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16-4.春だ!研修会に参加しよう

(特集 公認心理師になる)
下山晴彦(東京大学/臨床心理iNEXT)
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.16


1.お花見の替わりに研修会に参加しよう!

コロナ禍で鬱々としがちな現状だからこそ,気持ちの切り替えを積極的にしましょう。例年の4月であれば,入学式・入社式があり,お花見があり,新人歓迎会があり,「さあ,今年度もがんばるぞ!」と気持ちの切り替えができます。しかし,残念ながら今年は,集会や宴会は自粛です。

そこで,新年度の集会や宴会の替わりに4月研修会に参加し,心理職としての発展に向けて気持ちを新たにしていきましょう。

心理職ワールドを牽引してこられたリーダーである平木典子先生,金沢吉展先生,糸井岳史先生,そして中堅のリーダーである慶野遥香先生,高岡佑壮先生の研修会に参加することで,将来発展できる自信がつきます。オンラインとはいえ,研修の場で心理職としてともに発展を目指す仲間と意見交換をすることで未来への希望がみえてきます。

今回は,4月研修会の参加のお申込みを受けるための特集号としました。以下において研修会の内容と申込み方法をご案内いたします。関心あるテーマがありましたら,まずはお申込み窓口からご登録ください。ご登録をいただいた方に,さらに詳しい参加情報をお送りいたします。

臨床心理iNEXT有料会員の皆様には参加特典が付きます。お申込み窓口が異なっておりますので,ご注意ください。今後,臨床心理iNEXTでは同様の研修会を企画し,実施していく予定です。いずれも臨床心理有料会員の皆様には優先受付や無料・割引参加などの特典が付きますので,ぜひ会員登録をお勧めします。
会員登録⇒https://member.cpnext.pro/inext_regist/memberReception.jsf

(なお,前号で前半を示した若手心理職の座談会の後半は,次号の掲載することとしました。ご了承ください。)

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2.アサーション・トレーニング:ベイシック・コース

アサーションの基本となる理論を体系的に講義する。アサーションを実践するための基本的理解を深めることが目標となる。
〈講義のテーマ〉
①アサーションとは
②認知とアサーション
③人権とアサーション

【講師】
 平木典子先生(IPI統合的心理療法研究所)
【日時】4月18日(日)13時~17時
【方法】Zoomによるオンライン・セミナー
【参加費】
・臨床心理iNEXT有料会員(先着100名まで):無料
・上記以外の方(先着200名):3,000円
【申込】
・臨床心理iNEXT有料会員⇒https://select-type.com/ev/?ev=Uib2lKfajNs
・臨床心理iNEXT有料会員以外の方⇒https://select-type.com/ev/?ev=DoH5ZDGb0PU

3.アサーション・トレーニング:アドバンス・コース

4月18日のベイシック・コースに参加したことを前提としてアサーションの実践技能を習得することを目標とする。課題達成と関係維持のためのアサーションを実習中心に学ぶ。グループ作業が欠かせないので24名までとする。

【講師】
 平木典子先生(IPI統合的心理療法研究所)
【日時】4月25日(日)9時~13時
【方法】Zoomによるオンライン・ワークショップ
【参加費】
・臨床心理iNEXT有料会員(先着8名まで):4,000円
・上記以外の方(先着16名まで):8,000円
【申込】
・臨床心理iNEXT有料会員⇒https://select-type.com/ev/?ev=S0MEkukOR5I
・臨床心理iNEXT有料会員以外の方⇒https://select-type.com/ev/?ev=iNBkPw95bJ8

4.Wechsler式知能検査の活用法:発達障害臨床を中心に

単に検査を実施してIQを出すのではなく,刺激-反応の枠組みの中で検査結果の意味を理解し,情報処理のあり方を分析していく方法の習得を目標とする。最初の90分で「Wechsler知能検査の個々の課題に対する反応特徴を読み取り,それを発達障害の支援に結びつける方法」に関する講義を行う。次に発達障害支援のケースのスーパービジョンセッションを行い,知能検査を活用した発達障害臨床の理解を実践的に深める。

【講師】
糸井岳史先生(路地裏発達支援オフィス)
高岡佑壮先生(東京発達・家族相談センター)
【日時】4月25日(日)14時~17時
【方法】Zoomによるオンライン・セミナー
【参加費】
・臨床心理iNEXT有料会員(先着100名まで):無料
・上記以外の方(先着200名):3,000円
【申込】
・臨床心理iNEXT有料会員⇒https://select-type.com/ev/?ev=mTkAjWrnELI
・臨床心理iNEXT有料会員以外の方⇒https://select-type.com/ev/?ev=IBQC2883T7Y

5.心理職の日々の困り事を見直そう:倫理的視点を切り口に

◆第1部(13~15時):臨床の困り事を倫理的視点で見直す【150名】
講義『心理専門職の倫理的実践とは』    金沢吉展(明治学院大学)
話題提供『倫理的困難に関する調査報告』   慶野遥香(筑波大学)
指定討論『心理職の技能研修の観点から』  下山晴彦(東京大学) 
 参加者との対話(質疑応答)
◆第2部(15~16時):テーマごとに困り事を語り合う【50名】
テーマ別グループディスカッション
「秘密保持と連携」
「地域やコミュニティにおける多重関係」
「第三者からの支援の取扱い」
「心理支援者にできる限界」

【日時】4月25日(日)14時—17時
【方法】Zoomによるオンライン・セミナー
【参加費】無料
【日時】4月11日(日)13:00~16:00 オンライン開催(参加無料)
・第1部と第2部の参加⇒https://bit.ly/2P4rDuS 
・第1部のみ参加⇒https://bit.ly/38TA6Z3 

6.アサーション・トレーニングについて

(臨床心理マガジン12-1号,平木典子先生の記事より抜粋して引用)

アメリカだけでなく,日本でも女性や主婦がどんどん社会に出るようになっていた。しかし,まだ男女差がある社会の中で自分のことを,自分なりに表現できるようになっていくことが大切と思った。主張までいかなくてもいいが,自分のことをきちんと言えるとよいと思った。だから,アサーションについては,まず女性が話せるようになるために導入しようと思った。学生がゼミなどでも自分の意見をあまり言えないということもあった。

自分も小さい頃,引っ込み思案だった。ここで何かを言うことにものすごく勇気が必要だった。「ちゃんと考えて喋らないと」と思ったりした。だから,アサーションは日本人に必要だと思った。特に女性や主婦は,これから社会に出るにあたって,そういうのが身についていた方がいいだろうと思った。それで,日本に帰ってきて,若者と女性たちのためのトレーニングをやり始めた。

アサーションに関心を持ったのは,圧倒的に女性が多かった。女性のためにアサーションをやるのは,日本ではとても意味があると思った。アグレッシブにならずにアサーティブに,女性がきちんと自分の言いたいことを言えるようになっていくためには,日本的なアサーションが必要だと思った。

──日本的アサーションとは,どのようなものでしょうか。

それは,堂々と言わないことです(笑)。今風に言えば,リフレクション(内省)をきちんとやることなる。要するに,「私はこういうふうに思うけど,どうでしょう」と話してみる。アグレッシブに思われるようには伝えないということです。日本でアサーションをするときは,それが特に大事です。

日本では,アサーションをアグレッションと勘違いしないことが特に重要となる。アグレッシブに思われないためには,ナラティヴ・セラピーの用語を使うならば,“アイ・メッセージをきちんと言う”ということになる。「これは私が思うことなのですが」と,必ず言う。「これは私の考えであって,正しい意見というわけではない」ということを前提にして,自分の意見を伝えることが大切となる。

私は,そういう訓練をずっとやってきた。堂々と偉そうに言わないことがポイント。日本でアサーションを伝えるにはどうすればいいかをずっと考えてトレーニングをしてきた。
【詳しくは】⇒https://note.com/inext/n/n3c615a59d368?magazine_key=mb3b27faa0fbd

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7.知能検査の臨床活用について

(臨床心理マガジン9-4号,高岡佑壮先生の記事より抜粋して引用)

「身の回りにある様々なものごと」は,少し堅い言葉で「情報」と呼ぶことができます。人間は様々な情報を見聞きし,それについて頭の中で考え,考えたことを表現します。これらの「見る」「聞く」「考える」「表現する」といった,「情報を処理するプロセス全般」を認知機能と呼ぶわけです。

人間の認知機能の特徴は,一人ひとり違っています。つまり,どんな人にも情報処理の仕方の「癖」のようなものがあるということです。「その人独自の認知機能の特徴」は,「その人の悩み」の原因となる場合もあります。「悩み」を「困難」とか「困り感」と言いかえてもいいかもしれませんが,要するに,「その人の認知機能の特徴が一つの原因となって,生活のいろいろなことが上手くいかなくなる」という場合があるわけです。

上記のような困り感を抱えた人たちが心理面接を受けに来たとき,「自分にはこういう認知機能の特徴があって,だからこんなことに困っています」と自ら説明してくれる場合は少ないと思います。あくまで,「ストレスでお腹が痛くなる」「大学に行けなくなってしまった」「仕事がきつくて眠れない」といったような,「何に困っているか」の説明のみに留まることが多いかと思います。というのも,「自分にはこういう認知機能の特徴がある」と具体的に理解できている人は,割と少ないからです。

だから,困り感の原因となっている「クライエントさんの認知機能の特徴」について,相談を受ける心理士が注意を払わないと,それが見過ごされたままになる場合もあるわけです。逆に,心理士が以下のポイントを意識すると,「その人の認知機能に合った支援」がしやすくなります。

臨床においては,クライエントさんの認知機能を把握すること(=認知機能のアセスメント)が非常に重要となるのです。前述した通り,人間は四六時中何らかの情報処理をしながら日々の生活を送っているので,「悩み」や「困り感」にも「その人らしい情報処理の仕方」がどこかで関係してきます。

さて,認知機能を調べる手段の一つとしては,WAISやWISCなどの知能検査があります。知能検査は,IQや各指標得点などの検査結果に基づきその人の得手不得手などを調べるために用いられます。しかし,「この指標得点が高いからこういうことが得意そうですね」といった結果の解釈と説明が,「その人の困り感と関係がないもの」になってしまうとあまり役立ちません。

検査結果の解釈と説明を,臨床に活きるもの(困り感の改善に繋がるもの)にするためには,「結果の“どこに”注目すれば,クライエントさんの認知機能と困り感の関係性が見えてくるか?」という観点が重要です。

漠然と検査を実施するのではなく,その“どこか”を探すために検査を行うこと。それが臨床に活きる検査の使い方ではないかと思います。
【詳しくは】⇒https://note.com/inext/n/n27f7cd2d6811

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8.コロナ禍に負けない実力をつけよう

2020年度はコロナ禍に始まり,コロナ禍で終わろうとしています。3月21日に首都圏の緊急事態宣言は解除されました。しかし,コロナ禍が解消されたわけではありません。多くの心理職の皆様は,咲き始めた桜の花を横目で観ながら,何となく気持ちが晴れない日々を送っているのではないでしょうか。

臨床心理マガジンiNEXT 16-1号から3号でみてきたように公認心理師が誕生したからといって心理職の専門性や社会的立場が向上したわけではありません。むしろ,公認心理師の「養成」「試験」「雇用」「研修」の状況は,混迷の度合いを深めています。心理職の未来が見えてきません。そのような現状を暗々裡に感じ取っているからこそ,多くの心理職の皆様は,気持ちが晴れない日々を送っているということもあるでしょう。

そのような今だからこそ,臨床心理iNEXTは,心理職の研修を大切にしたいと思っています。心理職が実力をつけて,自信をもって社会のニーズに応えていくことが,心理職の「雇用」にも繋がります。コロナ禍にも,公認心理師の「養成」や「試験」の限界にも負けないために「研修」を大切にし,皆で協力して実力をつけいくことを目指しましょう。

記事デザインは,原田優(東京大学特任研究員)によります。

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(電子マガジン「臨床心理iNEXT」16号目次に戻る)

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臨床心理マガジン iNEXT 第16号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.16


◇編集長・発行人:下山晴彦
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