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7-3.生活を記録してモニタリングするアプリ──じぶん記録

(特集 使える! 楽しい! 心理支援アプリ

遠藤麻美(東京大学)

1.ウィズ・コロナの時代と生活スタイルの変化

自粛生活では,家で過ごす時間が長くなった方がほとんどであったかと思います。緊急事態宣言が解除され,今後はウィズ・コロナの時代に入っていくといわれています。引き続き,ライフスタイルを柔軟に変化させていくことが求められそうです。

さて,今回の自粛生活の中での毎日はどのようにお過ごしでしたか。
少し振り返ってみましょう。自粛生活の前と後で大きく分けて,なにか変化として挙げられることはありますか?

たとえば…

・自炊をすることが増え,買い物に行く回数が増えた
・食事の回数が減った/増えた
・リフレッシュできることを意識的にするようになった
・睡眠がゆっくりとれるようになった/あまり眠れなくなった

当てはまるもの,あるいは,さらに加えられそうなことはありましたか? 反対に,まだ何も思い浮かばない方もいるかもしれません。あるいは,このコラムを読みながら改めて気づかれたこともあったかもしれません。

日々の行動や,ふとした出来事はその人のメンタルヘルスの状態へ影響します。今回のように大きなライフスタイルの変化があると,それに伴って心や身体の変化も起こりやすくなります。ウィズ・コロナの時代こそ,毎日の自分の状態を確認・把握をして,意識的に心身の状態をより良い状態に保っていきましょう。

2.「自分記録」の使い方

本コラムでは,そうした自分の状態の確認と把握をお手伝いする「じぶん記録」アプリをご紹介します。
このアプリでは,「生活=行動+出来事」と捉えていきます。

①行動と出来事を記録
②記録を振り返る

の2ステップを通して自分の生活を確認・把握しましょう。(アプリの記録方法については,アプリを立ち上げた画面の「このアプリについて」から具体的な操作方法を確認することができます。)

じぶん記録

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「じぶん記録」
iPhone用アプリ→https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%98%E3%81%B6%E3%82%93%E8%A8%98%E9%8C%B2/id1040734242

3.行動の記録を振り返る

記録する「行動」は,スケジュールとは少し違います。入浴や電話,テレビを見るなど,「実際にとった行動」をイメージしてください。入力を行うと,たとえば次のような画面になります。

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この記録を使って,まず具体的に行動を把握してみましょう。そして,1週間ほど記録がたまったら振り返ってみてください。振り返りのポイントは,自分の行動の良かったところ・気になったところです。それを踏まえて次週の生活に活かしていきましょう。

4.出来事の記録を振り返る

次に「出来事」ですが,ここでは「印象にのこったこと」とイメージしてください。
人は全く同じ状況にあっても,人によって感じ方,考え方,そのときに選ぶ行動は,さまざまです。そのため,出来事をみる中で,自分の特徴や傾向をつかんでいくことが大切になります。

振り返りには,まず細かく記録することが大切です。
この時,認知行動療法(CBT)の考え方が役立ってきます。CBTでは,“人と環境”の関係性に注目します。人は,日々の生活の中で環境から刺激を受け,それに反応し,その結果が環境に影響を与えている。これは「刺激-反応図式」という考え方です。

アプリでは,この「刺激-反応図式」を次のような図でわかりやすく表しています。
出来事の記録画面では,刺激,反応,結果のそれぞれについて質問が出てきます。質問に答えることで簡単に細かく記録することができます。

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図 刺激-反応図式

たとえば出来事をいくつか入力すると,次のような状態になります。一日の終わりや,一週間経ったころに,書き上げた出来事を見返してください。

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自分に起きた出来事とその時の自分の反応を見返すと,気づきや疑問などの発見があると思います。
これはまた自分を確認・把握することになります。日々の中で,自分では気づいていなかった自分の考えや感情を見つけることができるかもしれません。

5.自分の生活を知るために

コロナ禍で自分らしい生活を継続することや,より良い状態へ調整をさせていくコツは「生活」を知ることです。そのために,毎日の行動と出来事,それぞれの記録&振り返りを継続してみてください。

参考:「じぶん記録」のエビデンス
Hamamura,T., Suganuma,S,. Ueda,M., Mearns,M., & Shimoyama,H. (2018) Standalone Effects of a Cognitive Behavioral Intervention Using a Mobile Phone App on Psychological Distress and Alcohol Consumption Among Japanese Workers: Pilot Nonrandomized Controlled Trial.
⇒https://mental.jmir.org/2018/1/e24/


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