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藍染めで儲けられるか?食べていけるか?3

 毎回不完全燃焼に終わるこのタイトルで、しつこく3回目の更新です。前回の2から1年半以上経過し、その間に展開した諸々の取り組みの中で多少アップデートしたことがあるので、そこを踏まえて記録したいと思います。
 が、今までより突っ込んだ内容になるので、今回は有料マガジンに投げ込むことにします。藍染に真摯に向かい合っている人、向かい合おうとしている人に呼びかけもあります。つまり、ここにきて初めて、ちょっと具体的な試みの提案をしようとしています。
 つまりつまり、やっと「どうやったら儲けられるのか、食べていけるのか」というところに若干話が及ぶ展開となりました(たぶん)。


背伸びしすぎない策を持つ

 コロナ禍以降、国内の経済状況に厳しさが増し、ものづくりの現場においてそれ以前の消費動向を念頭に置いた事業計画では思うような動きが取れないケースが頻発しています。
 こだわりの藍染を継続して世に送り出したいと奮闘しておられる染め場の皆さんにとっても、正念場と言えるシーンが今までに無く短いスパンで訪れ続けている昨今であろうと思われます。ただ、コロナ禍で中止されることが続いていたイベントがほぼ再開され、インバウンドも以前に増して盛況となっている現在は、うまく策を組めば悲観しすぎる必要のない状況になっていると考えられます。

 業界で問題になり続けていた蒅(すくも)不足は、完全な解消と言わないまでも、各地で地道な取り組みが続いて新たな作り手が立ちあがろうとする機運が継続して見られます。需要に対する質と量のバランスをうまく保てるようになるまでに、各現場での辛抱強い試みがまだまだ必要な状況が続きそうですが、全体の流れとして希望を持ち続けられる状態であるということに、取り組まれている皆さんへの尊敬の気持ちが高まります。

 そうした流れを踏まえ「一本筋を通した藍染」を展開していくなら、背伸びした華やかな夢を掲げる前に、着実な「足場」を作り固めることを具体的な取組の優先順位の高いところに据えたいところです。
 これから藍染ビジネスに取り組もうと考えている方は、いきなり藍染一本で生計を立てることを計画しなくても良いかもしれません。こだわりの深さにもよりますが、こだわりが深いほど収益の上がるスピードが遅れる傾向にあります。でも、藍染という分野を選ぶからには「こだわり」の無い人などいるはずがありません。そのこだわりを捨てて収益一辺倒の取り組みになるとしたら、本末転倒ですよね。
 理解者を少しずつ増やしながら、着実に売り上げを上げる機会を年に何回か作る。もちろん生計を立てるための手立ては別に持っておく。つまり、藍染は「副業」というスタンスです。大切にしたい「こだわり」を安易に手放さないために、まずは経済的プレッシャーをできるだけ軽くした状態で始めるイメージです。

 既に染め場を持ち独り立ちして奮闘されてきた方は、独自のビジネスセオリーを持たれていると思います。こだわりを表現しつつ収益を上げていくために必要なバランス感覚を、常に磨かれていることでしょう。
 私が尊敬している染め工房さんの取り組みに共通してみられることの一つは、根強いファンが常に一定人数いらっしゃること。全ての業種で言えることですが、信頼関係を構築できるお客様と出会うチャンスを作ることと、訪れたチャンスを大切に育むことは当たり前に大切なことです。そのチャンスを、身近な足元で得ることをコツコツと積み重ねることで、アイテムの質もビジネスの繋がりも着実にアップデートされておられるように見受けられます。

 インバウンド需要の高まりの流れで海外進出、という話も周囲で頻発していますが、手堅く足元を固められてきた染め工房さんはその辺りの流れには慎重なようです。これまでに海外とのパイプを構築してきたところは別として、初期投資の規模が工房のこれまでの収支からかけ離れたものになるのであれば、たとえ補助金や助成金のバックアップがあるとしても博打を打つべきタイミングでは無いと考えておられるようです。私もその考えには基本的に賛成です。
 中には、世界中で取り組まれてきた藍染の「あえて日本」という立ち位置を、効果的に発信しながら事業展開されている染め工房さんもあります。語学のスキルなどの問題をクリアできる条件があり、海外との独自のつながりがあって、自然な流れでそうなっているという雰囲気に見受けられ、決して突拍子のない投資の上で展開されている取り組みではないというところが、大切なポイントかと思います。

 どのような条件下で、どのようなビジネス展開を計画するのか、それぞれの状況次第ではあると思いますが、「藍染」という共通事項でおさえるべきリスクがあります。
 異常気象とも取れるこの夏の暑さで、原料植物であるタデアイの栽培状況にいかなる緊急事態が訪れるか、誰にも予測できません。うまく収穫できたとしても、蒅の作成時にどのような自然状況が影響するのか、やはり読めないことが続きます。予定していた染料が手に入らなくなった場合のリスク対策は、常に念頭においてください。
 それに加えての燃料費、運搬費、諸々の道具の原料費の変動が続くとなると、不測の事態に備えられるコスト管理にも注意が必要です。
 事業の節目にはちょっとした背伸びが必要なこともありますが、背伸びの「しすぎ」は禁物な状況がしばらく続くという前提でいるのが良いと考えます。よほどの根拠がない限り、大きな飛躍を目指した投資は慎重に様子を見極めるようにしたいところです。

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