーがあまりにも少ない。そこでPCゲーマー以外の人たちの間でも話題になるように打った施策が上のnoteと先行配信です。

それらのマーケ施策が成功し、無事国内でも話題に、そして大炎上。

綺麗すぎますよね笑

打ったマーケ施策がすべてクリティカルヒットしていて、感動すら覚えます。パルワールドのマーケター怖いです。。。。

そして、そのクリティカルヒットを実現した要因、購買までのラストワンマイルを繋いだのがユーチューバビリティの追求だったんです。

続く

▼ユーチューバビリティによる口コミ強化とコミュニティ醸成の例
 SNSビリティと呼んだ方が適切かもしれません。
 コミュニティ醸成については後の回で出てくるかも、


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