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人は死なない

55歳の誕生日を迎え、これまでに
ない感慨深さを感じるのである。

「もし54歳で死ぬならば、
自分は後悔しないだろうか」

人生の岐路に立つたびに、
この問いを発し、人生選択を
してきたからである。

54歳で他界した父の人生は、
自らの人生に大きな影響を
与えてきたということなのである。

「人は必ず死ぬ」

このことを、自らの背中で
教えてくれた。

これが、父という存在だった
わけである。

であるにもかかわらず、
父に対し、口では感謝を
唱えながら、心の底では、
馬鹿にしていた。

それが自分なのである。

「家族のために」

これを言い訳にして、
自ら夢に挑むことを諦めた人。

父のことをそのように思い、
軽蔑していたわけである。

自らの可能性を見限り、
現状維持を良しとする、

その一方で、我が子の挑戦や
活躍を励みに生きている。

父のような人生だけは、
絶対に嫌だと思っていた。
父の人生にNoを突きつけ、
生きてきた自分だったわけである。

その結果、父が当たり前のように
家族にしてきたこと。

これが、何一つできなかった
わけである。

父が亡くなった年齢に近づくにつれ、自らの無力さにうちひしがれる。
そのような事態に陥ったわけである。

そして、ようやっと、亡き父に
心の底から詫びることが、
できるようになったのである。
感謝できるようになったのである。

凡庸と思っていた家庭が、
本当は、父が、全身全霊をかけて
築きあげたものであり、
特別なものだったのだと
気づいたのである。

そして夢追い人である自分もまた、
カタチは違えども、父と同じように
自らの過去を捨て、家族のために
生きてきたのであった。

父の思いと自らの思い。
これが重なったのである。

これは、父の家族への思いは、
自分の中で、生き続けてきた
ということである。

そして、これから先も、
未来永劫、生き続けるということで
ある。

人は死なないということである。

亡き父と伴走する、これからの
人生は、これまでよりも、穏やかで
心地よい風が吹いているのである。

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