GOOD LOSERになる
GOOD LOSERとは、負けっぷりの
いい人、潔く負けを認める人、
負けても潔い人のことをいう。
青年海外協力隊への参加を目指し、
理数科教師の試験に挑んでいたのは、18年前、36歳の時のことである。
理数科教師の免許もない。
経験もない。であるのに、
理数科教師という職種で
受験していたのである。
なぜならば、理数科教師での
派遣ならば、帰国後も、教師に復帰できる現職参加制度を活用できたからである。
それゆえ、二次面接の時に、
理数科の知識を尋ねられ、
返答に窮していたわけである。
「これでもか」というくらい
辛辣な言葉を浴びせられた
わけである。
あの時の感覚は今でも覚えている。
当時、青年海外協力隊員の
参加年齢の上限は39歳であった。
教師としての身分保障にこだわり、
現職参加を目指すならば、
二年後の試験が、最後の試験となる。
「自分には、現職参加は、もう無理なんだ」と感じたのである。
そして、「こんなことになるならば、
あの時、教師を辞めて、ポーランドに行けば良かった」という思いが湧いてきたのである。
実は、30歳の時、協力隊の試験に合格し、ポーランドへの派遣が決まっていたのである。。
職種は野球で、帰国後も、教師に戻ることができるという願ってもない条件であった。
しかし、ほどなくして、現職参加制度は、私のポーランド派遣については、適用されないということが判明したのである。
教育委員会からは、「退職でのボランティア参加しかない」と伝えられた
わけである。
それゆえ、ポーランドへの派遣を
断ったわけである。
あくまでも、教師という身分の保障にこだわったからである。
だから再び、二年ごとにある、
現職参加派遣制度の枠の中での
ボランティア参加を目指したわけで
ある。
しかし、「また受かるはず」という安易な思いとは裏腹に、32歳、34歳、36歳と不合格を重ねてゆくのである。
あの選択が、一生の後悔になりそうで、とても恐かったことを記憶して
いる。
しかも、協力隊参加を諦めた、
そんな自分の今後の教師生活は、
色でたとえると灰色のように感じられたわけである。
ここに至り、現職参加を諦め、
唯一合格している野球という職種での、退職参加を目指したわけである。
なぜならば、退職での参加ならば、年齢上限の39歳まで、あと6回の受験機会が与えられるからである。
最後の悪あがきというヤツである。
「やるだけやってダメならば、それで良し。悔いもない。参加が、叶わない時は、定年退職まで教師をやり、その後、シニアボランティアとして海外に出よう」
「GOOD LOSERになる」と決めたのである。
かくして、8回目の試験に合格し、38歳で、ウガンダに野球隊員として派遣されたわけである。
すべては、あの屈辱的な面接の
おかげである。
あの強烈な面接が、「青年海外協力隊員としての心構え」と「自分の目指す本当の道」を、教えてくれたわけである。
人生では、時に思いもよらない
理不尽なやり方で傷つけられ、
大事なモノを奪われたような感覚になることがある。
しかし、それは違うのである。
これまでは大事だったが、
これからは不必要なモノが、
奪われただけなのである。
そうやって、本当に大事なモノに
気づかされたということなのである。
思い返せば、あの頃は、人生に負けに
負けて、落ちるところまで落ちていたわけである。
そんな失意落胆の日々を送っていた
から、失うものが何もなかったのである。
だから、GOOD LOSERになるという、覚悟を決めることができたわけである。
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