私書箱の手紙

ここに、私の罪を告白します。でも、覚えていないんです。本当に私は罪を犯したのでしょうか。

気づいたら手にナイフを持っていました。目の前に倒れている人がいました。血も出ていました。私にも血がかかっていました。生ぬるさも手に残っていました。
周りを見渡しました。私を見る他の人の目を覚えています。怯える目をしていました。私の目はどうだったのか。何も感情がないようにも感じていたし、怒りもあった気がするし、焦燥を感じたり悲しさを漂わせたりしてた気もします。でも、覚えていないんです。

本当に私がやってしまったのか。
その瞬間も、その前も覚えていなくて、手にナイフを持っていました。ナイフを手にぶら下げていた感覚に近いです。急に記憶が飛んだような感覚です。本当は誰かがやってしまって、私の記憶が飛んでいる間に私にナイフを持たせ、血を纏わせたのかもしれません。その誰かはきれいに手を洗い、顔も体もきれいにして服を着替え、私に怯えるような目を向けたのかもしれない。
覚えてはいないけれど、どこかでそんなことはない、私がやってしまったのかもしれないと思う節はあるんです。

あの人のことが嫌いだった。苦手だった。許せなかった。
人をとにかく傷つける。正しいのかもしれないけれど、そのことを正義の剣として突き刺していく。この人の正しさは自分自身でしょ。臨機応変はあなた自身にとって都合よくないと言葉は変わるんでしょ。
見てよ。周りが怯える目をあなたに向けていること。分かっているでしょ。あなたを避けていること。
それでも構わないとあなたは思っているだろうけど、周りに負を撒き散らしていることを本当にわかっているの?

いつの間にか、私はふとあなたを刺してしまう幻想を日常の中でリアルに見てしまうことが増えてしまっていた。その度に本当に刺してしまったと思って、起きているのにハッとしてまた目覚めるような感覚が増えていた。
ただ、あのときはそんな幻想も見ていなかった。幻想がリアルになっていた記憶もない。

私は罪を犯したのでしょうか。
その罪はどうなりますか。
私は罪を犯したのでしょうか。

私は、本当に、罪を犯したのでしょうか。

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