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「カルロスゴーンの会見続く湯冷めかな」ほか、松の花 東京句会の自作俳句7句

松の花 東京句会 令和二年二月一日(土)YUKEN新橋ビル

主宰による入選* 秀逸⭐︎ 特選◎
数は互選の投票数

事前詠

冬の雨上がりて甘き深呼吸 *

不倫には育たぬランチ冬薔薇

枯蓮や改修さるる武道館 *

吉祥寺小ざさ
 行列の羊羹買ふや冬の朝 *

カルロスゴーンの会見続く湯冷めかな ⭐︎ 2

当日詠 蠟石/玄関口/鼻で2句

蠟石の印の気高し春浅し * 1

ラッシュアワー鼻ひる我は凶悪犯
→(添削後)ラッシュアワー鼻ひるは我一人のみ


各句に関する覚書

冬の雨上がりて甘き深呼吸
乾燥する冬。とりわけ喉を使う仕事をしているので、乾燥は気になるところ。雨上がりの朝、湿度を含む空気を甘く感じたのを素直にまとめました。

不倫には育たぬランチ冬薔薇
久しぶりの同級生との再会。昔、何もなかったわけではない相手。たまたま時間があったから会うことになっただけだけど……少し何かを期待しつつ会ってみた男女のお話。とあるイタリアンレストランで、隣席の二人組の会話を盗み聞きしながら考えました(笑) 主宰には、こういう物語性のある感じは俳句には適さない、と一蹴されました。

枯蓮や改修さるる武道館
12月上旬、乾通りの一般公開に出かけた際に、日本武道館のあたりも歩きました。そのときに目にした景色。使われず、がらんとしている武道館に、枯れ蓮の感じが合うように思いました。ちょうど改修に入る8月にイエモンや清塚真也さんのコンサートに行ったことも思い出しながら。

吉祥寺小ざさ
 行列の羊羹買ふや冬の朝

数量限定の羊羹を求めて、冬でも早朝から数十人の列。出勤途中、その行列を見ながら作った句です。寒さに負けじと並ぶ感じ。また、数時間並び、かじかむ手で念願の羊羹を手にする感じ。それを「冬の朝」という季語に託したかったのですが、「小ざさ」を知らないと、その万感の想いは伝わらないかな……。
そういえば、私の結婚式に合わせて上京した両親も、「せっかくだから」と並んでいましたね。並ぶこと自体がエンターテインメントだったようです(笑)

カルロスゴーンの会見続く湯冷めかな
あの日の夜のことをそのまんま。読み上げられる度に皆さんが笑ってくれました。

蠟石の印の気高し春浅し
蠟石はやわらかい石で、初心者の篆刻キットなどに入っています。下手なりに自分で初めて彫った印。その印がすっくと立っている様子。また、押す前よりも絵の品格が上がったように感じる様子。

ラッシュアワー鼻ひる我は凶悪犯
→(添削後)ラッシュアワー鼻ひるは我一人のみ

コロナウイルスに対する警戒の高まる今、電車内でくしゃみをしようものなら、車内の面々から冷たい視線を向けられます。その感じを句にしたくて考えました。主宰からは、この大袈裟な感じは今しか通用しないものなので、もう少し普遍性を出すべきであろうと添削が入りました。

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