赤ちゃん夏かぜ

夏から秋にかけてかかりやすい感染症があります。特徴やホームケアのポイントを知っておきましょう。

1 夏に流行がみられる感染症とは?

 新型コロナウイルスに関わる心配が絶えない状況ですが、それ以外の感染症が消えたわけではありません。暑くなる夏かぜの流行もありますので注意していきましょう。
 医学的に「夏かぜ候群」と呼ばれるのはエンテロウイルス属のウイルスが引き起こす「ヘルパンギーナ」と「手足口病」を指し、どちらも夏から秋にかけて毎年流行が見られます。それに加えてアデノウイルスが引き起こす感染症で「プール熱(咽頭結膜熱)」や「はやり目」も夏に流行が見られます。
 それぞれの症状や特徴を見ていきましょう。疑わしい症状が見られたら、受診の目安を参考に受診してください。

受診の目安

診療時間内に受診
1.発熱、喉を痛がる、発疹、嘔吐、下痢、目の充血、目やになどの症状がある

⚠︎こんな時は時間外でも直ぐに受診
1.生後3ヶ月未満の発熱
2.ぐったりしている、嘔吐を繰り返す
3.水分を半日以上取れず、尿が出ない
4.痙攣した

❶夏かぜ症候群「ヘルパンギーナ」「手足口病」
「ヘルパンギーナ」「手足口病」に代表される、エンテロウイルス属のウイルスによる感染症は夏に流行し、夏かぜ症候群と総称されます。基本的には恐ろしいものではなく、発熱だけで終わることも多い病気です。喉に炎症が起きて痛む事はありますが、水分をしっかり取れていれば点滴は不要で、特別な治療しなくても1週間程度で自然に治る場合がほとんどです。夏から秋にかけて流行し、7月下旬に流行のピークを迎えます。地球温暖化で早まったりする可能性もあります。
症状
発熱、手足の発疹、口内炎(口の中の水疱)嘔吐、下痢
※発熱だけや発疹だけ、口内炎も伴う結膜炎を起こすなど様々なバリエーションがある
ヘルパンギーナの特徴
喉の痛み口の中の水上顎が多い発熱症状が多い
手足口病の特徴
発熱、口の中の水疱のほか、手のひら、足の裏に発疹が出ることが多い、(肘・膝・お尻に出ることもある)、発疹は痒みを伴うこともある。
治療法
特効薬はなく、対症療法で様子をみる。
口内炎がひどく水分が取れない場合には点滴をすることもある。
登園目安
熱が下がり、食事や水分が取れるようになったら(症状がなければ登園しても大丈夫)
⚠︎注意点
1.ごくまれに非常に重い脳炎や髄膜炎を起こす報告も。何度も嘔吐を繰り返したり、ぐったりしているなどの場合には速やかな受診が必要です。
2. 4歳ごろまでの幼児を中心に流行が見られますが、兄弟や両親へ感染が広がることも珍しくありません。家族はしっかり手洗い、うがい、アルコール消毒を心がけ二次感染予防に努めてください。
❷「プール熱」「はやり目」などのアデノウイルス感染症
 アデノウイルスが原因となる感染症で、夏に流行することが多いものの、最近は冬でも流行が見られます。「プール熱」の名前で紛らわしいですが、アデノウイルス感染症はプールに限らず、ウイルスを含んだ唾液、便、くしゃみ、咳の飛沫などを介して感染します。アデノウイルスには50種類以上の種類があり、型により症状が変わりますが、多くは1週間程度で自然に治る病気です。
症状
プール熱(咽頭結膜炎)
発熱、喉が赤く腫れて痛む、結膜炎(目の充血、目やに、涙目など、下痢
はやり目(流行性角結膜炎)
目の充血目やに涙目
※発熱や喉の痛みは朝なわない。視力低下や角膜炎の症状が見られることもある
それ以外のアデノウイルス感染症
発熱、咳、鼻水などの呼吸器症状、嘔吐、下痢など胃腸炎の症状、膀胱炎など
治療法
特効薬はなく、症状を緩和する対症療法で様子をみる。結膜炎症状では、細菌感染症の合併を予防するため、抗菌薬の点眼をすることがある
登園目安
プール熱:発熱や喉の痛み、結膜炎などの症状が消失した後2日を経過し医師の許可を得てから
はやり目:症状がなくなり医師の許可を得てから
それ以外のアデノウィルス感染症発熱がなく元気になってから(医師の許可は不要)
⚠︎注意点
1.「はやり目」は通常赤ちゃんではあまり見られない病気ですが、兄弟や家族がかかると感染することがあるので注意してください。
2.症状が出て2週間程度は周りに感染させる可能性があるので、家族の二次感染に注意が必要です。

2 夏かぜホームケア

高体温は熱中症の可能性もクーリングしつつ他の症状に注意
 赤ちゃんは体温調節が未熟で、脱水を起こしやすいうえ、夏は周囲の環境の影響で体温が上がり、熱中症になりやすいです。これは病気にかかって熱が出る発熱とは異なります。体の外の影響で熱が高くなるのが高体温、体の中の影響で熱が高くなるのが発熱です。どちらも体温が上がるため熱中症の高体温だと思っていたら、実は感染症の発熱だったと言うこともあります。熱以外にどのような症状があるのかよく観察し、ぐったりしているようならクーリングしつつ早めに受診してください。夏かぜの発熱なのか、熱中症なのかの判断は医師でも難しい場合がありますが、他の症状はないか、家族に症状がないか、発熱時の状況などから総合的に判断します。
解熱剤を上手に使う
 解熱剤は一時的に熱を下げることで体を楽にし、水分や睡眠を取りやすくして、体力の回復を促すために使います。処方されたら医師の指示に従って使いましょう。治ったからといって薬を飲むのをやめないで下さい。海熱剤を使ったからといって治りが遅くなる事はありません。なお熱中症の高体温には解熱剤は効きません。
クーリングのポイント
暑がっている時は首と脇の下と足の付け根(股関節)を冷やしましょう。首は氷枕、その他はタオルにくるんだ保冷剤で冷やしましょう。冷却シートも良いですが、誤って口に入れてしまい、窒息事故にならないように注意してください。
喉の痛みに配慮してこまめに水分補給をする
 夏かぜで喉に炎症が起こると強い痛みが出て水分が取りづらくなります。脱水にならないよう、1回に飲む量は少なくても(10〜15ml程度でも)いいので、こまめに水分補給をしてください。飲み物は経口補水液が望ましいですが、ベビー用イオン飲料、麦茶、薄めたリンゴジュースなど月齢に応じて飲めるもので大丈夫です。冷やしたゼリー状の飲料は喉越しが良いようです。母乳の場合は母乳のみで構いませんがいつもより頻回にあげて下さい。水分と塩分、糖分さえ取れていれば食事は1日2日取れなくても心配いりません。無理強いは避け、食欲が出てきたら、冷ましたスープやうどんなど、喉越しの良いものをあげましょう。蕎麦ならへぎそばがオススメです。
エアコンは風向きに注意しこまめに温度調節をする
 熱の出始めは寒がることがあるので、手足が冷たければ衣類や布団などで保温します。熱が上がってきて、手足が熱く、顔も赤くなってきたら、薄着にして体内に熱がこもらないようにしましょう。エアコンは赤ちゃんの体温を見ながらこまめに調節することが大事です。赤ちゃんの体は大人より冷えやすいので、大人が「涼しい」と感じる室温が続くと、冷えすぎてしまうこともある。エアコンの風が直接当たらないように注意してください。
家族間の二次感染にも注意
 夏かぜは感染力が強いため家族間で二次感染しないよう注意しましょう。アデノウイルスはアルコール消毒が効きにくく、石鹸を使った手洗いが大事です。おむつ交換の後はしっかりと石鹸をつけ、30秒以上手を洗いましょう。使用後のオムツはポリ袋で密閉して捨て、食器やタオルの共用も避けると安心です。

3 予防のためには

 皆さん既に新型コロナウィルス感染症対策で実行されているかと思いますが、夏かぜ予防にも「しっかり手洗い」が大事です。赤ちゃんも1人で歩けるようになって外でいろいろなものを触る機会が増える1歳過ぎごろから、少しずつ手洗いの練習をすると良いでしょう。どんなウィルスに対しても「十分な睡眠と栄養をとって体調を整える」事が予防の基本です。
緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナウィルの第二波もあると思うのでしっかりと予防しましょう。

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