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7-4.モニタリングを行動活性化につなぐアプリ──いっぷく堂

(特集 使える! 楽しい! 心理支援アプリ

小倉加奈子(成仁病院)

1.自粛が及ぼす心への影響

新型コロナウイルスの感染予防のため,毎日いろいろなことに気を配りながら生活している方も多いと思います。特に緊急事態宣言が発令されて以降は,仕事や学習を含むライフスタイル全体に大きな変化を迫られ,なんとか対応してきたという状況ではないでしょうか。
もちろん感染症から命を守り,身体の健康を維持することが最優先とされますが,残念ながら一生懸命感染症予防に励んできたからこそ,心の健康に影響が出ている方もいます。特にこの時期多いのが,“コロナで家に閉じこもっている間に,なんだか元気がなくなってきた”という声。
実は人間の心は,活動量が極端に減ると元気をなくしてしまう傾向があります。この節では,そんな活動と心の健康のバランスを上手にとるためのアプリをご紹介します。

2.休みすぎると元気がなくなるのはなぜか

アプリのご紹介の前に,休みすぎると心の元気がなくなってくる仕組みについてご説明します。

まず,下記の簡単な質問に答えてみてください。
心の調子を崩しやすいのはどのような人?

A)オンもオフも全力! で過ごす人
B)オンは全力投球,オフはのんびり過ごす人
C)オンはそこそこ,オフは全力投球! な人
D)オン・オフ共に,のんびりと過ごす人

.........




答えはAとD。

なぜでしょうか? 心の健康を長く維持するためには,がんばりすぎない・休み過ぎない適度な活動量を心掛けること,すなわち〈適度力〉が大切と言われています。
フルパワーの期間が続いた後,体や心がぐったりしてしまっている…ということは一度は経験したことがあるのではないでしょうか。オンの日もオフの日も全力投球を続けると心の健康が損なわれてしまうということは理解されやすいかもしれません。では,なぜ休み過ぎが心の不調につながるのでしょうか?

それには《充実感》と《楽しみ》の不足が関係しています。休むということは,基本的に活動を少なくして心と身体を休めることです。そのため活動することによって得られる《充実感》と《楽しみ》が得られなくなります
この状態が長く続くと,だんだんと自分に自信が持てなくなったり,気分を上げることが難しくなっていきます。さらに長期化すると,落ち込みやいらだちにつながり心身の不調を引き起こすことがあるのです。

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3.あなたの活動量をチェック

先週1週間,あなたはどんな風に過ごしましたか?
自分自身の活動量は,あたりまえになっているため気づきにくいものです。数値化して考えることで客観的に振り返りやすくなります。先週1週間,全力(予定ぎっしりor多くのエネルギーを必要とした)を100パーセントと考えて,何パーセントくらいの力で過ごしたか考えてみましょう。


いかがでしたか? もちろん,一時的にフルパワーで過ごすことがあってもよいですし,たっぷりお休みする期間があってもよいのですが,それが日常化して長期間続くと心が不調を訴えることがあります

ポイント!
活動によって《充実感》と《楽しみ》を得ること,休息によって疲れとストレスを発散すること=活動と休息のバランスをとることが,心の病気を防ぐことに有効

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4.アプリ「いっぷく堂」の使い方

いっぷく堂は,毎日の心と体の状態を入力することで,あなたにその日必要な活動量を教えてくれるアプリケーション・ソフトです(現在,iPhone,iPadに対応しています)。

いっぷく堂

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「いっぷく堂」
iPhone用アプリ→https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%B7%E3%81%8F%E5%A0%82/id975104253


ステップ1:自分の状態を知ろう
ステップ1では,その日の気分を確認します。活動と休息のバランスを取るためには,そもそも最近の自分がどれくらい活動しているのか? どれくらい休息を取れているのか? を知ることが必要だからです。

①抑うつ(落ち込みはどれくらいか)
②不安(不安はどれくらいか)
③怒り(イライラはどれくらいか)

を入力します。
次に,その日の忙しさと体調,気力も,質問に答えながら入力していきます。

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ステップ2:あなたに適した活動の提案
ステップ2では,これまでに入力した〈気分〉〈忙しさ〉〈体力〉〈気力〉の得点に応じて,その日のあなたに適した活動が2つ提案されますので,1つを選択します。

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ステップ3:活動の結果報告と気分のモニタリング
1日の終わりにもう一度アプリを開き,質問に答えながら活動の結果を入力します。活動の後の気分も入力することで,どのような活動(休息)がどのように自分の気分に影響するのか気づく機会になります。

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ステップ4:1週間,1カ月の気分の変化も確認できます
ふりかえりのページでは,一定期間の気分・忙しさ・体力・気力を客観的に振り返ることができ,生活を見直すきっかけになります。

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参考:「いっぷく堂」のエビデンス
Hirano, M., Ogura, K., Kitahara, M., Sakamoto, D. & Shimoyama, H. (2017) Designing behavioral self-regulation application for preventive personal mental healthcare. Health Psychology Open, January-June,1–9.
⇒https://mental.jmir.org/2018/3/e10454/


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