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刺青の <琉球ハジチと台湾タトゥー展>

タトゥーには十代の頃興味を持った 文字ではなく文様に込められた意味
安全な航海や健康 一人前と認められた証 種々の祈りを込め
からだに刻むもの 入れ墨と聞けば身体装飾である一方
受刑者特定や 帰属意識に起因する反社会的なものという認識も広く
顔をしかめる向きも ファッション要素も随分強まってはいるけれど
体型が変わると文様が崩れる 彫ったところは皮膚呼吸ができなくなるとも

インドのヘナタトゥー・メヒンディも 邪気を祓い幸運を呼ぶとされる
南洋タヒチの人びとの体に躍る 民族的な強さと明るさ漂う紋様

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大いなる盛り上がりに湧いたラグビー戦でも 選手の熱気溢れる
渾身のプレーに加え タトゥーやハカなど儀式や文化を垣間見る機会に

南方へ赴任し奄美大島を訪れたとき ハジチ(針突)に出会った
手の甲や指表面に描かれた 深い青色の文様
くるくるまわる風車のよう 太陽や海の生きもの 真っ直ぐに長く伸びる形
様々の意匠は 女性たちだけがまとう印

沖縄県立博物館での特別企画展 80年代のハジチ調査報告とおばぁたちの話
女性たちが針突をする理由は 大きく四つある
・針突をしないと 大和に連れて行かれる
 (人攫い防止。内地の者はハジチを怖がって娶らず島に返されたよう)
・後生にいけない
 (お金や指輪は今生限り 我が身体にあるハジチこそ
  あの世までも続くもの また あの世で芋を掘ったり
  葦の根を掘ったりさせられると 言い伝えられてきたよう)
・魔除け 
・成女の証
個人によって施術理由は様々だが お洒落や興味本位以上の覚悟があった
ハジチを施す時の痛みを和らげるため 周囲のものはハジチ歌で励まし
施術に耐えるため 食べものを口にしつづけ乗り切ったという
年若くして世を去った娘の手には ハジチ模様を描いてから弔ったという

台湾原住民族にもタトゥーの風習があり 沖縄と同じく施術規制を受け
不作や飢饉 疫病などが起こり規制撤廃を求める運動が起きた
沖縄では内地や外国へ渡った先 或いは学校で差別を受け
孫を抱こうとして怖がられたりと つらい思いをした方々がおられた

土門拳撮影の一枚は 意外な筋肉をみせるレオナール・フジタ
彫り物に興味があったようで ハジチ女性を描いた作品も

別れ別れになった母娘の話 島という環境に育った子の想い
来訪者が見せた写真のハジチ文様を見た途端 むせび泣いた老婆
愛娘に入れた文様と瞬時に理解し 居合わせた島民たちも共に涙した

南方ハジチ 文様に触れると内側で呼び覚まされるものがあるのやも知れぬ

『南嶋入墨考』(小原一夫・’62・筑摩書房)

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛