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■アベンジャーズ・フォーエバー Part 1

■Avengers Forever (Part 1)
■Writer:Kurt Busiek with Roger Stern
■Penciler:Carlos Pacheco
■翻訳:クリストファー・ハリソン ■監修:idsam
■カラー/ハードカバー/1,999円 ■ASIN:B0B4GR17J9

「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第12号は、1998~1999年にかけてカート・ビュシーク&ロジャー・スターン(ライター)、カルロス・パチェコ(ペンシラー)らが送り出した全12号のリミテッド・シリーズ『アベンジャーズ・フォーエバー』の前半部(#1-6まで)を単行本化(後編は「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第19号)。

過去からタイムスリップした7人のアベンジャーズは盟友リック・ジョーンズを護るため、現在と未来を行き来し、イモータスの手による死の危機から救う。時間軸に縛られたヒーローたちはそれまでの敵も味方につけ、人類の運命を決定する戦いを開始する。友と友、宿敵と宿縁を結ぶ壮大な物語が今、始まる……。(第12号表4あらすじより抜粋)

 本作は、1990年代前半のコミックバブル、俗に言う「スペキュレイター・ブーム(speculator:投機家)」のただなかに、真摯に「スーパーヒーローのいる世界の日常」を掘り下げたシナリオと、写実的なペイント・アートが高次元の融合を果たした快作『マーベルズ』(「マーベル グラフィックノベル・コレクション」第15号)で一躍時代の寵児となり、1990年代後半のバブル崩壊後のコミック界の王道回帰の流れの筆頭となったライター、カート・ビュシークが1998年に送り出したリミテッド・シリーズである(この、1990年代におけるカート・ビュシークの経歴については、『マーベルズ』の補足エントリの方で大まかに語った)。

 なお、ビュシークとパチェコは、元々は「北極海で氷漬けになっていたキャプテン・アメリカが、アベンジャーズに発見されていなかった世界」を舞台にした、『アベンジャーズ:ワールド・イン・チェインズ』という全12号のリミテッド・シリーズを送り出す予定だったが、どうもマーベル・コミックスが当時進めていた別企画(本来の世界とは異なる歴史をたどったX-MENが主役の『ミュータントX』が該当企画と言われているが、真相は不明)と内容的に被るところがあったためにお蔵入りし、再度企画を練り直して、過去の時間軸や可能性の未来からアベンジャーズのメンバーが集う物語である本作『アベンジャーズ・フォーエバー』の企画になったという(なお、本作後半、可能性の未来のアベンジャーズらが登場するシーンで、『ワールド・イン・チェインズ』用にデザインされたキャラクターがカメオ出演しているらしい)。

『ミュータントX』は、1990年代に辣腕を振るったライター、ハワード・マッキーの尖ったセンスが味わえる快作であるので、これはこれでオススメ。本来の歴史とは異なる発展を遂げたX-MENが活躍する世界に転移してしまったハボック(アレックス・サマーズ)の奮戦を描く物語で、現在は400ページ越えの分厚い単行本『ミュータントX:ザ・コンプリート・コレクション』全2巻で全32号+アニュアル1冊を容易に読み通せる。


 さて、ここからは本作の登場人物について、少々解説を。

 まず本作の主人公の一人であるリック・ジョーンズについて。

 彼は元々は『ハルク』誌の創刊号から登場しているサブキャラクターで、ブルース・バナー博士がハルクに変身する「事故」のきっかけを作ってしまったことから、ハルクとバナー博士双方に協力して、彼らの冒険を陰に日向に支えてきた。

 また、作中でも説明されているように、リックは『アベンジャーズ』創刊号で、アベンジャーズの面々が集結するきっかけも作っている。このことから、彼はなんら超能力を持たない一般人でありながら、ハルク、アベンジャーズ、そして後にはキャプテン・アメリカやキャプテン・マーベルといったヒーローの相棒として、コミックに露出していくこととなる(キャプテン・マーベルに至っては、リックが両腕のブレスレッドを打ち付けるとキャプテン・マーベルに「変身」するという、ウルトラマン的な関係を結ぶことになったりもする)。

 こちらは『ハルク』の初期の冒険を集めた「エピック・コレクション」の第1巻。収録作品は『インクレディブル・ハルク』#1-6(5/1962-3/1963)と、その前後の時期にハルクがゲスト出演した『ファンタスティック・フォー』#12(3/1963)、#25-26(4-5/1964)、『アメイジング・スパイダーマン』#14(7/1964)、『テールズ・トゥ・アストニッシュ』#59(9/1964、ジャイアントマンvs.ハルク!)、『ジャーニー・イントゥ・ミステリー』#112(1/1965、マイティ・ソーvs.ハルク!)、それに、ハルクが創設メンバーとしてごく短期間所属していた『アベンジャーズ』#1-3(9-11/1963)、#5(5/1964)も収録。


 後に、銀河有数の星間国家クリー帝国とスクラル帝国の戦争の余波が地球に及んだ際、アベンジャーズとリック・ジョーンズ、そしてキャプテン・マーベル(マー=ヴェル)は、宇宙の彼方に赴くこととなる。最終的にクリー帝国の統治者である人工知能スプリーム・インテリジェンスが、リック・ジョーンズの秘めたる超能力「デスティニー・フォース」を引き出すことによって召喚された、無数の過去の時代のヒーローらによって戦争は終結する(『アベンジャーズ・フォーエバー』の作中で、リック・ジョーンズとスプリーム・インテリジェンスによって、様々な時間軸のアベンジャーズが召喚されるのは、このエピソードを踏まえたもの)。

『アベンジャーズ・フォーエバー』の作中でも回想されているこのエピソードは、1971-1972年にかけて、『アベンジャーズ』#89-97(6/1971-3/1972)で展開された長編ストーリー「クリー/スクラル・ウォー」で語られたものになる。同作は、スタン・リーの右腕だったライター兼編集者のロイ・トーマスと、伝説のアーティスト、ニール・アダムスとジョン・ビュッセマらによる『アベンジャーズ』の古典的傑作である故、何かの機会に読んでおくことをお勧めする。

 ちなみに、「クリー/スクラル・ウォー」は、2018年にヴィレッジブックスから、通販限定で翻訳版が刊行されていた。興味のある方は、古書店などで探してみるのもよいだろう(残念ながら、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、『クリー/スクラル・ウォー』の刊行予定はない)。

 ちなみに本作の冒頭で、リック・ジョーンズは車椅子に乗っているが、これは本作の少し前に刊行された『インクレディブル・ハルク』#457(10/1997)で、ハルク、ジャガーノート、アブソービングマンの三つ巴の戦いに巻き込まれたリックが、ハルクに叩き飛ばされて重傷を負い、下半身不随になっていたため。

 またリックは、本作の開始1ヶ月前に刊行された『インクレディブル・ハルク』#470(11/1998)において、突然、原因不明の病気を発症し、緊急信号を受けて参上したアベンジャーズの面々に緊急搬送されていた。『アベンジャーズ・フォーエバー』の物語は、その直後、アベンジャーズの面々によって月面にリック・ジョーンズが搬送されたところから始まる(ちなみに、本作の冒頭で、リックを月面に運んだ“現代の”アベンジャーズの面々は、この当時、カート・ビュシークがライターを務めていた『アベンジャーズ(vol. 3)』誌の面子である)。


 上記の「クリー/スクラル・ウォー」以来、リック・ジョーンズと奇妙な因縁で結ばれた、クリー帝国の指導者である巨大な人工知能スプリーム・インテリジェンスについても話しておこう。

 彼は本来は、クリーの首星である惑星ハラーに鎮座しているのだが、本作の時点では月面の「ブルーエリア」で、諜報組織シールドの保護下にある。

 このことについて順を追って話すと、そもそも1992年の『アベンジャーズ』関連誌で展開された全19話の大型クロスオーバー、『オペレーション・ギャラクティック・ストーム』において、クリー帝国は今一つの銀河列強シーアー帝国と戦争状態となり、最終的にシーアー帝国が勝利し、クリーを支配することとなった。これを受けてスプリーム・インテリジェンスは臣民を見捨て、何処かへ蓄電してしまう。

 こちらが『オペレーション・ギャラクティック・ストーム』の単行本(エピック・コレクション版)。『アベンジャーズ』#345-347と『アベンジャーズ・ウェスト・コースト』#80-82、『クェーサー』#32-34、『ワンダーマン』#7-9、『アイアンマン』#278-279、『ソー』#445-446、『キャプテン・アメリカ』#398-400(の、「オペレーション・ギャラクティック・ストーム」関連のページ)と#401を収録。.

 で、その後、1996年末に刊行開始された全3号のリミテッド・シリーズ『インペリアル・ガード』(シーアー帝国の帝王直属の部隊インペリアル・ガードが主役の話)#1-3(1-3/1997)の中で、実はスプリーム・インテリジェンスは、地球のマンハッタン島の地下に潜伏していたことが判明する。こちらの話でのスプリーム・インテリジェンスは、クリー人やリック・ジョーンズをテレパシーで操り、自身のエネルギーを最充填することに成功する。ちなみに、この『インペリアル・ガード』リミテッド・シリーズは、単行本にはなっていない(単独で単行本になるほどページ数がないし、需要もない)。

 更に後、1998年に『アイアンマン(vol.3)』#7(8/1998)、『キャプテン・アメリカ(vol.3)』#8(8/1998)、『クイックシルバー』#10(8/1998)、『アベンジャーズ(vol.3)』#7(8/1998)の全4話で展開された「ライブ・クリー・オア・ダイ!」クロスオーバー(うち『アイアンマン』と『アベンジャーズ』はカート・ビュシークがライター)に、スプリーム・インテリジェンスは再登場する。

 狂信的なクリー人の一団「ルナティック・リージョン」によって確保されたスプリーム・インテリジェンスは、月面ブルーエリアのブルーシティ(太古、スクラル人の支配下にあったクリー人が、スクラルに命じられて築いた都市。重力や大気の組成など、地球と似た環境が再現されている)に身柄を移される。

 ルナティック・リージョンは、ブルーシティ内の太古のクリーのテクノロジーを用い、地球人の遺伝子をクリー人に似たものに変えることで、クリー帝国の栄光を復活させることを目論む。しかし、スプリーム・インテリジェンスは密かにアベンジャーズに情報を流し、アベンジャーズがルナティック・リージョンの計画を防ぐように仕向ける。アベンジャーズによってリージョンが撃退された後、スプリーム・インテリジェンスは、ブルーシティに常駐するシールド部隊の管理下に置かれることとなり、『アベンジャーズ・フォーエバー』の冒頭の状況に繋がる(スプリーム・インテリジェンス的には、クリーの狂信的な集団に担がれるよりも、それなりに理性的な地球人の管理下に入り、地球人類について学ぶ方がベターであると判断した模様)。


 続いて、本作に登場する、別の時間軸のアベンジャーズ・メンバーのうち、やたらダウナーなムードで作中で目立っていたキャプテン・アメリカについて。

 作中でも言及されているが、彼は『キャプテン・アメリカ』#169-176(1-8/1974)にかけて展開された「シークレット・エンパイア」編の事件解決後の時間軸から召喚された。

 この「シークレット・エンパイア」編は、アメリカの支配を目論む秘密結社シークレット・エンパイアが、核兵器を用いてアメリカの支配を目論む……という話で、最終的にキャプテン・アメリカ、ファルコン、それにサイクロップス&マーベルガールらの尽力によって計画は防がれる。

 が、シークレット・エンパイアの首領「ナンバー1」をホワイトハウスに追い詰めたキャプテン・アメリカは、彼の覆面を剥ぎ、その正体がアメリカ政府の高官であることを知る(作中では、ナンバー1の素顔は描かれてはいないが、ライターのスティーブ・エングルハートは、彼の正体をリチャード・ニクソン大統領と想定していた模様)。直後、ナンバー1は拳銃自殺を果たし、事件は決着するが、アメリカ政府高官がアメリカ市民の信頼を裏切ったことに心を折られたキャプテン・アメリカは、葛藤の末に(#176のラストで)、キャプテン・アメリカを引退することを表明するのだった……。

 なお、『アベンジャーズ・フォーエバー』作中のキャプテン・アメリカは、『キャプテン・アメリカ』#175のラスト~#176冒頭の間の時点から召喚されたので、アメリカ政府にいたく失望しているものの、まだキャプテン・アメリカを引退する決意はしていない。

 こちらがその「シークレット・エンパイア」編を収録した単行本、『キャプテン・アメリカ&ザ・ファルコン:シークレット・エンパイア』(2017年の、マーベル・コミックス社の大型イベント『シークレット・エンパイア』と混同しないように)。

 ちなみに「シークレット・エンパイア」編でキャプテン・アメリカのコスチュームとシールドを返上したスティーブ・ロジャースは、新たなコスチュームを身にまとい、「ノマッド」として活動を開始し、最終的にキャプテン・アメリカに復帰する。詳細は続刊『キャプテン・アメリカ&ザ・ファルコン:ノマッド』を参照のこと。

 収録作品は『キャプテン・アメリカ』#177-186。


 キャプテンとは対照的に、その鷹揚な態度で印象に残るイエロージャケットは、作中でも触れられている通り、その正体はアントマン/ジャイアントマン/ゴライアスことハンク・ピム博士である。

 彼は、実験中の事故で浴びた未知の薬品により、抑圧されていた人格と「ワスプ(ジャネット・ヴァン・ダイン)と結婚したい」という願望が解放され、無駄に自信家で、ワスプが大好きな謎の男イエロージャケットとしてふるまうようになってしまっていた。……「ゴライアス(=ハンク・ピム)ではワスプと結婚できない! ならば俺はイエロージャケットとなろう!」と、いうことらしい。

『アベンジャーズ』#59(12/1968)で初登場し、「ハンク・ピムは俺が殺した。俺はワスプと結婚する」と主張したイエロージャケットに対し、彼の正体がハンクだとアッサリ見破ったワスプは、下手に事実を指摘してハンクの精神状態を悪化させるよりはと、イエロージャケットに惚れた振りをして、彼と結婚式を挙げることとする。

 が、結婚式を襲った悪人軍団サーカス・オブ・クライムにワスプが襲われるのを見たイエロージャケットは、ショックからハンク・ピムとしての記憶を取り戻し、ゴライアスとなって悪人たちを無力化する。その後、仲間たちに状況を説明したハンクとジャネットは、結婚を取り辞めることはせず、正式に夫婦となる(『アベンジャーズ』#60(1/1969)での出来事)。

 上記の『アベンジャーズ』#59-60にかけての話は、『アベンジャーズ・エピック・コレクション』などの単行本で読むことが可能。

 で、本作に登場するイエロージャケットは、『アベンジャーズ』#60でのワスプとの結婚式前の直前から召喚されたために、無駄に自信家な性格で、かつ自分がハンク・ピム博士だと気づいていない。


 次はホークアイ。彼は、前述の「クリー/スクラル・ウォー」編の最終話である『アベンジャーズ』#97と、続く#98の間の時点から召喚されている。

「クリー/スクラル・ウォー」当時のホークアイは、ハンク・ピム博士のピム粒子によって巨大化能力を得て、2代目ゴライアスとして活動していたが、「クリー/スクラル・ウォー」のラストで、クリー&スクラル艦隊との交戦中に行方不明になっていた。

 その後の『アベンジャーズ』#99(5/1972)でのホークアイの説明によれば、実は彼は、クリーの小型艇を奪って地球に帰還した後、ユーゴスラビアの片田舎でサーカス団に拾われ、数ヶ月の間、彼らと生活をしていたのだという……『アベンジャーズ・フォーエバー』本編でも説明されているように、やがてサーカス団の一員が、アベンジャーズの元メンバーのハーキュリーズ(ただし記憶喪失)であることに気づいたホークアイは、彼を伴いアメリカに帰還。ゴライアスではなく、ホークアイとしてアベンジャーズに復帰する。

 で、本作に登場するホークアイは、このサーカスで暮らしていた時期の彼であるため、コスチュームは防弾性もなにもない普段着で、得意武器のトリック・アローも携帯しておらず、ピム粒子の効果も切れているため巨大化もできない、という状況にある。

 以上のホークアイの話(『アベンジャーズ』#98-99)は、「エピック・コレクション」の上記の巻に収録。


 続いてはジャイアントマン&ワスプ。彼らは、本作から少しだけ未来の時点(『アベンジャーズ(vol.3)』#12(1/1999)くらい)から召喚された。まあ、だいたい「現代のアベンジャーズ」とみなして構わない。

 ビュシーク期の『アベンジャーズ(VOL.3)』は、『アベンジャーズ・アッセンブル』のタイトルで、全5巻にまとめられている。上記の第1巻は#1-11までを収録。本作『アベンジャーズ・フォーエバー』の作風が気に入ったら、順にそろえていくのもいいだろう。


 ソングバードとキャプテン・マーベル(ジェニス=ヴェル)は、可能性の未来であるアース-98120のアベンジャーズのメンバー。本話が初登場となるキャラクターである。劇中のセリフによれば、2人は同じアースから召喚されたものの、召喚されたタイミング(時点)は微妙に異なっている模様。

 本来のマーベル・ユニバース(アース-616)のソングバードは、カート・ビュシークが『アベンジャーズ』に先んじて連載していたオンゴーイング・シリーズ『サンダーボルツ』のメンバー。本作に登場する彼女のコスチュームは、サンダーボルツで着ていたものとおおよそ同じである。

 ビュシーク期の『サンダーボルツ』は、単行本『サンダーボルツ・クラシック』全3巻と、その続刊『ホークアイ&ザ・サンダーボルツ』に全話まとめられている。上に貼った『クラシック』第1巻は、オンゴーイング・シリーズ『サンダーボルツ』#1-5に加え、オンゴーイング・シリーズの創刊前にサンダーボルツが顔見世する『インクレディブル・ハルク』#449、『テールズ・オブ・ザ・マーベル・ユニバース』#1、それにサンダーボルツがゲスト出演する『スパイダーマン・チームアップ』#7も収録した、至れり尽くせりな1冊。


 また、本来のアース-616のキャプテン・マーベル(ジェニス=ヴェル)は、1993年の『シルバーサーファー』アニュアル#6(8/1993、アニュアルは年1回刊行される増刊号)で初登場したキャラクターで、初登場時点では「レガシー」なるコードネームを名乗っていた。

 ……ちなみに、この、1993年度にマーベル・コミックス社から刊行された27誌分のアニュアルは、全てに「新キャラクター」が登場し、新キャラクターのトレーディングカードがオマケで封入されているという、まあ、コミック・バブルな時代ならではの企画先行な代物であった。結局、この企画から誕生した27名の新キャラクターで今も生き残っているのは、レガシー/キャプテン・マーベルとX-トリーム(アダムX)くらいで、残りは満足に再登場もせずにコミック・リンボに消えていった(まあ、キャプテン・マーベルにしても、2006~2022年までの16年間は「死んでいた」ため、コミック上に登場しておらず、大きな顔はできないのだが)。

 このレガシーは、キャプテン・マーベル(マー=ヴェル)の恋人であったエリシウスが、マー=ヴェルの遺伝子を基に超科学技術を用いて創り出した「息子」で、初登場後、『シルバーサーファー』誌やその関連誌にコンスタントに登場。やがて1995年には個人誌『キャプテン・マーベル(vol. 3)』も獲得したが……わずか6号で打ち切られ、以降、コミック・リンボに片足を突っ込んだキャラクターと化していた。が、幸いにも本作『アベンジャーズ・フォーエバー』に露出したことをきっかけに、再評価の機会を与えられることとなる。

 ちなみに『キャプテン・マーベル』誌や、『シルバーサーファー』でのゲスト出演回は、ほぼ単行本化されていない。かろうじて、レガシーの初登場号である『シルバーサーファー』アニュアル#6が、単話で電子書籍化されていたので、とりあえず貼り付けてみる。

 こちらの『キャプテン・マーベル:ファースト・コンタクト』は、『アベンジャーズ・フォーエバー』完結後に始動した、ジェニス=ヴェルとリック・ジョーンズが主役を務めるオンゴーイング・シリーズ『キャプテン・マーベル(vol. 4)』の単行本だが、こちらは1巻目で刊行が止まってしまっている上に、1巻目の電子書籍化もされていない(おかげで紙の単行本に滅法なプレミアが付けられている)、という扱いの悪さである。

 一応、Kindleだと、単行本ではなく、1号ずつの単話販売で『キャプテン・マーベル(vol. 4)』は出ているが、まあ、中々1冊ずつ買っていくのも面倒くさい話だ(ただ、1冊当たりの値段は安いので、単行本を揃えるのと同じくらいの値段で揃えられはするが)。
  
  
 最後に、アベンジャーズたちを導く謎めいた男、リブラ(ライブラ)は、元々は『アベンジャーズ』#72(1/1970)で初登場したキャラクターで、当初は悪人軍団ゾディアックに所属するスーパーヴィランであった。その後の『アベンジャーズ』誌の物語において、実はリブラはアベンジャーズのメンバーのマンティスの父親であることが判明。リブラは娘のためにアベンジャーズに協力し、新生したゾディアックの打倒に貢献した後、過去の悪事の償いのために警察に自首する(『アベンジャーズ』#126(8/1974)での出来事)。

 またこの前後の『アベンジャーズ』誌の、後に「セレスティアル・マドンナ・サーガ」と呼ばれる一連のストーリーにおいて、マンティスは、クリー人の予言にある、救世主を産む存在「セレスティアル・マドンナ」となるべき運命にあることが判明。カーン、ドルマムゥといった超次元の存在が、それぞれの思惑を抱えてマンティスを狙う中、リブラはアベンジャーズとイモータスに協力し、カーン打倒に尽力する。最終的にマンティスは、イモータスの手引きによって植物型異星人コタティのひとりと結婚。セレスティアル・マドンナに進化し、宇宙の彼方に旅立つ。


 こちらは一連の「セレスティアル・マドンナ・サーガ」絡みの物語をまとめた単行本『アベンジャーズ:コンプリート・セレスティアル・マドンナ・サーガ』。同作のライター、スティーブ・エングルハートは、『アベンジャーズ』100号代前半を通じライターを務め、「セレスティアル・マドンナ」の他に「ディフェンダーズ・ウォー」編や「サーペント・クラウン」編などの壮大な世界観の物語を手掛け、高い評価を受けた。

 なお、「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、第68号にエングルハートの『アベンジャーズ:ディフェンダーズ・ウォー』を刊行予定(同書は本国版の「The Official Marvel Graphic Novel Collection」では、第112号目に刊行されていたが、日本版「マーベル グラフィックノベル・コレクション」では、何故か繰り上げで全100号のラインナップ内に組み込まれた)。

 その後、リブラは、エングルハートがライターを務めていた『ウェストコースト・アベンジャーズ』#26(11/1987)で、ゾディアックのメンバーの一人、スコルピオの裏切りにより他のメンバー共々殺害された……が、本作『アベンジャーズ・フォーエバー』#2の中で、この時リブラは均衡の術(ザ・バランス)により死を偽装し、スコルピオから逃れたということにされた。

 また、1995年刊行の『フォース・ワークス』#16(8/1995)に登場した怪人ムーンレイカーは、作中で自分の正体がリブラだと主張していたが、やはり『アベンジャーズ・フォーエバー』#2で、「ムーンレイカーとリブラは別人である」ということにされた(当時、カーンに化けて暗躍していたイモータスに操られていた模様)。
  
 以上、今回はここまで。

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