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誰でも飲みやすい男鹿のクラフトビールを! 地元愛あふれるスポーツバー──Ogresse Quete

2023年3月21日、秋田県男鹿市にオープンしたクラフトビールと創作ピザのお店「Ogresse Quete(オグレスクエット)」。秋田駅前でベルギービール専門店「ZOT」を営む平潟秀俊さんが、地元の男鹿を盛り上げることを目的に作ったお店です。「隣にいる妻がおいしいといってくれるビールを造ろう!」という想いのもと、男鹿の素材で作ったクラフトビールを日々製造、提供し続けています。

本記事ではOgresse Queteの魅力からオープンまでの経緯や想い、そして同じ男鹿でクラフトサケを造る稲とアガベとの関係について紹介します。 

ビールが苦手な妻が「美味しい」と言ったビール

Ogresse Queteは1階がブルワリー、2階は海が見える眺めの良いカフェ&バーとなっています。

「お客様からは眺めが良いとよく言われます。男鹿は半島なのに、地元に住んでいても、海を見る機会って意外とないんですよね

Ogresse Queteから見える景色

こう語るのはOgresse Queteオーナーである平潟さん。

Ogresse Queteがオープンした2023年3月時点では、まだ酒類製造の免許が下りていなかったため、予約制のカフェ営業からスタート。2023年6月7日に念願のビール製造免許を取得。ゴーゼスタイル(※1)と呼ばれるビール「OGA SAL ALE ~Gose Style Sour〜」をフラッグシップとして販売開始しました。

※1:大量の塩とコリアンダーなどの薬草で香りをつけたビール。乳酸菌による発酵も行われるため、乳酸由来の酸味も特徴。

「最終目標はフルーツランビック(※2)の製造です。ビールが苦手な妻でも『美味しい』と感じられるスタイルだったからですが、そのためにまずはゴーゼから始めることにしました。男鹿は塩が名産なので、地ビールらしさも込められると思いまして。2019年からコロナ禍をはさみ、いくつもの試作品を経て2022年にようやく完成しました」

※2:ベルギーブリュッセル南西を流れるゼナ川周辺にのみ生息する野生酵母を用いて造られるビール。サワ―チェリーなどのフルーツが漬け込まれる。

オーナーの平潟秀俊さん

ゴーゼやランビックはそれぞれ「サワーエール」と呼ばれる種類に分類され、通常のビールでは感じられることの少ない乳酸由来の「酸味」が特徴です。ゴーゼを含む通常のビールは管理されたビール酵母が使用されますが、ランビックは自然に浮遊している天然酵母を使用します。より高度な製造方法となるランビックを目標にするからこそ、「酸味」で共通するゴーゼからの製造にチャレンジしたのです。

現在、Ogresse Queteで提供されるビールは「GOD ZOOM LOVE IN ONE(ゴジラ岩)」「GO SHARE DO(五社堂)」など、男鹿市内の観光名所をもじったネーミングとなっています。

ゴーゼと言われても地元の人には馴染みがないと思い、商品名を名所に紐づけたダジャレにしたんです。ちなみに、Ogresse Queteという店舗名の方は『女性鬼の冒険』という意味合いがあります」

クラフトビールと合わせて楽しめる料理​は、キーマカレーやマッシュポテトフライ、ソーセージ焼き、イカの塩辛入りポテトサラダなど豊富に揃います。中でも500度ペレット窯で一気に焼き上げるピザは絶品。トマトソースをベースにした「あが(男鹿の言葉で「赤」)」やホワイトソースをベースにした「すろ(白)」などは、ここでしか食べられない看板メニューです。

脱サラし秋田駅前にベルギービール専門店をオープン

平潟さんがクラフトビールの虜になったのは茨城県でのサラリーマン時代。とあるアイリッシュバーで出会ったベルギービールでした。

「ヒューガルデンホワイト(※4)を飲んで衝撃を受けました。それからネットで調べたり、都内の専門店でベルギービールを飲んだりしていました。ビールとグラスがセットになっていて、趣味としてハマりやすかったのもあります」

※4:コリアンダーとオレンジピールを使用したベルジャンホワイトビール

カウンターの奥にはベルギービールのグラスが並ぶ

そう語る平潟さんの背後には、ベルギービールのグラスがずらりと並んでいます。サラリーマンとして企業に勤める一方、頭の片隅にはいつか地元に戻って飲食店をやりたいという想いがあったそうです。

「祖父母が男鹿で酒屋をやっていたんですよ。祖母も、手当たり次第にグラスを集めていたことを後から知って、今の自分に隔世遺伝で影響を与えているのではと考えています」

そして2014年、平潟さんは脱サラし秋田駅前にベルギービール専門店「ZOT」をオープン。県内随意一の商品ラインナップを誇り、各銘柄ごとに専用グラスで提供するというこだわりのお店です。

ZOTは秋田県秋田市、由利本荘市、にかほ市、潟上市、そして男鹿市をホームタウンとするサッカーチーム「ブラウブリッツ秋田」を応援するスポーツバーとしての一面も持っています。これが、ベルギービールの提供だけでなく、平潟さんが自らクラフトビールを作ろうと思ったきっかけになったのです。

2017年からブラウブリッツ秋田のスポンサーになりました。Jリーグを放映するDAZNが立ち上げられたことがきっかけです。クラブ関係者と話している中で、ブラウブリッツのホームカラーである青いビールがあったらいいよねという話になったんですよ。そこからレシピを検討し始めました。海外ビールが親しまれるには時間も必要ですし、地元のクラフトビールがあってもいいんじゃないかと」

こうした考えが現在のOgresse Queteの開店、そしてクラフトビール造りへと繋がりました。Ogresse QueteではZOTと同じく、テレビ画面でのスポーツ観戦も楽しめます。

また、Ogresse Queteのロケーションに地元の男鹿市を選んだ理由について、平潟さんはこう話します。

「何をやったら地元で暮らしていけるかなということは考えていました。ZOTは秋田市にあるので、通い続けるとしても定年もないし、もう少し近いところがいいかなと。地元を盛り上げようという意識も少しはありますが、まずは自分がやりたいことを自分が楽しもうと思っています。そうすれば周りも楽しんでくれて、結果的に地域の活性化になるんじゃないでしょうか

稲とアガベほど心強いものはない

同じ男鹿でクラフトサケを造る「稲とアガベ」との出会いについて、平潟さんはこのように話します。

「稲とアガベの岡住さんについては、僕がクラフトビールを造るタイミングで同じような醸造家がいると聞いていました。すごく刺激になったし、どんな人なんだろうと思っていましたね」

1階の醸造所

そんなある日、醸造家の集いで平潟さんは岡住さんと初めて出会いを果たします。

僕、九州の人がめちゃくちゃ好きなんですよ。イケイケなのに優しいというか。彼は学生時代にサッカー部だったし、ちょうどワールドカップをやっていたタイミングだったので、一緒に観戦しました。今は土と風のディナー前にゲストを連れて一杯飲みに来てくれたり、すごく良い関係性になっています

男鹿での醸造業の開始、そしてサッカーを通じて知り合いになった両者。平潟さんは稲とアガベの活動が男鹿、そして自らの事業へ大きな影響を与えていると言います。

「後発のプレイヤーからすると、今のように先行事業ができあがっている状態はありがたいし、これほど心強いものはないです。彼らは一生懸命、ものすごいスピードで進んでいる。本来だったら似たようなことを自分がしないといけなかったかもしれない。協力はできるだけしたいですが、彼と同じようなことを僕がする必要ないなという安心感もあります」

今はOgresse Queteとして自分ができる仕事を地に足つけて軌道に乗せることが優先だと言う平潟さん。そうした活動の中で、稲とアガベと関わることができれば良いと考えているそうです。

また、稲とアガベがこれまで行ってきたイベントや事業で、平潟さんが特に印象にのこったものは猩猩宴(しょうじょうえん)と、寒風山でのディナーイベント「曐迎(ほしむかえ)」だと話します。

釜焼きのピザは予約制

「思いついたとしても、金銭面などで実行に移せないことってありますよね。でもやればできるんだ、集客できるんだという刺激を受けることができました。いつかあの場所で、男鹿産のお酒イベントをやりたいですね

地元である男鹿の魅力についても「地元の人さえ知らない魅力は必ずあるはず。そういう意味では、男鹿の良さに気がつくために生きているといえるかもしれません」と、Ogresse Queteや稲とアガベの取り組みを通じて模索する平潟さん。

今後もさらなる商品展開、開発が期待されるOgresse Queteのクラフトビール。稲とアガベが進める事業との相乗効果によって、男鹿のさらなる発展に貢献することが期待されます。新進気鋭の酒類を通じて活性化する男鹿の今後から目が離せません。

【岡住代表コメント】
平潟さんの天性の優しさにいつも救われております。 男鹿をサケのまちにする!という想いで突き進んでいる中で、 まっすぐな眼でランビックを造りたいというど変態の想いを持つ平潟さんのブリュワリーがあるのは、本当に心強いと思っております。 今後は稲とアガベオリジナルビールの製造など色々な形で協業していければと思っておりますので、 今後とも何卒よろしくお願いいたします!!

Ogresse Quete
住所|秋田県男鹿市船川港船川字化世沢181
Tel|0185-47-7676
営業時間|11:00-23:00 ※予約制に変更可能性あり
定休日|火曜
公式HP / Instagram

この記事の担当ライター

新井勇貴
酒屋、食品メーカー勤務を経てフリーライターとして活動開始。飲食関連、地域情報を中心に執筆しながら日本酒に関する情報を発信しています。クラフトサケとの出会いは「稲とホップ」。
SAKE DIPLOMA/唎酒師
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