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46-3.今だからこそユング心理学を学ぶ

特集:心理支援における”自己”とは何か

大塚紳一郎(大塚プラクティス主宰)
下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.46-3

注目新刊本「訳者」研修会

ユング心理学と出会う
−二つの私、自己と自我をめぐって−

【日時】2024年6月16日(日曜)9:00~12:00
【講師】大塚紳一郎(大塚プラクシス主宰)

【注目本】『C・Gユング パーソナリティの発達 』(みすず書房)
https://www.msz.co.jp/book/detail/09683/

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=7eLM6nWIYVo
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=I2xoC-77TLc
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=d7EAKVXpXPs

大塚紳一郎 先生


臨床心理iNEXTオンライン研修会

[心理職必須]自己組織化障害の理解と支援
―複雑性PTSDグレーゾーンのトラウマに対処する―

【日時】2024年6月2日(日曜)9:00~12:00
【講師】下山晴彦・大谷彰・原田誠一

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=VX93wIlyZtc
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) : https://select-type.com/ev/?ev=XQ74oFmRC4g
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=WOTvtAL9O8I


オンライン研修会のオンデマンド配信

セラピーのためのポリヴェーガル理論を学ぶ
−脅威に対して安全と絆を築く−

【日時】2024年5月18日(土曜)9:00~12:00
【講師】花丘ちぐさ(国際メンタルフィットネス研究所 代表)

【申込み】5月28日(火)まで
[オンデマンド視聴のみ](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=aUfvtLp04bU


1.今、なぜユング心理学なのか?

場の空気を読み、相手の期待に応え、適応的に振る舞う傾向が強い我々日本人は、気づかないうちに自分を見失い、過剰適応になりがちです。特に情報社会の中で刺激的な情報や物語に晒されることが多い子どもや若者は、容易にSNSやゲームに依存するようになっています。

さらに、PTSDに診断されるようなトラウマ体験がなくても、発達障害特性があったり、幼児期から勉強を強制されたり、学校でいじめを受けたりする逆境体験を経験することで「自己」組織化の障害が起こりやすくなっています。その結果、自分を保てなくなり、深刻なレベルで“生きにくさ”を感じるようになります。このような自己組織化障害は、成人期に至り2次障害としてさまざまな精神障害を引き起こします。

自分を保てない現象は、心理職にとっても他人事ではありません。公認心理師制度の中で医療や行政システムに組み込まれ、心理職としての専門性や主体性を保てなくなっています。心理職としての“自己”が問われている状態となっています。

このような状況において改めて“自己”とは何かを考えることが必要となっています。認知行動療法などでクライアントの現実適応を促すだけで良いのでしょうか。自己や自我があってこその適応ではないでしょうか。その点で、今こそ“自己”をテーマとするユング心理学を改めて学ぶ意味があるといえます。

そこで、臨床心理iNEXTでは、ユングの著作を翻訳出版するとともにユング心理学を実践している大塚紳一郎先生を講師に迎えて「ユング心理学と出会う:二つの私、自己と自我をめぐって」と題する研修会を開催します。開催に先立って、臨床心理iNEXT代表の下山が大塚先生にインタビューしました。


2.大塚先生にとっての「ユング心理学との出会い」

【下山】大塚先生には、臨床心理iNEXT研修会で「ユング心理学と出会う:二つの私、自己と自我をめぐって」というタイトルのユング心理学の入門編の講義をお願いしました。研修会に先立って先生にインタビューをさせていただきます。今の比較的若い世代の皆様は、ユング心理学を本格的に学んだ人は少ないかもしれません。そこで、まず「先生がユング心理学を学ぼうとされた経緯」について教えていただけますでしょうか。

【大塚】多くの方と同じく、ぼくの場合も、最初のきっかけは河合隼雄です。高校生か大学生ぐらいのタイミングで、岩波書店から河合隼雄の全集が出始めたんです※)。真っ白なハードカバーの本が本屋さんにずらっと並んでいるのが、すごくかっこよかった。その第1巻、「ユング心理学入門」を手に取ってみたのが最初の出会いです。それで、じつはその時点でユング心理学を自分の職業にするっていうことを決めてしまったんです。
※)河合隼雄全集第1巻は、2001年に発刊されているhttps://www.iwanami.co.jp/book/b477409.html

【下山】高校生、あるいは大学の初めくらいですよね。

【大塚】だったと思います。もちろん「現実的にそれがどのくらい大変なのか」「何が必要なのか」はさっぱり知らないままでしたけど。小さな子どもが「将来野球選手になる」と言っているのと何も変わりません。勝手に自分で思い込んで決めてしまったんです。

それにその後、一生懸命それを目指して努力したってことも全然なくて、のんびりとした学生生活を送っていました。それでいよいよ進路を決めなきゃいけないという段階で、ユング心理学のことを思い出したんです。すると、それ以外が選択肢に入らなくなってしまって、就職活動をすることもなく、大学院の受験をすることにしました。1年浪人する必要があったんですが。


3.ユング心理学を選んだ経緯

【下山】学部時代の専門は何だったんですか。

【大塚】慶応義塾大学の文学部人間科学専攻というところです。文化人類学を専門とする宮坂敬造先生のところで学んでいました。宮坂先生はおおらかな方で、ぼくがユング心理学に関心があるっていうことをすんなり受け入れてくれました。ですから、臨床心理士になることを決めるずっと前にユング心理学と出会っていて、それが消えていなかったということになるでしょうか。

【下山】私の若い頃は、心理支援に関心を持ったなら河合隼雄先生、そしてユング心理学を学ぶのが定番でした。選ぶというのではく、河合先生とユングが世界の中心に居て、それが全てという感じでしたね。他の選択の余地がないくらいでした。しかし、大塚先生は、私たちの時代とは違って、“選んだ”のですね。

【大塚】その時点で他の選択肢をよく知ってたわけではないんですけども。「ユング心理学入門」や「無意識の構造」などの河合先生の本に描かれている職業、そこに登場する「ユング派の分析家」に自分はなるんだと。思い込みの世界ですね。

【下山】思い込みなのか直感なのか。

【大塚】もちろん生きていく中でいろんな現実と出会うので、それを忘れてしまう期間はたくさんありました。実際のところ、臨床心理士の仕事を始めてからもそうです。特にユング派の分析家をずっと目指してたわけではなかった。最初の10年ほどは、スクールカウンセラーをしたり、心療内科で心理テストをとったりと、とにかく一生懸命、ふつうの心理職として仕事をしていました。それこそ認知行動療法とか行動療法の勉強も頑張ってしていました。そうして忘れてしまった後で、大切なタイミングでユング心理学のことを思い出すことができて、いまは分析家になるための最終試験を控えている。そう言った方が正確かもしれません。


4.今という時代におけるユング心理学の出番

【下山】その後、先生はスイスのISAPに行かれてユング派の訓練をしっかり受け、今は実践されています。そこで、今の時代にユング心理学を学ぶ意味をどう感じておられるのか教えてください。今は公認心理師の時代ということもあり、現実適応を重視する認知行動療法が広がっていますが、その中でユングの分析心理学を大切にすることの意義をどのように考えておられますか。

【大塚】それはぼくもすごく大切に考えている点です。そしてこれは場合によっては怒られてしまう意見かもしれませんが、ぼくは誰かの人生のなかに、ユング心理学の出番がそんなにしょっちゅうあるとは思っていないんです。特に現実への適応というシビアなニーズが問題になっているときに、ユング心理学がはっきり応えられることはそんなに多くないと。

もちろん、ユング心理学が現実への適応というニーズを無視しているわけではありません。ユング自身も「教育の心理療法」といって、社会に適応していくための手助けをする心理療法についてもしっかり言及しています。ユングの念頭にあったのはアルフレート・アードラーの心理療法です。社会にしっかりと適応していける人間になる、その手助けをするための心理療法は大切だと。ユング自身はむしろ自分の出番の前に、そのような適応のための心理療法の必要性を真剣に考慮すべきだと考えているんです。

それでも、誰かの人生のなかには、ときに現実適応だけでは十分ではなくなるタイミングがある。そういう時がユング心理学の出番なんだと、ぼくなりに理解しています。では、それは具体的にはどういうタイミングか?


5.「ユング心理学」が存在する意味

【大塚】ぼくの考えでは、それは「生き方そのものを変えなければいけなくなる時」です。いろんな場合があると思うんですが、例えば「これまでずっと仕事に没頭する生き方をしていた人が、家族の問題に取り組まなければいけなくなった時」とか、あるいは反対に「家庭を支えるということが人生のすべてだった人が、事情があって家の外で活動をすることが必要になってきた時」とかです。

「恋愛が自分の人生の中心にあった人が、義務とか責任とかいった、人生のなかのもっとオフィシャルな世界のなかに踏み出していかなければいけない時」とか、あるいは反対に「仕事人間であった人が、いよいよ恋愛とか親密性みたいなテーマとしっかり向き合わなければいけなくなる時」ということもありますね。

今のは典型的な例をかなり単純化してお伝えしただけですが、こんな風に今までの生き方そのものを問い直さなければいけない時って、そんなにしょっちゅうはありません。長い人生のなかで、何度かやってくる程度じゃないかな。でも、そのような転機がときにやってくることを、きっと多くの人、あるいはほとんど全ての人が経験しているんじゃないでしょうか。

「今までの生き方でいいのか?それとも自分の生き方を変えなければいけないのか?」。こんな大きな問いに取り組むための心理療法もあっていい。ユング派の心理療法の出番があるとしたら、その時なんじゃないか。ぼくはそんな風に思っているんです。


6.自分に向き合うタイミングとユング心理学

【大塚】現実への適応ということがこれだけ大きく、かつ難しい課題になっている社会の中ですから、それにしっかりと対応できる心理療法のニーズが大きくなるのは当たり前だと、ぼくは思っています。ただ、今言ったような大きな問いに向き合うタイミングって、決して特別に選ばれた人とか、エリートとかだけじゃなくて、ごく普通に生きている我々のような人間であっても、人生の中で何度かやってくるものです。

そういう大きな転機のための心理療法は、今この世界の中で生きている誰にとっても、いつもというわけではないけれども、ここぞというタイミングでは必要になってくる。それこそが、ユング心理学がこの世界、この社会の中で存在する意味なんじゃないかと思っています。

【下山】なるほどね。今のお話を伺っていて、哲学者のハイデッガーが書いていた時熟(sich zeitigen)という言葉を連想しました。変化に向けて時が熟する、そういうタイミングがあり、そこで必要となるのがユング心理学ということなのかと思ったりました。

【大塚】仰る通りだと思います。ただ、ちょっと付け足しておきたいんですけど、必ず生き方を変えるということではなく、心理療法に取り組んだ結果として、いまは変えないという結論に至るということも十分にありえます。変えるにせよ、変えないにせよ、大切なのは納得というか、それが意識的な決断だということです。


7.ユング心理学における「自己と自我」

【下山】そのことと関連して、次に今回の研修会においてテーマとなる「自己と自我」について伺います。自己と自我は異なっていて、その違いが重要となるとのことです。ユング心理学が必要となるタイミングにおいて、「自己と自我」はどのように関わってくるのでしょうか。多分、そこがユング心理学を学ぶ意義につながってくると思うのですが、いかがでしょうか。

【大塚】これはすごく臨床的な問いだと思います。実際のところ、ぼくの個人オフィスに来る人って、まさに「自我と自己の葛藤」を抱えた状態で、何らかの形で心理療法や心理学のことを知って、来談してくれることが多いんです。

ぼくのところに来談する多くの方が「今の生活そのものに困っているわけじゃないんだけど…」みたいな言い方をします。これは、たとえば認知行動療法を専門とする方の臨床の実感とかなり違う点ではないでしょうか。「これがあるせいで現実の生活に大きな支障が出ている」「目の前に解決しなければいけない問題がある」といった状況でぼくのところに来る人はあまりいないんです。そうではなくて、今の生活だったりとか、今の人生だったりとか、今の仕事だったり今の家庭だったり、いろんなそのものには基本的に満足してるんだけれど、ただ「本当にそれでいいのか迷いがある」ということでぼくのところにやって来る。

きっかけとなるのはたとえば仕事上のチャンス、あるいはピンチだったり、あるいは新しい恋愛、人間関係、パートナーシップのはじまりであったりします。仕事であれ、私生活であれ、「全く新しいチャレンジの可能性が見えかけているんだけれど、それに挑戦するとなると、今大切にしているものを失うことになる。それでいいだろうか?」という場合もあります。家庭の中や仕事上の立場が変わるというのも一つのタイミングです。「今自分がいる場所に満足してるんだけど、それを犠牲にしてでもこのチャレンジをすべきなのか?」「違う場所で、違う相手と生きていくべきか?」。贅沢な悩みかもしれません。誰にでもあるチャンスではない。でも、ご本人にとっては、それこそ人生を左右するくらいの切実な悩みなんです。


8.ユング心理学の方法論:自我と自己の対話

【大塚】そういう状況を、こんな風に心理学的な言葉に翻訳してみることができます。主語としての「わたし」、つまり自我の方はあるていど満足をしている。「今の生活でいい。自分の生き方はこれでいいんだ」と。ところが、ふとしたときにこの自我としての「わたし」とは別の「わたし」の言い分というか、問いかけが聞こえてくる。「本当にそれでいいのか?」「ひょっとしたら変わらなければいけないんじゃないか?」「もっと他に、何か目指すべきものがあるんじゃないか?」。そういう自我とは異なる「わたし」の声がだんだんと無視できなくなってくる。ひょっとしたら、それはもうひとつの「わたし」、自己の言い分なのかもしれません。

言い方がちょっと詩的すぎるかもしれませんが、自分の中から、自分が自分と思っているものとは違う言い分が感じられるようになるということです。そしてそうなってくると、今度は「いやいや、変わらなければいけないと言われたって、こっちにもこっちの事情ってもんがあるんだ」「今の生活ならそれなりに収入があるんだよ」「家族や仲間に迷惑がかかるじゃないか」と、いろいろと自我の方の言い分も出てくる。

自我と自己、つまり二つの「わたし」の間で、このようにある種の対話というか、やり取りというか、厳しい言葉を選ぶと対決ですね、そういったものが展開していく。それがユング心理学の一つの方法論だと思っています。

【下山】私は、若い頃、ユング関連の本をかなり読み込んでいたので、今のお話は懐かしい感じがするとともに、とても新鮮な印象がありました。ユング心理学が一世風靡した時代から時を経て、ユング心理学が再び意味を持つ時代にきているのかと思ったりしています。今という情報社会、全てがネットでつながるIoTの時代、さらには人々がバーチャルリアリティを生活の一部として生きる時代になって、改めて「自己と自我」が問わなければいけない時が来たように思います。研修会でお話をさらに詳しく聞けるのが楽しみです。


9.心理職にとってユング心理学を学ぶ意味

【下山】心理職に関していうならば、公認心理師制度の中で、心理職の専門性や主体性は何かをめぐって心理職の「自己と自我」が問われていると思います。「公認心理師制度に従うのが良いのか、それとも専門職としての心理職の主体性にチャレンジするのがよいのか」迷いどころと思います。この点に関連して研修会に参加を考えている皆様に、メッセージをお伝えください。

研修会では、このようなことをお伝えしたいといったことを教えていただければと思います。若い世代の皆様の中には、河合隼雄先生の名前さえもご存じない方もいると思います。そのような世代も含めて、ユング心理学と出会うことの意味をお伝えいただければと思っています。

【大塚】つい最近、ユングの著作を翻訳して出版した「パーソナリティの発達」(みすず書房)という本があるんです※)。その本の中に、ユングが主に学校の先生たちを相手に講演をしている記録がいくつかあります。そこでユングはこんなことを言ってるんです。『教育に携わる人たちが心理学の勉強をするのは素晴らしいことだけれど、心理学や精神医学の方法を生徒や児童にそのまま適応させるというのはいい考えじゃない。生徒の夢分析をしたり、診断名でレッテル張りをするのも絶対にやめてくれ。そうでなくて、心理学や精神医学を学ぶということは、あなた方が自分自身について理解を深めるために役立てるものであってほしいんだ』と。
※) https://www.msz.co.jp/book/detail/09683/

【下山】なるほど。

【大塚】もちろんユング心理学を応用することそのものが間違いだということではありません。しかし、ここでユングが言っているのは、親や教師など、他者に対して責任ある立場にある大人にとって、自分自身について考えていくことはとても大切なんだということです。それは心理職である、我々にとっても同じではないでしょうか? たとえば、さきほどお話しした自分の人生の転機って、心理職をしている我々にも当然起こってくる問題ですよね。

【下山】そうなんですよね。それは本当に、我々の自己ということに重なっていくる。ユング心理学は、心理職にとっても自分自身に関わることなんですね。

【大塚】そしてそのことが日々の臨床の実践にも、じつはかなり影響を与えていると思うんです。同じ本の中で、ユングはこんなことも言っています。「本当の意味で影響を与えるのは、あなたが正しいこと、立派なことを言ったかではなく、あなたがどういう人間であるか、どのように生きてきたかだ」と。

今回、ユング心理学を学ぶことは、そのまま普段の臨床実践に応用できることではないかもしれません。でも、それを通じて自分自身について、そしてご自身の臨床実践について、普段とは異なる形で振り返ることはできるかもしれない。そういう意味で、ユング心理学が現代の心理職の皆さんにとっても役に立つものであってほしいと願っています。


10.ユング心理学における多様性への広がり

【大塚】「自分の人生を変えるべき時なのか? それとも自分の人生を守るべきなのか?」。そのような大きなテーマが個々のクライアントにも、自分自身にも起こっているのかもしれない。そうした課題に取り組むというのは、ご自身だけでなく、クライアントや患者、あるいは身の回りの大切な人にも、良い意味でも悪い意味でも影響を与える、切実な問題です。大きすぎるテーマかもしれませんが、関心を持てそうな方は、ぜひ研修会にご参加いただければと思います。

【下山】今のお話を伺っていて、コンパッションの考え方とも重なると思っていました。実際、コンパッションの書籍「コンパッション・フォーカスト・セラピー入門」(誠信書房)の中には、ユング心理学のことが取り上げられていますね※)。そこでは、自分へのコンパッションが他者へのコンパッションにつながっていることが前提となっています。
※)https://www.seishinshobo.co.jp/book/b10031905.html

セラピーにおける他者の自己への理解は、セラピスト自身の自己理解と深く結びついているわけですね。コンパッション、特にセルフ・コンパッションの考え方とユング心理学は、同じ方向を見ているような気がしています。その点でセルフ・コンパッションに関心がある方にも、ぜひ参加してほしいですね。

【大塚】「コンパッション・フォーカスト・セラピー入門」ではユングの「元型」という概念が紹介されていましたね。この「元型」という言葉の本来の意味は、「自我としての『わたし』のコントロールを超えて、『わたし』を突き動かしてしまう力」ということです。その点で、まさに自我と自己の関係性とつながってくる。とても興味深いですね。

【下山】今回の研修会が、参加者の皆様にとって、多様な心理療法の考え方に開けていく経験になればと思いました。そのような体験につながる研修会にしていきたいですね。とても楽しみです。

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第46号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.46-3

◇編集長・発行人:下山晴彦

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